理学療法士の私が感じる、コロナと自分らしさ

ライター業と並行して都内の介護老人保健施設に非常勤の理学療法士として勤務しリハビリなどを行う私。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、勤務する施設でも医療物資不足や、衛生面やリスク管理の徹底、入所者と家族の面会禁止など、様々なことが起きました。現場で何を感じ、どんなことに困惑しているのか、今の思いをお伝えします。

人の言動に過敏になってしまい…

医療現場の朝は早いです。定時は朝8時半ですが、実際には時間前から引継ぎや連絡事項が次々に報告される。合間を縫い検温を行い、一日の予定を確認。朝のミーティングを終えると、各々の担当の患者さんのフロアに向かい、運動療法などのリハビリを開始します。

チーム医療として医師や看護師、介護士との連携は必須ですが、基本的にリハビリ中は私と高齢の入所者さんの1対1。患者さんに合わせて、各自でスケジュールを組みながら治療や、カルテの記入といった事務作業を進めていきます。

そんな中、私が今、一番恐れていることは、「もし、自分が感染してしまったら……!」ということ。老人保健介護施設には、一人で座れない、立てない、歩けないと介助が必要な高齢者が多く、転倒を避けるために必然とスタッフと患者さんの距離が近くなります。

たとえば歩行訓練では、患者さんの側方や後方から介助もする。体を伸ばすためのストレッチや筋力訓練などでは、接触は避けられません。さらに看護師や介護士はトイレやお風呂、食事介助などの業務もあり、”密”にならざるを得ない状況があります。

そんな環境の中、私が感染すると、スタッフや家族、そして患者さんへとあっと言う間に感染し、一気に施設がクラスター化してしまう可能性が大いにあります。高齢者は重症化しやすいとされ、最悪の場合は……。病院や介護施設での感染の報道を見る度に、明日は我が身と思い、気を引き締めています。

また、コロナ禍は医療従事者のメンタル面にも影響を及ぼしています。たとえば都内のクリニックに勤める友人の看護師のAさん。以前は聞き流せていただろう言動に、敏感になっているそうです。

4月7日の緊急事態宣言以降、在宅勤務をする人が増えました。そんな中でクリニック に日々通うAさんは、知人のある発言が気になったと言います。「外に出ざるを得なかったときのことを、知人は『用事があって泣く泣く電車に乗ったの』と話したんです。緊急事態宣言が出てからもリスクを負い、電車通勤を続けている私の前で『泣く泣く乗った』と言われると、少し悲しくなってしまって」

私が感染防止のため、日常的に使っている防護メガネ

医療従事者は聖人君子ではない

新型コロナウイルスの感染が広がってから、現場では今まで以上に衛生管理を徹底しています。 

自身らの食事の際はマスクをそのままポケットに入れず、表面を触らぬように淵を持ち、ビニール袋に入れて保管。入所者さんが階をまたいだ時には手洗いの徹底を促したり、共同で使う食堂などでは、ビニールやアクリルのパーテーションを設置し、飛沫が飛ぶのを防いでいます。

施設以外でも私は、家のドアノブやスイッチなどを毎日、アルコール消毒するといった策を講じています。
それでも努力をしても、知らずに感染してしまうこともあるのでは?と思うことがありました。

新たな入所者さんが施設に入られた日のこと。入所日は、挨拶程度でしたが、その後、その人の高熱が続いたんです。以前から熱発しやすい体質だったらしく、結果的には通常の風邪でした。ですが、もしコロナウイルスに感染していたら…と考えてしまいました。

いつ誰が感染してもおかしくない現状で、私は感染した人を責めないし、コロナの症状が収まって退院した人には「心から祝福したい、なんなら花束を渡して差し上げたい」くらいに思っていました。

それなのに……。もし自分が、そして新たに入所される人が陽性と知らずに感染を広げてしまったら、と想像して、気持ちが落ちたのも確か。そんな自分にガッカリしてしまったんです。「誰も好んで感染するわけではない」という気持ちと、「こんなに予防をしても、それでも感染してしまったら…」との思い。

未知のウイルスはやっぱり不安で、軽症というレベルが一般に思われている軽症とは違うとの報道を見ると、もはや恐怖しか残らず……。

この話を同僚にすると、「そもそも医療従事者だからと言って怖いものは怖いし、自分や家族が大切ですよ。医療従事者は聖人君子とイメージする人もいるのかもしれないけど、普通の人間だし」と言う人や、「自分が犠牲になっても医療のために……というのも違和感がある」と話す人もいます。しかし、この原稿を書いている今だって、緊迫した状況の中でリスクと疲労と戦いながら働いている医療従事者もたくさんいて、その人たちも一人一人大切な命を持っているわけで。

私は一体、どんなモチベーションで向き合えば良いのだろうか、と考え込んでしまいます。

人間らしく生きるとは

ライターもしている私は、取材をする度に感銘を受けることが多いです。たとえばゲッターズ飯田さんにお話を伺ったときは、 ”いかに他人にサービス精神を持って接するか”を学んだし、東大王の伊沢さんからは、ブレない軸を感じた。テレビ東京の福田典子アナウンサーは、気配りも努力も出来て、笑顔も素晴らしかった。名前を出せばキリがないですが、ライターの仕事では「思いを伝えたい!」と強く感じながら今でも、原稿を書き続けています。

当面、コロナ禍が続きそうなこの世界で、「人間らしく生きるとは何か」と自問自答したり、「アフターコロナ、もしくはウイズコロナの時代をどう生きるのか」について日々、頭を悩ませたりしています。

状況は刻々と変化し、今書いている気持ちも1週間後には変わっているかもしれません。それでも、目の前のことに向き合いながら、新しい世界とどう向き合うか、 医療従事者、ライターとして、そして1人の人間として、試行錯誤を続けながら柔軟に前に進みたいと思っています。

東京生まれ。千葉育ち。理学療法士として医療現場で10数年以上働いたのち、フリーライターとして活動。WEBメディアを中心に、医療、ライフスタイル、恋愛婚活、エンタメ記事を執筆。