「青天を衝け」全話レビュー

今夜「深夜のイッキ見!まつり」放送、栄一&慶喜に会える!『青天を衝け』再開に備える

吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。東京オリンピックで一時放送を中断している「青天を衝け」が総集編で戻ってきます。「深夜のイッキ見!まつり『青天を衝け』総集編・再放送」に備えて、レビューをお届けします。

8月8日(日)0:00~「深夜のイッキ見!まつり『青天を衝け』総集編・再放送」が行われる。

渋沢栄一改め篤太夫(吉沢亮)がパリ博覧会に派遣され、後の人生に大きな影響を与える西洋文化と出会ったり、徳川慶喜(草なぎ剛)が大政奉還を決心したり、幕末の盛り上がりを見せているタイミングなのに、オリンピックのせいで3週にわたって中断となっている『青天を衝け』。

この機会にこれまでの流れを振り返って、来週からの放送再開に備えよう!(またすぐにパラリンピックで中断しちゃうんだけど)

栄一&慶喜、幕府側から見た幕末

本作の主人公は「日本の資本主義の父」渋沢栄一。しかし実質、徳川慶喜とのW主演といえるくらい、慶喜が強い存在感を放っており、この二人を主軸に話が進んでいく。
渋沢栄一が表舞台で活躍し出すのは明治時代になって以降のこと。幕末の有名事件にはほとんど絡んでこないため、慶喜の視点も入っていないとドラマが地味になりすぎてしまうという事情もあるのかもしれないが。

血洗島の藍農家に生まれた栄一は、幼い頃から商売の才能を発揮していたが、当時のインテリ層の多くと同じく尊王攘夷思想にハマり、さらにその思想を過激化させて倒幕まで考えるようになっていた。
一方、徳川慶喜は当然、幕府寄りの立場ではあるものの、水戸藩出身であるということが事情を複雑にしている。

「水戸黄門」こと徳川光圀が編さんしたことで知られる『大日本史』から生まれた「水戸学」では「日本は天皇の国である」と教えている。
天皇は存在するものの、実権は将軍が握っていた江戸時代においては異質な考えだが、ここから尊王攘夷思想が生まれていく。
慶喜も父・斉昭から、「徳川宗家に背くことはあっても、決して天子様に向かって弓を引くようなことはあってはならぬ」と言い聞かせられて育ってきたのだが、その慶喜が御三卿(将軍後継者を輩出する家)のひとつ、一橋家の当主として迎えられることとなったからややこしい。
幕府を倒すことによって「日本をよくしたい」と考えていた栄一と、「将軍よりも天皇!」と育てられてきたにもかかわらず、お世継ぎ問題に巻き込まれていく慶喜。

この二人を中心に、幕府側から見た幕末が描かれていく。

明治維新の負け組・栄一が経済の力で逆転!?

幕末を取り上げた多くのドラマ・映画などでは、旧態依然とした考え方で機能不全状態に陥っていた幕府を、薩摩・長州といった先進的な考えを持つ藩が倒して近代日本がはじまった……というような描かれ方をすることが多い。
しかし本作では、幕府側にも日本近代化に対応できる人材やシステムがあったことを描こうとしている。

反幕府勢力たちから恐れられているように、慶喜ならば死にかけだった幕府を立て直すことができた可能性があっただろうし、後の活躍を見れば、栄一が幕府近代化のためのシステムを作ることは十分に可能だったはず。
こうして幕府側に肩入れして見ていくと、むしろ薩摩藩の方が、旧来型の軍事力ゴリ押しと、ズルイ策略を使って幕府を陥れようとしているように見えるのだ。
敵は身内にもいる。古い頭から抜けきれない幕臣や、いまだに尊王攘夷思想で凝り固まっている水戸藩士たちが足を引っ張りまくっている。

結局、明治維新とは、近代化に対応できる新しい頭を持っている人たちと、昔ながらの武士たちがせめぎ合っていた時代なのだろう。
明治維新を経て、西郷隆盛の起こした西南戦争で武士の時代は終わったとよく言われている。しかしその後も、政権の中枢にいたのは武士出身者。
本当に武士の時代を終わらせたのは、経済で社会を変えた商人たちの力だ。
あくどい薩摩に幕府を倒され「負け組」となった渋沢栄一が、経済の力でどう逆転していくのか。そのあたりが今後の見どころになっていくだろう。

全41話になってしまったが……

もうひとつ注目したいのは、ドラマ・映画などでまず描かれることのない明治維新後の徳川慶喜だ。
大政奉還以前の慶喜と栄一は、身分が違いすぎてそうちょくちょく会えていたわけではなかったはず。しかし慶喜が将軍を辞め、謹慎して以降は、ちょくちょく会って交流を深めていたようだ。

むしろ『青天を衝け』はここからが本番……なのだが、放送は年内で終了、全41話となることが発表されている。例年、47~9話作られていることを考えると短い!
沢尻エリカのゴタゴタや、新型コロナウイルスによる撮影の遅れなどで前作『麒麟がくる』の終了が後ろ倒しになったこと。さらにオリンピック・パラリンピックで放送が減ってしまったせいなんだろうけど……。

何とかキレイに終わらせてくれることを祈りつつ、今夜の総集編に備えよう!

「深夜のイッキ見まつり『青天を衝け』総集編・再放送」
8/8(日)[総合]前0:00~※土曜深夜
▽総集編①(第1~12回)
▽総集編②(第13~21回)
▽第22回「篤太夫、パリへ」
▽第23回「篤太夫と最後の将軍」
※放送から1週間はNHKプラスでも配信!

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

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1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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