「青天を衝け」全話レビュー

『青天を衝け』31話。渋沢栄一、不倫相手の妊娠発覚。まさかの本妻との同居スタート

吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。日本で初めてとなる銀行づくりに乗り出した栄一(吉沢亮)。豪商の小野組、三井組に協力を依頼するも難航します。一方、栄一の自宅には、身重の不倫相手、大内くに(仁村紗和)がやってきて……。

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」第31話。

渋沢栄一(吉沢亮)といとこの喜作(高良健吾)の再会、日本初の銀行設立、富岡製糸場の開業、官から民への転身……。
とにかく栄一が実業界に乗り出さないことには「日本資本主義の父」っぷりも描きようがないためか、少々駆け足の展開だった。

イッセー尾形がすごい顔芸で抗議

日本初の銀行を設立するにあたり、栄一は以前より提唱してきた「合本主義」を実践するため、当時の豪商である三井組と小野組に手を組ませ、合同で銀行を設立させようと考えていた。
しかし商人の立場からすれば、それぞれ単独で銀行を設立した方がおいしい。合同での銀行設立には難色を示す。

「やむを得ぬ。大蔵省は三井組、小野組の官金取り扱いを取りやめる!」
官金取り扱いとは、要は租税など国の金を扱うこと。
戊辰戦争で新政府軍に協力した三井組、小野組、島田組が官金の扱いを任せられており、各地で集めた税金をいったん預かるなどの業務を行っていた。
預かった税金を政府に上納するまでの期間、運用して大きな利益を得ていたため、官金取り扱いの取りやめは死活問題。栄一はそれをチラつかせて政府の意向に従わせようとしたのだ。

結果、三井組も小野組も態度を一変させてスライディング土下座状態に。合同での銀行設立を承諾することになる。
このときの栄一の表情ときたら……。私利私欲に走る商人たちを軽蔑していようにも、権力を行使する自分に酔っているようにも見える、冷徹な表情だった。

政府&栄一の要求は続く。
三井組が完成させたばかりの三井組ハウスを合同銀行として使用するため、接収しようとしたのだ。
さすがに三井組番頭・三野村利左衛門(イッセー尾形)は抵抗するが、
「ムリにとは言わぬが、三井一門が政府を敵のようにして断るとはいかがなものか」
再び官金をチラつかせる栄一。

「(商人は)これから先も地面にはいつくばったまま、あなた方お上の顔色をうかがうのみ。徳川の世と何も変わりませぬな」
三野村は、政府に逆らうことはできないと諦めつつも、全力の顔芸で抗議をした。
それを見た栄一は、自分のやっていることは、かつての悪代官による農民いじめと変わらないと気付いて自己嫌悪に陥る。

お役人感覚になっていた栄一が、民の気持ちを思い出したというエピソードだが、イッセー尾形の顔芸がすごすぎ。若干、海千山千の手だれ商人に栄一がやり込められたようにも見えてしまった。キャラが強すぎるよ!

西郷どん「慶喜公にも申し訳が立たん」

急に手に入れた権力に飲まれ、おかしくなっているのは新政府の首脳陣も同じ。新しい日本を作るために協調するのではなく、内輪もめばかりを繰り返していた。
そんな様子を見ながら西郷隆盛(博多華丸)が口ずさんでいたのが「トコトンヤレ節」。
戊辰戦争時に新政府軍の進軍中に歌われた流行歌で、
「帝王に手向かいするやつを、狙い外さずどんどん撃ち出す薩長土」
というような、幕府批判、新政府軍賛美の歌詞が続く。
戊辰戦争は薩摩藩、長州藩や岩倉具視が天皇を利用し、徳川慶喜を無理やり朝敵に仕立てて起こした戦。
「トコトンヤレ節」はそれを正当化して、兵士たちの士気を高めるためのプロパガンダソングだったのだ。

かつて薩摩藩邸で栄一と豚鍋を囲った際、幕府が倒れた後は一橋(慶喜)が国を治めるべきだと主張する栄一に対し、「薩摩が治めっとじゃいけもはんか」と言っていた西郷どん。しかし今は新政府のゴタゴタに嫌気が差し、慶喜をつぶしたことが正しかったのか、迷いが生じているようだ。
「今んままでは慶喜公にも申し訳が立たん」

一方、栄一も新政府に入って権力を振りかざす今の立場に疑問を感じていると語った。
「おはんはおいとは違う。まだ色んな道が開いちょる。おはんも後悔せんようにな」

幕府を倒した張本人である西郷どんと、幕臣だった栄一。本来、敵同士だった二人だが、微妙な信頼関係が感じられてしみじみいいシーン。
ただ、この後の西郷どんの運命を知っていると切なくなる。

我慢ばかりの妻・千代の行く末は……

西郷どんの言葉や、「渋沢、この先は日本のために尽くせ」という慶喜の言葉を思い出した栄一は、
「過ちて改めざる、これを過ちという」
ということで、妻・千代(橋本愛)に官から民へ転身すると宣言する。

……それはいいんだけど、不倫問題はどうなったの!?
ワンナイトラブだけではなく、不倫相手の大内くに(仁村紗和)がまさかの妊娠までしていたことが発覚。身寄りがいないくにを、栄一は「放っておくわけにもいかねえ……」と自宅に招く。
修羅場か!? と思いきや千代は、
「それなら、おくにさんもお腹のお子もここで共に暮らせばよいではありませんか」
とのこと。そんなに物わかりがよくていいの!?

赤い糸で繕われた足袋から、不倫は察していたようだがまさか妊娠まで……。千代もさすがにショックだったようで、裏でものすごいため息をついていた。
これが昼ドラだったら、我慢に我慢を重ねた妻が何かのタイミングでブチ切れて、ドロドロの展開突入していくのだろうが、さすが大河ドラマでそれはないか……!?

娘が生まれたばかりなのに夫が家出しちゃって、やっと家族一緒に住めるようになったと思ったら、夫の不倫&妊娠発覚。なおかつその不倫相手&子と同居生活までスタート。
おおむね史実のとおりだし、聖人君主ではない渋沢栄一を描きたいという意向があるのかもしれないけど、このエピソード、必要だった!?
実業界に乗り出す栄一より、我慢ばかりの千代ちゃんに幸あれ!

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

\n
『青天を衝け』30話。艶福家・渋沢栄一誕生!? 廃藩置県より不倫が気になる
1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
ドラマレビュー