『日本沈没ー希望のひとー』は小栗旬×ザ・日曜劇場!観たいものをここぞと魅せてくれるドラマ

小栗旬主演のTBS系日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』。原作は1974年に刊行された小松左京の小説「日本沈没」。2023年の東京を舞台に、沈没という見えない危機が迫るなかで「見出していく希望」をテーマに描かれます。関東沈没説を唱える田所博士(香川照之)に心動かされる天海(小栗旬)、ザ・日曜劇場の見どころは?
小栗旬『日本沈没ー希望のひとー』2話。目的のためには手段を選ばない男、天海はダークヒーロー

放送開始前に、主演を務める小栗旬に取材する機会をもらった。印象的だったのは、「日本で生きている上で避けて通れないテーマ」としながらも、「フィクションとして楽しんでください」とあくまでエンターテイメントであると強調したことだ。

関東では、奇しくも放送の少し前に震度5強の地震が観測された。震災、環境問題、新型コロナウイルスの感染拡大も、人類が抱える課題だ。傷つく人や不安を感じてしまう人が多い題材ではあるが、ドラマのメッセージを受け取りつつ、小栗の言う通りエンターテイメントであることを念頭に置いて楽しみたい。

原作は小松左京の「日本沈没」。なんと刊行からもうすぐ半世紀が経とうとしている。幾度となく映像化されその度に話題となってきたが、今回のシリーズは2023年が舞台。時代背景も登場人物もほぼオリジナルとなっている。

脳にこびり付いている大和田常務剥がす

最速で一番面白いところまで駆け抜けた。これが1話を観た感想だ。

「日本沈没」は大きな展開をタイトルの時点で振りかぶってしまっている。そのため早めに日本沈没のシーンがないと、視聴者に飽きが来てしまうのだ。とはいえなんの理屈もストーリーもなしに開始10分で沈没されたら、重みにかける。そこを解消するために、役者の存在感や演技力を考慮した極力無駄を省いた台本で1話ラストにたどり着いている。

例えば、関東沈没説を唱える田所博士を演じた香川照之。初登場から天海(小栗旬)を振り回す言動を連発し、震えるように押し出す声質や、デザインパーマなんかで異端の科学者であることを1発で視聴者に理解させた。また、多くの視聴者の脳にこびり付いている「半沢直樹」の大和田暁を剥がすことにも成功している。

松山ケンイチ演じる常盤紘一は、「ぼくちん」と自称して見せることで、エリートでありながら天海にとって気心の知れた存在であることを示す。官僚なのに一瞬で腰巾着感を出す石塚平良役のウエンツ瑛士もそうだ。政府がゴソゴソする“不穏な空気”を一手に引き受けた世良教授の國村隼、圧力がすごいの反面、足を痛がる可愛さを見せた東山総理の仲村トオルなんかもわかりやすい。

他にも、状況説明なんかはテロップとナレーションをフル活用。小難しいことを言われていても、小栗旬や香川照之がいると、画面が保ってしまうから不思議だ。

観たいのは、ザ・日曜劇場

その一方で、天海の心情の変化はたっぷりと時間をかけて演出された。自身の立場もあり、元々は沈没説否定派だったが、ダイビング中に地割れを発見、さらには震災に襲われる夢を見たりと、少しずつ疑念を抱くようになる。「沈没の根拠を否定するため」としながら、田所を改定の調査に連れて行くなど、真意が掴めないシーンが続いた。

そして、関東沈没説を抹消するために行われた会議。捏造された証拠に騙され、天海以外の未来推進会議のメンバーは一斉に田所博士を責め立てた。田所博士の言葉は、まるで初めて地動説を唱えたガリレオのようにかき消されていく。

「真実に辿り着けるのを避けているのは君たちの方だ!」

この辺は、ザ・日曜劇場。香川照之が大立ち回りを見せ、國村隼がねっとりと威圧する。自分の立場を顧みずに真実を知ろうと叫ぶ小栗旬は、ファンが期待していた姿そのものだ。一番面白いところ、一番観たいもののためにストーリーがまっすぐ突き進んだ結果だ。

そんな中、田所博士が関東沈没の前兆と予言していた日之島が水没したと速報が入った。日本の安全よりも自身の予言が当たったことに、田所博士は笑みがこぼしてしまう。

今夜放送の第2話では、早くも天海が未来推進会議から外されるピンチを迎える。この後どれだけ展開を用意しているのか不安になるほどサクサク進む。この豪華すぎるメンバーたちは、一体どんなシーンでどんな演技を見せてくれるのだろう。

小栗旬『日本沈没ー希望のひとー』2話。目的のためには手段を選ばない男、天海はダークヒーロー

日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』

TBS系毎週日曜よる9時~
原作:小松左京「日本沈没」
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、風吹ジュン、比嘉愛美、宮崎美子、吉田鋼太郎(特別出演)、杉本哲太、風間杜夫、石橋蓮司、仲村トオル、香川照之ほか
脚本:橋本裕志
音楽:菅野祐悟
演出:平野俊一、土井裕泰、宮崎陽平
プロデューサー:東仲恵吾
企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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