「半沢直樹」誰かの寝返りが必要不可欠。最終回前の状況をまとめる

「倍返しだ!」で一世を風靡した、超硬派お仕事ドラマ「半沢直樹」が7年ぶりに日曜夜に帰ってきた!新型コロナウイルスによる放送延期、中断を経て、とうとう今夜最終回が放送されます。そこで今回は9話をベースにして、これまでの「半沢直樹」の状況を振り返ります。

「3人まとめて、1000倍返しだ!!」

最終回直前の「半沢直樹」第9話。予告で話題だった「3人まとめて」の3人は、箕部幹事長(柄本明)、大和田(香川照之)、そして中野渡頭取(北大路欣也)だった。ストーリーとしては、この時点で原作の『銀翼のイカロス』の内容を大幅に飛び越えている。一体どこまで突き進むのだろう?

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そもそも今何してんの? 最終回前に状況をまとめる

2部「帝国航空編」が始まったのが第4話の後半。だいぶ話が転がっているので、最終回直前に簡単におさらいをしたい。

半沢(堺雅人)が再建を任された帝国航空は、白井国交大臣(江口のりこ)が立ち上げたタスクフォースによって、およそ500億円の債権放棄を迫られていた。他の銀行の協力もあって半沢はこれを拒否するも、タスクフォースを陰で操る箕部は、東京中央銀行の紀本常務(段田安則)に根回しするなど、攻撃の手を緩めない。

そんな中、半沢は東京中央銀行が合併する前の旧東京第一銀行と箕部の間で不透明な金の流れがあったことに気づく。半沢は大和田と手を組み探ろうとするが、箕部は自殺した牧野元副頭取(山本享)が金を受け取っていた証拠をチラつかせ、半沢らを一蹴した。

そして第9話では、金融庁の黒崎(片岡愛之助)のアドバイスを元に半沢と元部下の森山(賀来賢人)が、伊勢志摩ステートへ。旧東京第一銀行が伊勢志摩ステートに20億も融資するも、返済の記録がない事実を発見する。さらに、伊勢志摩ステートが土地を20億で買い占め、そこに箕部が空港を誘致、伊勢志摩ステートが国に土地を莫大な金額で売りつけ、その利益が箕部に流れた……という可能性を見出した。

黒崎の拷問が微笑ましい

半沢には敵も多いが、信念に共感した味方も多い。その代表格が前シリーズから半沢をサポートし続ける渡真利忍(及川光博)だ。今話も「お前には絶対に迷惑をかけないようにするから」という半沢のお願いに、「嫌だね。迷惑かけないってなんだよ、それ。俺はお前のような男こそ、トップに立つべきだと思ってる」と特大のツンデレを発動。普段は飄々とした親友の本音なんて熱い展開で間違い無いのだが、クライマックス感が溢れすぎていて少し寂しくなったりもする。もうすぐ最終回なんだなと。

また、敵と見られていた者でも、半沢の信念に魅せられたり、利害の一致で仲間になったりもする。渡真利とコンビを組んでスパイ化したタブレット福山(山田純大)もそうだし、今話でおいしいところかっさらっていった黒崎なんかがそうだ。

不正の鍵を握る灰谷(みのすけ)に黒崎が迫った。証拠を突きつけたり、胆力で脅したりするのがこのドラマの見せ場のひとつだが、黒崎はそんなまどろっこしいことをしない。公衆の面前で急所を鷲掴み、ただの肉体的な拷問で吐かせたのだ。半沢にも大和田にも箕部にもできない、ある意味黒崎だけに許される荒技だ。

アンジャッシュ児嶋一哉の誠実な鬼ごっこ

仲間をフルに使って戦いを挑む半沢だが、流石に人脈もネタ切れだろう。おそらく最終回では、箕部側として振る舞っている誰かの寝返りが必要不可欠となってくる。

白井大臣の元秘書であり、現在は箕部の秘書を務める笠松(児嶋一哉)は、些細なヒントを元に半沢が不正の証拠書類を探っていることに感づく。そして東京中央銀行伊勢志摩支店内で、半沢たちと鬼ごっこを繰り広げる。

敵がどんどん迫ってくる……というパターンは、「半沢直樹」でよく目にする。逃げ切るのはわかっていてもドキドキしてしまう、そんな展開だ。しかし、追いかける笠松から嫌な感じがしない。ただ誠実に仕事をまっとうしているだけ。なんなら、すれ違いコントに発展しそうな雰囲気すらあった。

笠松はおそらく根っからの悪人ではないのだ。これまでも笠松は、所々で不可解な表情を浮かべたり、今話でも意味ありげに書類を写メするシーンがあった。どこかで反旗を翻しそうな雰囲気がプンプンする。しかし、今のところ寝返る理由が見当たらない。

無自覚な花の「白井大臣って素敵な人ね~」が見たい

寝返る理由ありありなのは、白井大臣だ。「帝国航空編」の前半では巨悪として半沢の前に立ちはだかるも、徐々に失速。箕部には、進政党のシンボルとして推されるも、それはただの人気集めのため、理想と現実の間で苦しんでいる。箕部のやり方に不満を持つ様子も描かれたし、何かしらやってくれることは間違いないだろう。ずっと白井ファンをアピールしてきた状況を何もわかっていない花(上戸彩)が「やっぱり白井さんて素敵な人ね~」みたいなことを言って半沢が苦笑するシーンが見たい。

大和田の土下座強要の意味

「もはや政治家ですらない! 欲にまみれた醜い老いぼれだ!」

やっとの思いで箕部の不正の証拠書類を掴んだ半沢。銀行と箕部の不正を世間に公表し、全てをまっさらにした状態で銀行を立て直す覚悟を決めるも、書類を大和田にかすめ取られてしまう。さらには、信頼していた中野渡頭取までもが半沢を裏切り、その証拠書類を箕部に献上してしまう。卑怯すぎる箕部にブチギレるも、箕部は土下座をすれば許すと脅す。

「半沢君、やりなさい。幹事長のお言葉ですよ」

拒否する半沢に、土下座を強要したのは大和田だ。しかし、過去の高圧的で半沢嫌いの大和田とは様子が違う。眼に涙を溜め、半ば錯乱した状態で半沢を体全体で押さえつける。大和田は、銀行、頭取、そして半沢の未来を考えて土下座を強要した。真っ直ぐに自分のプライドを貫けない自分、プライドを貫く半沢を守れない自分が悔しくて仕方がないのだ。

おそらく、今作屈指の名シーンとして語り継がれることになるだろう。しかし大和田には、最終回でこれを超える何かを見せてもらいたい。

 

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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