堺雅人の裏回しがすごい「半沢直樹の恩返し」から見えてきたものいろいろ
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- 前回はこちら:「半沢直樹」7話。「わ、か、り、ま、す、よ、ね?」で1週休み
「わが東京中央銀行は、いえ、TBSドラマチームは、放送に間に合わせるべく全力で挑んできました。しかし、感染を予防しながらの撮影で、どうしてもスケジュールが伸びてしまい、今日の放送を見送らせざるを得なくなりました。本当に申し訳ありませんでした」
「半沢直樹」第8話は、コロナ禍による撮影スケジュールの延期でいったんお休み。代わりに「生放送!!半沢直樹の恩返し」が放送された。視聴率は本編でもないのに22%超え、みんな「半沢直樹」が大好きだ。
なぜ大和田ではなく、黒崎?
冒頭では、半沢(堺雅人)と黒崎(片岡愛之助)と渡真利(及川光博)による寸劇が繰り広げられた。正直、放送枠を何とかやり過ごすためにお茶を濁しているだけかと思って見始めたが、とんでもない。今週って本編はお休みなんじゃなかったっけ?と勘違いするくらいの緊張感を持ったやりとりから、上記の半沢の台詞によるネタバラシ……という展開だった。数分の短いやりとりながらも、大和田(香川照之)の「恩返し」や、黒崎の「股間つかみ」など、本編のパロディがこれでもかと盛り込まれていた。生放送で笠松役のアンジャッシュ児嶋一哉が「あれ撮るなら本編撮った方がいいんじゃないか」とツッコミを入れていたが、だいぶ納得。ちゃんと力が入っていた。
気になったのが、半沢の相手をしたのが大和田ではなく、黒崎だったこと。もちろん黒崎も作中でトップクラスに人気のキャラクターだし、めちゃめちゃハマっていたのだが、こういう時は大和田の方が適任な気もする。ここからは完全に憶測になるのだが、これ、8話以降で黒崎は半沢とバチバチに闘うシーンがないのが理由ではないだろうか?
セルフパロディは面白いが、本編に緊張感をなくす可能性のある諸刃の剣。大和田は、クライマックスにかけて半沢とやり合うシーンが必ずあるだろう。その時、面白おかしく撮ったパロディコントが視聴者の脳裏をよぎってしまうのは、ドラマに取ってマイナスでしかない。一方、黒崎は味方や中立の立場として登場することはありそうだが、目の前に立ちはだかることはなさそうだ。最終回前に生放送しちゃうなんて本編の世界観を壊さないかちょっと心配だったが、こういう場面からバランスをしっかり取っていると感じる。
堺雅人の裏回しから想像する現場の雰囲気
生放送には、堺雅人、及川光博、片岡愛之助、児嶋一哉、香川照之に加え、番組MCに安住紳一郎アナウンサー、そして視聴者代表としてパネラーにヒロミと久本雅美が出演。およそ50分に渡り、VTRと出演者たちによる撮影秘話で番組は進行していったのだが、これがまた、本編終わってないのに何でも言っちゃう。
第7話の半沢と大和田の「お、ね、が、い、し、ま、す」のシーンや、大和田の「お、し、ま、い、DEATH!」がアドリブだったこと。撮影では本番前のテスト演技がなく、出演者たちもどこが使われているのかわからないこと、さらには「お、し、ま、い、DEATH!」を浴びせられた直後の堺の未公開映像なども。これだけで何時間でも聞けちゃうほど、本当に贅沢だった。
興味深かったのが、堺雅人の裏回し力だ。裏回しとは、バラエティなどでMCの影に隠れてトークを展開させていく役回りのこと。「アメトーーク!」(テレビ朝日系)でいう、ケンドーコバヤシやサバンナ高橋茂雄らが務めるポジションだ。冒頭から堺は、香川が役のまんまで出演しているのに気付くと「香川さん、大和田さんになってますよね?それで行くんですか?」とちゃんとツッコミを入れる。香川はこれでだいぶ話しやすくなったことだろう。他にも、話している出演者の方をちゃんと向いてしっかりとリアクションを取り、細かく気の利いたコメントを挟んでいく。バラエティで面白いことを言える俳優は見かけるが、面白いことを引き出すことができる俳優はなかなか珍しい。立場上、安住アナでは踏み込んで行けない裏話が飛び出したのは、堺がいたおかげだ。
連ドラの主役は、劇団でいう座長。現場の雰囲気を作る役割も担っている。よく誰々が豪華な差し入れを入れたなどの撮影秘話を聞くが、あれも撮影現場の空気を良くするためのひとつだ。堺雅人が生放送通り周りを生かす立ち回りを普段からしているとしたら、撮影現場の雰囲気は最高だろう。香川さん、楽しそうだったもんな。
日曜劇場「半沢直樹」
TBS系よる9時〜
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』
脚本:丑尾健太郎ほか
演出:福澤克雄ほか
プロデューサー:伊與田英徳ほか
https://www.tbs.co.jp/hanzawa_naoki/
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