「青天を衝け」全話レビュー

『青天を衝け』26話「恥を胸に刻んで前に進みたい」渋沢栄一、新時代での戦い方を知る

吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。久々に故郷・血洗島に戻った篤太夫(吉沢亮)。妻の千代(橋本愛)や父母と再会を喜ぶ一方で、尾高家に起こった悲しい出来事を知り衝撃を受けます。その後、昭武(板垣李光人)から預かった書状を届けるため、慶喜(草なぎ剛)との謁見を願い出たところ……。

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」第26話。
渋沢栄一改め篤太夫(吉沢亮)が見立て養子に取ったせいで新政府軍との戦いに巻き込まれ、無残に戦死してしまった平九郎(岡田健史)など、多くの知人たちの死が語られ、暗い雰囲気だった前回。

そんなモヤモヤした気持ちのまま、パラリンピックの影響で放送が2週お休みとなっていたが、ようやく再開!
久々の里帰り、そして主君である徳川慶喜(草なぎ剛)との対面と、さまざまな人たちとの“再会”が描かれた。

恥を胸に刻んで前に進みたい

「国破れて山河在りか……。何もかも変わっちまったかと思ったが、ここは何も変わらねぇ」
明治維新のゴタゴタとは無関係に、かつての姿のまま、篤太夫を迎えてくれた故郷&村人たち。
将軍の弟のお供としてフランスに行くという、北関東の片田舎の農民としては考えられないような大出世をして帰ってきた篤太夫を、みんな歓迎してくれている。

そうはいっても、日本がひっくり返るほどの大変革の真っ最中。微妙な空気も漂っている。
大出世したのはいいけど、幕府は潰れちゃったもんな。コイツ、これからどうするんだろ?……的な空気だろうか。
ましてや、幕府が倒れたゴタゴタに巻き込まれて、平九郎も死んでしまっているのだ。

平九郎といい雰囲気になっていた、篤太夫の妹・ていは「何だい、自分だけ帰ってきて。兄さまが平九郎さんを見立て養子になどしなければ、今頃、平九郎さんは村で普通に暮らしてたんだに!」と身も蓋もないことを言ってしまう。

尾高家では平九郎の他、長らく投獄されていた長七郎(満島真之介)も亡くなったという。渋沢家に巻き込まれたせいで不幸続き……という感じもするものの、そもそも尊王攘夷思想で篤太夫たちを煽っていたのは尾高家の惇忠(田辺誠一)だ。

「もう、誰にも合わす顔がねぇ。戦で死ぬことも、忠義を尽くすこともできず、一人おめおめ生き残るとは……」
惇忠は生き残ったことを恥じて引きこもっているようだが、篤太夫は「この恥を胸に刻んで今一度、前に進みたい。生きている限り」と決心する。

「銃や剣を手に戦をするんじゃねぇ。畑を耕し、藍を売り、歌を詠み、皆で働いて励むことこそが俺の戦い方だったんだ」
尊王攘夷にハマったかと思えば、一橋家に使えて幕臣となり、そうこうしていたら農民・商人としての生きることが自分の戦い方だと気付く。

考えがブレまくってはいるが、こうやって過ちを認めた上で先に進んでいったからこそ、新時代に対応できたのだろう。
一方、「武士道というは死ぬことと見つけたり」的な価値観のまま突っ走っている渋沢成一郎(高良健吾)たちは、いまだに函館でノーフューチャーな戦いを続けているのだ。

寺のおっさんと勘違いされる慶喜

多くの人たちとの再会が描かれた今回、ハイライトはやはり主君・慶喜との再会だろう。
篤太夫がフランスで大政奉還を知って以降、ずーっと気にしていた慶喜の様子。待望の対面なのに、篤太夫が「あ、寺の方ですか?」と声をかけてしまったほど、慶喜は変わり果てていた。

幼少の頃より、良くも悪くも隠しきれない切れ者オーラのせいで、さまざまな人たちの期待を一身に受けてきた慶喜。
それが今や、寺のおっさんと勘違いされるレベルになってしまったとは……。

それにしても、役者とはここまでオーラを自在に出したり引っ込めたりできるものかと感心してしまった。
「政の返上はともかく、鳥羽や伏見の戦にしても、何とか他に手の打ちようが……」
「今更、過ぎ去ったことをとやかく申しても詮方ないことではないか。私はそなたの嘆きを聞くために会ったのではない」

これまでは、篤太夫の空気の読めない発言にも、素直に答えてくれたり、反論してくれたりしていた慶喜だが、今や厳しい発言を受け止める余裕もなさそうだ。
ビジュアル面だけでなく、中身からもご隠居館が漂っている。上様ッ、お痛わしい……。

慶喜、篤太夫に頭を下げる

オーラも生気も抜けきってしまった感のある慶喜だったが、フランスでの徳川昭武(板垣李光人)の様子を報告していたはずなのに、いつのまにか自分の武勇伝を夢中になって語ってしまう篤太夫を見て、思わずニコリ。
何かと“しゃべりすぎる”篤太夫のせいなのか、慶喜に篤太夫のテンションを上げるパワーがまだ残っているということなのか。

ほぼ抜け殻状態になっていた慶喜が、篤太夫との再開で少し元気になったように見えた。ただ、嬉しそうに弟の留学報告を聞く姿から、やはりご隠居感が漂っていたが……。

「この度、昭武が障りなく帰国できたのも、ひとえにそなたのおかげだ。礼を申す」
篤太夫にとって一番のショックは、慶喜が頭を下げて礼を言ったことではないだろうか。慶喜はもう将軍候補でも、将軍でもない。それが実感されたはずだ。

「もう何も申し上げますまい。しかし……しかし、どんなにご無念だったことでございましょう」
涙ぐむ篤太夫。
現時点では、新時代における負け組となっている徳川家とその家臣たち。ここから篤太夫は、自分なりの戦い方で巻き返していく……はず!

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

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吉沢亮『青天を衝け』24話。坂本龍馬も勝海舟も登場しない、パリで迎える明治維新
1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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