「青天を衝け」全話レビュー

『青天を衝け』25話。帰国した篤太夫、鬱展開続きな日本の状況を知る

吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。ようやく日本に帰国した篤太夫(吉沢亮)。横浜で杉浦(志尊淳)や福地(犬飼貴丈)らと再会し、幕府が薩長に敗れた経緯や、慶喜(草なぎ剛)や幕臣の動向を聞かされます。頭が整理できないまま、故郷の血洗島へ戻り……。

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ『青天を衝け』第25話。ついに明治時代がスタート。

冒頭、徳川幕府の終焉とともに登場しなくなるのかと思いきや、「すっぱり徳川の世は終わり、新しい世が始まったと思っているのかもしれない。しかし実際はまだまだ」と顔を出した徳川家康(北大路欣也)にほっこりしたが、その後は鬱展開が続くつらい回だった。

暗い話題ばかりの日本の状況

徳川幕府が崩壊する超重要な局面をパリで迎えた渋沢栄一改め篤太夫(吉沢亮)。
大政奉還が慶応3年10月14日。篤太夫が帰国したのが慶応4年11月3日なので、1年以上もの間、情報が入らずにやきもきしていたが、ようやく日本で大政奉還前後に起こったさまざまな出来事を知ることとなる。

徹底抗戦を訴えていた小栗忠順(武田真治)は新政府軍によって処刑され、平岡円四郎を取り立てた川路聖謨(平田満)は新政府軍が江戸城に迫る中、拳銃自殺。
渋沢成一郎(高良健吾)や尾高惇忠(田辺誠一)、さらに篤太夫の見立て養子となっていた渋沢平九郎(岡田健史)たちは新政府軍と戦うため彰義隊、振武軍に参加したという。

しかし篤太夫が一番気にしていたのは主君・徳川慶喜(草彅剛)のこと。鳥羽・伏見の戦いで敗れて大坂から江戸に戻って以降、江戸→水戸→駿府と移り謹慎していたとのこと。

「上様は、あくまで恭順を示されたのですね」
幼少の頃より父・斉昭より「徳川宗家に背くことはあっても、決して天子様に向かって弓を引くようなことはあってはならぬ」と教え込まれていた慶喜だけに、天皇を手中に収めた薩長軍と敵対するのは避けたかったのだろう。

篤太夫の見立て養子・平九郎の死がキツイ

篤太夫はそんな慶喜の気持ちを、それなりにくみ取れていたようだが、それは距離のある場所で冷静に受け止めることができたからではないだろうか。
目の前で幕府が崩壊していく様を見てしまったら、そうそう冷静ではいられない。
慶喜の意に反して、幕臣たちの一部は新政府軍に徹底抗戦することになる。

そんな中、犠牲になったのが平九郎だ。

多数の新政府軍に取り囲まれて絶体絶命のシチュエーションを頭脳プレイで切り抜け、故郷に向かう道を目指すが、ついに追い詰められて銃撃される。最期は自ら腹を切っての凄絶な死を遂げたのだ。
旧来型の武士としては「見事な死にざま!」といったところだろうが、平九郎はもともと百姓の子。
篤太夫の見立て養子になり、武士となっていなければ、こんな運命はたどらなかったはずだ。篤太夫も責任を強く感じているようで、この話を聞く間(誰の伝聞なのかよく分からないが)、ものすごい形相をしていた。

これまで、あまりストーリーの本筋とは関係なく、やたら篤太夫の妹・てい(藤野涼子)とイチャイチャするシーンが描かれていたが、あれを見せられてきたからこそ、視聴者にとっても平九郎のエグイ死に方はキツイ!

洋装の成一郎と土方歳三のタッグに萌える

一方、何とか生き延びた成一郎は、函館に渡っていまだに戦っているという。

「主もなく残された烏合の衆が、いくら集まろうとも勝てるわけがない。こうなってはもはや互いに生きて会うことはかなわぬだろう。潔く死を遂げろ」
成一郎に対しては辛辣な篤太夫。
かねてより武士になりたいと切望していて、一橋家の家臣となってからも剣術の鍛錬を続けていた成一郎。
篤太夫に巻き込まれる形で武士になった平九郎とは立場が違う。
篤太夫としては、慶喜の近くにいたにも関わらず、心を知らずに戦い続けている成一郎に対する怒りもあるのだろう。

それはそれとして、洋装となった成一郎と土方歳三(町田啓太)のタッグはたまらないものがあった。

「行くとするか、もうひとりの渋沢よ!」
篤太夫のこともちゃんと覚えてるんだ! と盛り上がった視聴者も少なくないだろう。
装備で明らかに負けている新政府軍を相手に、刀一本で奮戦する成一郎。絶体絶命に陥ったタイミングで、「俺は潔く旧来の戦い方は捨てた」という土方歳三が銃で助ける。
鬱展開が続いた今回、数少ない爽快なシーンだったが……まあ、箱館戦争の先行きも暗いんだけど。

で、慶喜の気持ちは……?

それぞれが慶喜のお気持ちを察して、各自のやり方で忠義を尽くそうとしていた今回。
成一郎からすると篤太夫の方こそ、

「お前は上様の本当の心根を分かっておらぬ。徳川の家臣として、朝敵の汚名をそそぐことなく、この先どうして生きていけよう」
ということらしい。
しかし肝心の慶喜の気持ちは語られていないのだ。

どうして大坂城から江戸に逃げ帰ったのか、新政府軍と戦う幕臣たちのことをどう思っているのか? 平岡円四郎など、心を開ける家臣が亡くなっている今、慶喜が本心を語れる相手はいないのか? 篤太夫と再開して、この辺の気持ちが語られるといいが。

今回、押さえておきたいのが、篤太夫と三井組の番頭・三野村利左衛門(イッセー尾形)との出会い。
金のない新政府が苦し紛れに発行した紙幣・太政官札の信用のなさを嘆き、

「まことの戦はこれからざんすよ。わしら商人の戦いは」
と、篤太夫に声をかけていた。
確かに、篤太夫がかつて手がけた「銀札」と比べると見るからにショボイし、偽造防止の工夫などもされてなさそうだ。武力で幕府を倒したものの、経済面ではボロボロな新政府の状況が伝わってくる。

この三野村は、後に篤太夫と一緒に日本初の銀行を設立することになる人物。篤太夫は篤太夫で、慶喜の汚名をそそぐため、経済方面から戦うことになるのだ。

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

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吉沢亮『青天を衝け』24話。坂本龍馬も勝海舟も登場しない、パリで迎える明治維新
1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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