「半沢直樹」5話。新しいタイプの悪、筒井道隆の静かな恫喝が怖い
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- 前回はこちら:「半沢直樹」4話。大和田抜きの「半沢直樹」は考えられない(原作にはいないのに!)
「あなたからは腐った肉の臭いがする!」
「最も不要なコストはお前だぁ!」
TBS系ドラマ「半沢直樹」第5話は、視聴率25.5%。これ以上の盛り上がりはあるのかと思われた4話から、なんと2.6ポイントアップとなった。
前話まで放送されていた「セントラル出向編」は、前シリーズに比べて少し大人な半沢直樹(堺雅人)が描かれた。前線に立って身体を張るだけでなく、部下や仲間を盛り立てるリーダー的な半沢だ。しかし、今話から本格スタートした「帝国航空編」は、一人でガシガシ動き回って、7年前の半沢直樹に近い。「あなたからは腐った肉の臭いがする!」などの癖のあるセリフも多く飛び出した。やっぱり半沢は、目上の人間ばかりの“下克上環境”がよくハマる。
「帝国航空編」とは?
日本の空輸を担う帝国航空は、近年不況に喘いでいた。中野渡頭取(北大路欣也)から直々に再建を任された半沢は、労働組合やOBの存在で大胆な改革を進められない現状を目の当たりにする。そんな矢先、新たに国土交通大臣に白井亜希子(江口のりこ)が就任する。
再建チーム「帝国航空再生タスクフォース」を立ち上げた白井は、帝国航空に債権を保有している銀行に、一律7割の債権放棄を検討していると発表した。これが通れば、半沢の東京中央銀行は500億円をドブに捨てることになってしまう。この話のモデルになったのは、2009年の「JAL再生タスクフォース」だ。
全部一人でやっちゃう、久しぶりに主人公してる半沢直樹
銀行相手に戦いを挑んだ「セントラル出向編」と打って変わって、「帝国航空編」の半沢は銀行を背負って国と戦う。初めての、銀行より大きな敵だ。
第5話で半沢は、手始めに帝国航空に再建案を提出した。しかし、何者が再建案を悪意ある形に修正し流出、プロジェクトのスタートから帝国航空の社員たちを敵に回す格好となった。「裏切り者は誰だ?」という社内の不穏分子を見つける戦い。
「セントラル出向編」では、生え抜きの森山(賀来賢人)らの成長を願い、手を組んで戦っていた半沢。しかし今回からは、同じくパートナー的存在の田島春(入江甚儀)を置いてグイグイ突っ走る。一人で地方の企業に乗り込み、一人でスパイ的な役目もこなす。帝国航空の社長・神谷(木場勝己)や聖域的な存在のベテランパイロット・木滝(鈴木壮麻)の懐に、失礼ギリギリの発言で飛び込み、懐柔してしまう。
「それ以上近づかないで頂きたい。あなたからは腐った肉の臭いがする。あなたの好物なんでしょう」
帝国航空役員で元東京中央銀行の先輩・永田に対しては、まだ犯人である証拠もないのにこの口ぶりだ。大勢の社員が集まる説明会で、永田を潰すために自分主演のVTRまで用意する徹底ぶりを見せる。しかもこれ、全ては帝国航空内で自分の求心力を高めるためと言ってもいいだろう。
「帝国航空をみくびらないで頂きたい!現場の社員たちは、戦後の日本の空を守った誇りを持って働いている!」
「腐った肉」という悪意たっぷりの言葉使いをする癖に、全社員を一発で味方につける正義の言葉も使いこなす。第5話は、帝国航空社員たちを半沢がたった一人で人心を掌握する回。まさに獅子奮迅、こんな半沢久しぶりだ。
筒井道隆は新しいタイプの悪
大車輪の活躍をした半沢だったが、まだ戦う準備が整っただけ。VS白井大臣という意味では、何一つ問題は解決していない。ラストシーンで半沢が相対したのは、弁護士でタスクフォースのリーダー・乃原正太だ。これを演じる筒井道隆が怖い。爽やかだったり気弱だったりと、好青年な役柄のイメージが強いが、完全にそれとは一線を画している。
「銀行には一律7割の債権カットをお願いすることにしました。返答のタイミングは、こちらから連絡します」
銀行にとって巨額の損失となる債権カットを、乃原は粛々と当然のように説明する。返答のタイミングすらも自分たちが主導権を握り、格が違うことを暗に伝える。名刺の受け取り方もひどく雑で、ビジネスマナーなんて物は自分に必要がないと言わんばかりの横柄な態度だ。これまで半沢が相手にしてきた伊佐山(市川猿之助)や大和田(香川照之)は、半沢を目の敵にし、全力を持って潰そうとしてきたが、乃原は半沢を邪魔な小虫程度にしか思っていない。
怪演、顔芸、派手な演技が話題になってきたこれまでの敵たち。しかし、それらや自分の今までの役柄をフリにするかのごとく、静かに恫喝する筒井道隆は、「半沢直樹」にとって新たなタイプの悪だ。
第6話は、金融庁の黒崎(片岡愛之助)が再び来襲する。帝国航空の重大な過失が見つかってしまう。
日曜劇場「半沢直樹」
TBS系よる9時〜
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』
脚本:丑尾健太郎ほか
演出:福澤克雄ほか
プロデューサー:伊與田英徳ほか
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