「青天を衝け」全話レビュー

吉沢亮『青天を衝け』24話。坂本龍馬も勝海舟も登場しない、パリで迎える明治維新

吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。パリにいる篤太夫(吉沢亮)や昭武(板垣李光人)らのもとに、数カ月遅れて幕府から大政奉還の詳細が届き、一同は大混乱。その一方で、篤太夫は証券取引所に案内され、のちの日本を変える出会いを果たします。
『青天を衝け』23話。おそらくドラマ史上初!大政奉還を見届ける徳川家康

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」第24話。久々の放送となった「パリの御一新」。

御一新=明治維新のこと。鳥羽・伏見の戦いに端を発した戊辰戦争。勝海舟と西郷隆盛による江戸城の無血開城交渉。渋沢成一郎(高良健吾)率いる彰義隊をはじめとした旧幕府軍と新政府軍が戦った上野戦争……などなど、幕末~明治ドラマにとって超重要な明治維新エピソードがめじろ押しな時期だが、本作ではほぼパリのパートのみで進行した。

篤太夫と一緒になってじれったさを感じる演出

徳川慶喜(草なぎ剛)が大政奉還を行ったのが慶応3年10月14日。しかし、パリにいる篤太夫たちに大政奉還の詳細を伝える手紙が届いたのは年が明けてからだ。
日本で何かが起こっていると知りながら、詳細が分かるのが数ヶ月後というのはつらい。
平時ならともかく、260年以上続いた徳川幕府がなくなってしまうという一大事。パリにいる幕臣たちも気が気でないだろう。

その上、主君である慶喜が理解しがたい行動を取っているという情報が小出しに送られてくるのだ。
大政奉還後、薩摩藩との衝突を避けるため京都を出て大坂城へ引き上げたものの、「薩摩を討つべし!」モードになってしまった幕臣たちを抑えることができずに京都へ向けて出兵。鳥羽・伏見の戦いで負けた結果、慶喜は兵たちを残したまま、江戸に帰ってしまったという。
慶喜的にはそれぞれに理由があってのものなのだろうが、その考えが幕臣たちに伝わっていないからこそこのような事態に陥っているわけで、パリへの手紙でも慶喜の本意を読み取ることはできない。
これには篤太夫も困惑。

「かようなありさまで、神祖三百年のご偉業を自ら捨てられ、東照大権現様に何と申し開きをなされるおつもりか!」
慶喜を諫める手紙を送るよう、徳川昭武(板垣李光人)に進言するほどだった。

大政奉還したという情報だけが報され、続報がなかなか入ってこなくて、「どうなってるんだよ!?」とやきもきする気持ちは視聴者も一緒だ。
ものすごく続きが気になる状態でオリンピックによる3週の放送休止が入り、待ちに待った今回の放送もパリばかりで慶喜の様子がまったく描かれない。
放送休止まで計算に入っていたのかは分からないが、情報が入ってこないじれったさを篤太夫たちとリンクして実感できる巧みな演出だった。

後の日本を変える証券取引所との出会い

大政奉還の情報で大混乱しているパリ御一行だが、そんな中にあっても篤太夫は、西洋で見聞を広めていた。

後の篤太夫、そして日本にとっても大きな出来事が証券取引所との出会い。
幕府の終焉によって留学滞在費の送金が滞るようになり、困り果てていた篤太夫。それを見かねた日本総領事にして銀行家のフリュリ・エラール(グレッグ・デール)が篤太夫を誘って証券取引所を訪れたのだ。

国や企業が一般の投資家たちから資金を集めて大きな事業を行い、それによって得た利益を投資家たちに還元する「キャピタルソシアル」という概念を教わった篤太夫は、「一人がうれしいのではなく、皆が幸せになる」という自分のモットーとも通じるこの考え方に興奮した。

後に日本初の証券取引所を作ることになる篤太夫の原点となった出来事なのだろう。
ある意味、幕府が倒されて留学滞在費がショートしたことが日本に証券取引所が誕生するきっかけを生み、明治以降の日本を発展させる原動力となったのだ。
それにしても、1月に証券のシステムを教えてもらったばかりなのに、帰国する8月までに600両(約7800万円!)も利益を出す篤太夫の手腕……。さすがは日本資本主義の父!

日本側の明治維新は?

幕府なき後の日本で自分のやるべきことを見つけ、それなりに希望を抱いて帰国した篤太夫。
しかし、日本で大政奉還を迎えた幕臣たちは夢も希望もない状態だ。
彰義隊に参加して新政府軍と戦ってボロ負けした成一郎、尾高惇忠(田辺誠一)、渋沢平九郎(岡田健史)。そして江戸に戻って以来、謹慎しているという慶喜。

次回はおそらく時間を巻き戻し、今回描かれなかった日本側の御一新が描かれるのではないだろうか。やっと慶喜の様子が知れる!

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

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『青天を衝け』23話。おそらくドラマ史上初!大政奉還を見届ける徳川家康
1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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