「青天を衝け」全話レビュー

『青天を衝け』28話。渋沢栄一、大隈重信と伊藤博文に言いくるめられる。

吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。新政府から大蔵省への出仕を求められた篤太夫(吉沢亮)は、直接断るために東京へ向かったのに、大隈重信(大倉孝二)に言い負かされてしまいます。そんな篤太夫に対して、謹慎を解かれた慶喜(草なぎ剛)からくだされた最後の命とは。

渋沢栄一改め篤太夫(吉沢亮)は、フランス留学中に4万両も利を蓄え、帰国後は主君・徳川慶喜(草なぎ剛)が隠居する静岡藩でコンパニーを立ち上げて財政を潤わせていた。
その噂は新政府の元にまで届き、早速、東京へ呼び出しがかかる。

後の総理二人に言いくるめられる篤太夫

要は新政府の民部・大蔵省へ出仕しろという要請だが、篤太夫は元・幕臣。幕府をつぶした新政府の下で働く気などなく、断る気マンマンで東京に向かう。
そこで出会った伊藤博文(山崎育三郎)と大隈重信(大倉孝二)の、一筋縄ではいかない曲者感がすごかった。

まずは伊藤博文。
篤太夫は、静岡からヤバイやつが来たと思わせるため「偉人商館の焼き討ちを企てていた身」と一発かます。しかし伊藤は逆に「そうか、君もやったんか! そりゃあスッとしたじゃろう!」とノリノリに。

幕末期の伊藤博文は、思い込みで人を暗殺したり、英国公使館に焼き玉(焼夷弾)を投げ込んで全焼させたりと、ゴリゴリの尊王攘夷派だった。
横濱焼き討ちを企てたとはいえ、計画倒れで終わっている篤太夫が「昔は尖ってた」自慢をしたところで太刀打ちできるような相手ではない。

さらに大隈重信とは、たっぷり8分以上にもわたる論戦を繰り広げた。
ここでも、「よくしゃべる」篤太夫より「佐賀の減らず口」大隈の方が一枚上手だ。
篤太夫が、幕府をつぶした薩長への嫌み、恨み、維新以降の政治への不満をいくらぶつけても、大隈は「それについては、おいのあずかり知るところではないのである!」と受け流す。

まあ、大隈は佐賀藩出身で戊辰戦争には直接関わっていないので、ホントに知らないんだろうけど。
新政府に対しても、篤太夫と同じように薩長中心の旧態依然とした政治の進め方には不満を抱いている立場だ。

「君は、新しか世ば作りたいと思うたことはなかか!?」
大隈からそう問いかけられ、篤太夫はハッとする。

代官に反発したり、尊王攘夷にハマッたり、一橋家に仕えたりと、その時々で主義主張がコロコロ変わっている篤太夫だが、一貫しているのは「この世を変えたい」という思い。
新政府に対して同じような不満を抱き、西洋に学んで近代化を進める必要性を感じている篤太夫は、大隈の熱弁に思わず乗せられ、「胸がぐるぐる」しまくっている表情を浮かべていた。

大隈重信は学生時代、自分よりも字がうまい同級生にコンプレックスを抱き、「もう文字なんか書かない!」と決心。政治家になって以降もほぼ文字を書かず、書類は口述筆記。口八丁で諸外国との交渉をまとめてきた人物。
これまでわりと口八丁で世渡りしてきた篤太夫も、後に総理大臣にまで上り詰める二人相手は荷が重い。いいように言いくるめられてしまったようだ。

この先は日本のために尽くせ

東京では、箱館戦争で新政府軍に徹底抗戦していた渋沢成一郎(高良健吾)の消息も分かった。軍務官糾問所に投獄され、打ち首になる可能性もあるという。

篤太夫と、成一郎をはじめとする幕臣たちとの大きな違いはフランス留学に行ったこと。留学を通じて西洋の文化を学んだということもあるが、それ以上に、フランスにいたせいで大政奉還、戊辰戦争と明治維新のホットな時期に日本にいなかったというのが大きい。
幕府軍に加わって新政府軍と戦っていたとしたら、さすがに新政府への出仕の話は出なかっただろうし、成一郎のように投獄されたり、渋沢平九郎や土方歳三のように死んでいた可能性もある。
篤太夫が何だかんだで大蔵省で働く気になったのも、新政府と直接一戦を交えることがなかったからではないだろうか。

そうはいっても敵方である新政府に入り込むことに気まずい気持ちはあるのだろう。慶喜への報告では、「新政府が転覆したその時こそ、われらで新しい日本を守るべきだと存じます!」なんて強がりを言っていた。

慶喜は、そんな篤太夫の気持ちを見透かしてか、「これが最後の命だ。渋沢、この先は日本のために尽くせ」と命じる。
幕府の復権などを望むことなく、新時代を受け入れている慶喜。隠居して以降、オーラが抜けきっているように見えるが、何だかんだで一番正確に未来を見据えているように思える。
慶喜からそう言われ、篤太夫は一橋家に仕える時に平岡円四郎からもらった名前を返上。渋沢栄一改め篤太夫改め、再び栄一に。

渋沢栄一、歴史の表舞台に

新政府に出仕することを決めても、慶喜、徳川への忠誠心を捨ててはいない。
「徳川をぶっつぶしたやつらに、お前たちだけではできなかっただろうと、徳川があってよかったと、徳川なしには日本は守れなかったと思い知らせてやりてぇんだ」
第1話の冒頭で徳川家康が語っていた、「明治維新によって近代化が進んだのではなく、徳川の家臣によって新しい時代が開かれた」という証明がはじまる。

前回の東京行きでは和服に二本差しという討ち入りスタイルだったが、今回は洋装での上京。これから栄一が挑むのは、武力による戦いではない。
着任早々に岩倉具視(山内圭哉)や大久保利通(石丸幹二)といった、討幕の仕掛け人、新政府の首脳陣の前でダメ出しをしまくる。

「本日より出仕し、江戸城……ではなく皇城をぐるりと回り、政をつぶさに観察しておりましたが、こりゃあ駄目でございます。あまりに何もできていない。むちゃくちゃだ!」
新政府には、徳川家康が江戸幕府を作った時のように10年後、100年後のことを見据えて働いている者がいないと指摘する。
早速、元・幕臣として、新政府への倍返しスタートかと思いきや、大蔵省と間違えて政府中枢に乗り込んでいたことが判明。アッサリと土下座をしていた。

「大変失礼いたしました!」
伊藤、大隈という後の総理二人に振り回されつつも、元・幕臣としての誇りを持って新政府で働くことを決めた栄一。

ここからが、一般的によく知られている渋沢栄一の活躍のスタートだ。

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

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1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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