コロナ感染急拡大 ネイルで数値に誤差? 意外な注意ポイントや自宅療養の備えを内科医が解説!

デルタ株の影響で、新型コロナウイルスは爆発的な感染拡大となっています。医療提供体制が逼迫する中、首都圏を中心に自宅療養者も大幅増。この状況に、どのように対処したらいいのでしょうか。勤務するクリニックでワクチン接種やコロナ患者の診察にあたる内科医の山本佳奈さんに聞きました。

ネイルが酸素飽和度の測定に影響?

私の勤めるクリニックでも、コロナの陽性と判定される方は激増。世代的には若い方が多い印象を受けています。

私がまず、お伝えしたいのは「パルスオキシメーターとネイル」の関係です。パルスオキシメーターとは、血液中に酸素がどれぐらいあるか(血中酸素飽和度)を指に挟んで測る機器で、呼吸機能の状態が分かります。
診察でも使いますし、陽性判定を受けた後、自宅療養をせざるを得なくなった際も保健所などから届くことがあるようです。正常値は96%以上で、93%以下だと酸素吸入が必要な中等症Ⅱに分類されます。身体の状態を把握するために重要な機器です。

しかし、ネイルをされている方は数値に誤差が生じるとされていて、実際にエラーが出ることもあります。おそらく、爪の上にネイルがあることで、センサーがうまく作動しないのだと推察されます。だから臨床の現場で私は、ネイルをしている方のパルスオキシメーターの値は参考にしていません。足の指でも測れるのですが、こちらもペディキュアをしていると状態がつかめません。感染が拡大している今は、誰がいつ罹り、パルスオキシメーターでの測定が必要な状況になるか、分かりません。可能であれば除光液などでネイルやペディキュアをはがしておくことをお薦めします。少なくても陽性と判定された場合は、正確に測定する必要があるので、はがすようにしてください。

血中酸素飽和度を測れる時計もありますが、信頼性はそれほど高くなさそうです。この点にも留意が必要です。

コロナ陽性で自宅、届いたものは必ず玄関前へ 

コロナ陽性と判定され、自宅療養となったら1人暮らしであっても外出することはできません。となると、必要なモノはネット通販で購入したり、デリバリーサービスを利用したり、友人・知人などに買ってきてもらったりするしかありません。その際は玄関前まで運んでもらうようにしてください。オートロックのマンションに住んでいても、エントランスに置いてもらったり、宅配ボックスを利用したりしないように。取りに行くまでにエレベータなどで人と会い、うつしてしまう可能性が生じます。届いたら必ず、オートロックを解除し、自身の部屋の玄関前に置いてもらうのがいいでしょう。

生理用品のストックも必要です。必要な分だけ毎回、購入している場合はタイミングによっては足りなくなることも。自宅からネット通販などで購入することもできますが、注文してから届くまで“タイムラグ”が生じる可能性もあります。また、生理用品を友人・知人などに頼んで買ってきてもらうことに抵抗感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。この時期は普段より多めに買い、ストックしておきましょう。

自宅療養に備え、食事は 「好きなもの」を事前に購入

食料品も同様。東京都や大阪市など、食料品を自宅療養者に配送する自治体もありますが、東京都では陽性から1週間経っても届かない事例があるという報道がありました。何かしらの手段で用意する心づもりでいた方がいい。最近ではUber Eatsや出前館、ネットスーパーなどのサービスも充実していますし、指定すれば玄関前まで運んでくれます。

ただ、コロナで体調が不良の際に食べられる「お粥」などを、自分が住むエリアからは注文できない場合もあります。コロナに備えて、パックのお粥やフリーズドライのスープ、長持ちするゼリーなど消化にいいものを買っておきましょう。自宅療養の期間は長くなる可能性があり、飽きも来るので、なるべく自分の好きなものを。すると、コロナに罹らなくても後で食べればいいし、防災備蓄品にもなりますから。

厳しい暑さが続いているので、コロナに加えて熱中症になる可能性も。経口保水液やスポーツドリンクなど糖分と塩分が入った飲料も用意しておいた方がいい。これらはワクチン未接種の場合、接種後の副反応で高熱などが出たときにも使えます。1人暮らしでコロナに感染したら、宅配サービスを使って購入してもいいし、お願いできるのならば、友人・知人に頼んで玄関前へ。

薬の問題もあります。オンライン診療なども充実してきていますが、薬を処方して郵送してもらってから届くまでには、時間がかかる。市販薬の一部はUberなどでも買える場合もあるようですが、それも住んでいる場所によります。市販の解熱剤などが必要なら友人・知人などに頼りましょう。

医師の山本佳奈さん

“不安”な1人での自宅療養 今こそ相談先のリスト化を!

ここまで主に1人暮らしの方向けにコロナの感染や自宅療養の備えについて話してきましたが、そもそもの問題があります。それは食料品などを買って、自宅の玄関まで持って来てもらえる友人・知人などがいるのか、ということです。転勤が多かったり、都会で懸命に仕事をしていたりする1人暮らしの方には、頼れる人が近くにいないケースも多いでしょう。実際、私もいません。それにコロナで在宅勤務が広がり、外出自粛をしている中で、今から誰かと親密になるのは厳しい。

事前の備えとして「かかりつけ医に相談しましょう」ともよく言われますが、こちらも若い人は比較的健康な人が多いので、いない場合が圧倒的に多い。

仮にコロナに感染して1人で自宅療養となったら不安だし、病状が悪化すれば、恐れも感じるでしょう。厚生労働省は自宅療養者の注意事項として、唇が紫色、脈がとぶ、胸の痛みがある、顔色が明らかに悪い、もうろうとしていることなどを上げ、これらの症状になったら緊急性が高いとしています。ですが、唇や顔色など、どの程度が悪化した状態と言えるのか、自分では気づきにくいし、判断しにくいですよね。

では、どうすればいいか――。コロナに罹った場合に備えて、困った際に相談できる先をリスト化することをお薦めします。もちろん親でも親戚でも、昔の友人・知人でもいい。コロナに感染して不安になった際、遠くに住んでいても電話で話したりなどすることで、不安感は減少します。それに近くにいたら必要なモノを買って来てくれるかもしれない。疎遠になっている場合は、この機会に改めて連絡を取ってみてはいかがでしょうか。

リストには自治体などの相談窓口といった公的なコールセンターの電話番号も入れるようにしてください。
必要な際に「スマホや携帯が使えない」とならないように、充電はこまめにするようにしましょう。

コロナに感染して自宅療養中に症状が悪化したら――救急車を呼ぶ。症状の重さを自身では客観的に評価できませんから、我慢も躊躇もしないで。そして救急搬送される場合に備え、保険証をすぐに取り出せるようにしておいてください。

いつ誰がコロナに感染するか分からない今から準備できることを、感染対策とともに行うことをお勧めします。

●山本佳奈(やまもと・かな)さんのプロフィール
1989年生まれ、滋賀県出身。2015年、滋賀医科大学医学部医学科卒業。ナビタスクリニック(立川)に勤務し、医療ガバナンス研究所研究員も務める。現在は内科、女性内科を担当。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。

『貧血大国・日本』

著者:山本佳奈
定価:本体780円+税
出版社:光文社

ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
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