日本の力を信じた『日本沈没ー希望のひとー』 矛盾を超えたメッセージを考える
配慮されたCGだった?
『日本沈没―希望のひと―』の最終回が放送された。
僕は前向きな意味でラストに期待していなかった。東日本大震災からほんの10年で津波を含む地震のつらさを真に迫って描けるとは思えなかった。海に飲み込まれる人や沈む家屋は描写せず、無機質なビル群だけがすーっと沈んでいくだけのCGにしたのは、ドラマを見て傷つく人を減らしたかったからだと思っている。『シン・ゴジラ』みたいにSFな災害ならともかく、いまの日本で震災はリアルすぎる。
また、ラストはタイトル通り「それでも希望を見る」で終わることもわかりきっていた。だってアレだけあおっておいて全く沈没しなかったらわけがわからないし、沈没して主要キャラがみんな逃げました、めでたしめでたしなハズもない。設定上、大どんでん返しや逆転ハッピーエンドは織り込み済みなのだ。
じゃあ最終回に何に期待するかといえば、ドラマのメッセージ性だ。その点は、十分にハードルを超えた。
三つのメッセージ
このドラマのメッセージは、大きく分けて三つあった。
一つ目は地球の温暖化。いろいろな作品で扱われていて新味を出すのは難しいテーマだが、ここはブレていない。COMSでスタートし、ルビー感染症の原因もここだった。
二つ目は、絶望の中で見る希望。どれだけ追い込まれても、国民を救うために諦めない天海(小栗旬)の心の強さは異常で、正直僕は田所博士(香川照之)なんかよりよっぽど奇人だと思っている。あそこまで自分を捨てられる人はいない。
最終回では、そんな天海や常盤(松山ケンイチ)の気持ちが「未来推進会議」に伝わる。海外への移住を決断させるために、不可能に思えた100人もの集団での移民申請を実現させた。きっかけを作った財津(六角慎司)の大演説は、心の強い天海から影響を受けた結果だろう。
三つ目は、日本の力。これは里城副総理(石橋蓮司)が日本沈没を認めようとしなかった原因にもなっている。経済第一に見えた里城は、日本の歴史を重んじていた。日本人が築き上げたモノの素晴らしさが失われると信じたくなかったのだ。
その築き上げたモノが、多くの命を救う。世界的に感染が拡大したルビー感染症の治療方法だ。常盤医療とハタ製薬の薬を飲み合わせることで症状が抑制できることが発見され、全世界にアピールできたのだ。移民の交渉材料としてではなく、世界中の人々を救うために、製造方法を無料公開した。常盤会長(小野武彦)の本当に底抜けに良いおっさんというキャラクター性がまぶしい。
それだけではなかった。国宝や文化財、さまざまな特許、町工場の精密な技術、インフラの技術指導、ブランド米やブランドフルーツなど農作物の栽培方法、日本が誇る全てが移民交渉の材料になった。これは国民による総力戦だ。大企業や政府におんぶに抱っこではなく、国民全員が自らの力で国外への脱出を可能にしたのだ。ここに大きな意味がある。
たくさんの矛盾もあったが
17%超えの高視聴率で最終回を終えた『日本沈没』。途中、納得いかない展開があったのも事実だ。半分沈没しているのに携帯の電波がなぜあるのかわからないし、あんなギリギリまで天海と常盤が東京にいたのもわからない。震災をリアルに描くことをよしとしなかったのは理解できるとしても、絶望描写を天海の娘・茜(宝辺花帆美)ら子供に背負わせたのはちょっと見ていてつらかった。
このドラマを見たことで、「移民っていうけどペットはどうするの?」とか、「沈没はともかく首都機能の分散はあり」とか、「移民しなかった人はゴネ得なの?」「パワーが強すぎてプレート断裂ってあるの?」とか、いろいろ疑問をもった人は多いと思う。だが、実際に日本が沈没するとしたら実際にどうなるのか、それは誰にもわからない(こんな1クールかそこらでまとまり切るわけがない)。矛盾が出るのは必然だった。
温暖化に気をつけよう、どんな時でも希望を持とう、よいことばかり言われても正直言って頭にはなかなか入ってこない。でも、それでも考えないといけない。作品と一緒に視聴者が災害を考えたことに、このドラマの意味があったのではないだろうか。
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4:小栗旬×松山ケンイチ『日本沈没ー希望のひとー』4話。不憫すぎる小栗旬、そのケツを叩き続ける杏!
5:小栗旬×松山ケンイチ『日本沈没ー希望のひとー』5話。公衆電話を奪い合う光景に心がエグられる……今夜から第二章「日本沈没」へ
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7: 小栗旬×松山ケンイチ『日本沈没ー希望のひとー』7話。里城(石橋蓮司)を信じてよかった……からの、無能なのは総理(仲村トオル)だったのか!
8:最終回直前『日本沈没ー希望のひとー』8話。小栗旬が予告してた“里城無双”来た!カッコ良くてかわいい石橋蓮司
日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』
TBS系毎週日曜よる9時~原作:小松左京「日本沈没」
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、風吹ジュン、比嘉愛美、宮崎美子、吉田鋼太郎(特別出演)、杉本哲太、風間杜夫、石橋蓮司、仲村トオル、香川照之ほか
脚本:橋本裕志
音楽:菅野祐悟
演出:平野俊一、土井裕泰、宮崎陽平
プロデューサー:東仲恵吾
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