「親バカ青春白書」6話。互いの恋を邪魔する父娘。さくらがガタローに抱く感情には母への想いも乗っかっている

父・ガタローをムロツヨシ、娘・さくらを永野芽郁が演じる、日本一バカでかわいい父娘の青春ホームコメディ「親バカ青春白書」。ガタローの亡き妻・幸子を演じるのは新垣結衣と話題に事欠かない本作は、気楽なストーリーが今の時代にぴったり! それぞれの恋心が交錯し、一方通行……恋は成就するのか、最終話直前の6話を振り返ります。

9月6日放送の「親バカ青春白書」(日本テレビ 日曜夜10時30分)第6話。今回から、小比賀太郎(ムロツヨシ、以下「ガタロー」)と娘・さくら(永野芽郁)の家に友人たちが集まり、全員がひとつ屋根の下で生活するシェアハウス状態に突入した。

小比賀家で居候中の衛藤美咲(小野花梨)、彼氏にDVされた山本寛子(今田美桜)、レポートを提出しないと留年してしまう根来恭介(戸塚純貴)、そして「これは全員集合の展開」とさくらから呼び出された畠山雅治(中川大志)。
6人が一緒にすき焼きを食べる場面は青春そのもので羨ましさを感じたが、よく考えるとなかなかエグい面子だ。それぞれの恋心が交錯、一方通行ばかりなのだ。根来→美咲→ガタロー→さくら→←畠山。しかも、人の家だというのにみんな遠慮なしである。この機会に恋を進展させようと、少し発情期に入っているようにさえ見えた。

ジャック・ニコルソンばりに畠山を睨むガタロー

そもそも、食卓の席の並びからして駆け引きが始まっている。まず、家主のガタローはさくらと畠山を1番遠い位置に座らせた。さくらの父親として娘の交際が面白くないのだ。ふとした瞬間に2人がキスしようとすれば、どこからともなく現れて必ず阻止する親バカっぷり。その場から立ち去る際は、畠山を睨みつけながら「シャイニング」のジャック・ニコルソンみたいな顔をしているし。まさしくホラー映画みたいだ。

というか、畠山のほうもキモい。さくらの部屋に入ったら感激のあまり空気をスースー吸いながら「草原にいる気分」とうっとりし、キスするときは慣れてなさすぎて口をとがらせる残念イケメンっぷりだ。何より、彼女の実家のキッチンで父親がいない隙を見計らってキスしようとするのがどうかしている。

一方、食卓でガタローの隣の席をしっかりキープしている美咲。なのに、なぜか根来が美咲への恋心を発動させた。意外な人が意外な人に惚れていた! ガタローと美咲の仲睦まじさを複雑な気持ちで見るさくらは、根来の恋を応援した。

自己肯定力が低い寛子にガタローがかけた言葉

6話で寛子の過去が明らかになった。中高時代にいじめられていたこと、自分と付き合うとハブられるので上京するまで恋愛経験のない“大学デビュー”だったこと。経験が浅いからDVするようなクズ男に引っかかってしまったとも言える。
「でもね、私はもうちょっと頑張ってみたいな。今まで私のこと必要だって言ってくれる人いなかったからさ。すっごく嬉しかった。だから信じたい」(寛子)

絵に描いたような自己肯定力の低さだ。つまり、言い寄られると断れないタイプ。あんなに美人なのだから好きと言われることはしょっちゅうのはずだ。だから、今までコロコロと彼氏を変えていた。
「寛子のことを好きになる奴なんて、これからうーんとたくさんいます。そいつだけじゃなく。だから、好かれて好きになるんじゃなくて、寛子が好きで好きでたまらなくなる人を見つけてください」(ガタロー)
成長過程の若者にガタローが混ざり、手や口を挟むことで大人の道へ正しく導いていくのがこのドラマの特徴である。

「真剣に小説を書く」と気持ちを入れ替えたガタローの話を聞くため、担当編集の尾崎(谷口翔太)が家を訪れた。若者とともにキャンパスライフを送るガタローが大学でどんなことを起こしてきたか、エピソードを探るのが目的だ。5人の若者はガタローとの思い出を熱弁した。「俺は全然普通じゃなくていい、普通なんてクソ食らえだ!」と宣言したこともあれば、畠山に畑を耕させて熱中症にかからせたこともあった。啖呵を切って美咲を元カレから助け出したり、「一発屋をバカにすんじゃねえ!」とキレることで根来をユーチューバーとして立ち直らせたり。こんな風に各エピソードを並べると、なんだかガタローはすごいな……。これは、美咲が惚れても無理はない。

ガタローとさくらは似た者同士

それぞれの事情で成人式に出席できなかった5人のために、ガタローは成人おめでとうパーティを開いた。20歳になった若者たちは初めてビールを口にし、そして酔っ払った。

今回、第6話限定で福田雄一の代わりに演出を務めたのはムロツヨシだ。エンドロールで流れたのは、ガタローが妻・幸子(新垣結衣)を回想する思い出の歴史だった。幸子にプロポーズするガタロー、さくらを育てるガタローと幸子などなど。ムロ監督が文字通り“公私混同”で新垣結衣をてんこ盛りにした映像は、ガタローとさくらが幸子に抱く想いの大きさをそのまま表している。何しろ、幸子が死んでからガタローは10年以上キスをしていないというのだ。

その事実を知った美咲が、なんと酔った勢いでガタローにキスしてしまう。健気に守り続けてきた唇を奪い、10年の月日を一瞬で粉々にする荒業……(なかなかキスできないさくらと畠山との対比!)。2人が唇を重ねた瞬間を見て、さくらはショックを受けた。さくらはガタローと美咲の仲が恋に発展することが嫌だ。ガタローへ抱く感情には母への想いが乗っかっているからである。

次回予告を見ると、さくらと美咲が対決モードになるらしい。
美咲「(ガタローとのことは)さくらに関係なくない?」
さくら 「なくない……娘だから!」

よく考えたら逆転現象だ。さくら&畠山の恋とガタロー&美咲の恋、親子がお互いを邪魔し合っている。子離れできていないガタローと親離れできていないさくら、2人は似た者同士だ。この先、父娘の関係性は変わっていくのだろうか? それとも変わらないままなのか。今夜放送第7話は最終回である。

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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