小栗旬×松山ケンイチ『日本沈没ー希望のひとー』5話。公衆電話を奪い合う光景に心がエグられる……今夜から第二章「日本沈没」へ

小栗旬主演の TBS 系日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』。原作は1974 年に刊行された小松左京の小説「日本沈没」。2023 年の東京を舞台に、沈没という見えない危機が迫るなかで「見出していく希望」をテーマに描かれます。関東地区の沿岸部が沈没。天海(小栗旬)と椎名(杏)の情報リークが功を奏してほとんどの住民の避難は済んでいたものの、ビルは倒壊、多大な犠牲者が出た。天海の判断が正しかったと東山総理(仲村トオル)は頭を下げ、未来推進会議に復帰するよう要請し、ストーリーに明るいきざしも見えた一方、一度は「最大の危機は避けられた」と宣言した田所博士(香川照之)は、海底地盤の観測から第二波の予兆を感知してしまう。

「あくまでエンターテイメントとして見て欲しい」

放送開始前にしたインタビューで小栗旬が最後に語った言葉だ。正直これを聞いたときはそれほどピンとこなかった。テーマがテーマだけに傷つく人がいるかもしれないとのことだろうが、『日本沈没』は過去に何度も映像化されてきているし、ある程度の覚悟を持って視聴するはず。そんなに予防線を張らなくてもいいだろうと思ったのだ。

しかし、第5話を観てこの言葉の本当の意味がわかった。こんなにハッキリと辛いシーンを描くのかと。

目を覆いたくなるような光景

関東地区の沿岸部が沈没した。数えきれないほどのビル群が水没し、前震とは思えないほどの被害を受けたが、天海(小栗旬)と椎名(杏)の情報リークのお陰でほとんどの住民の避難は済んでいた。しかし、バスで避難する家族を見送った天海と椎名は、怪我を負ってしまう。

心をエグられたのは、被災地で公衆電話を奪い合う人々の姿だ。小学校低学年くらいの女の子が、母親に電話をするもつながらない。電話に並ぶ大人たちは、早く代われと少女を取り囲んだ。「だってママが……!」と泣き叫んでも、大人たちは少女を責め立て続けるのだ。

突きつけられた人間の醜さに憤りを覚えたが、実際に自分があの場にいたらどうなのだろう。ちゃんと少女を守ってやれるのか、もしかしたらあの大人たちと一緒になって声を荒げてしまうのではないだろうか。考えるだけで胸が痛い。

一方で、リアリティが薄いと言える1時間でもあった。ビル群の水没はかなりのロングショットだったし、地震から逃げる人々も津波の怖さも描かれなかった。避難が済んでいたとはいえ、多くの命が失われたのは間違いない。だが、その明確な数字は出なかった。避難所こそ沈痛に描写されたが、地震そのものはほとんど描いていないのだ。震災前から震災後にスキップされた感は否めない。

一体なぜなのだろう。もしかしたら、悲惨すぎるシーンの放送を自粛したのかもしれない。そこまでする必要がないと判断したのかもしれない。胸が痛むシーンを踏まえての「あくまでエンターテイメントとして見て欲しい」という言葉だったのかと、今思う。

もはや役者ではない小栗旬の顔

スキップ感こそあったものの、見所が多かったのは間違いない。天海と椎名は、お互いの家族が乗る避難バスがトンネル事故に巻き込まれたと聞き、現場である松葉町へと向かう。「早く行かせれば良かった」「家族さえ救えない」と悔やむ2人だが、それは情報格差をなくそうと戦った結果だ。家族と国民を天秤にかけなかった証でもある。

松葉町で見た景色は、天海の想像を超えていた。小さな病院に怪我をした人々がごった返し、そこら中で人間が命の危機に瀕している。人並みをかきわけて娘の茜(宝辺花帆美)を探す小栗の顔は、役者を超えて父親だ。

茜を見つけたきっかけは、心許なく響くハーモニカの音だった。遠くから姿を確認した天海は、どういう心境からなのだろうか、一呼吸置いて茜の名前を叫んだ。命を心配し合う親子の再会には涙が滲んでしまう。その後も天海からくっついて離れない茜、まだ自分の母(宮崎美子)の安否を確認していないにもかかわらず涙を流して喜ぶ椎名の優しさ、その生存を確認したあとの安堵の表情。どれもがこれまでの戦いの厳しさを表現していた。

仲違いを1話で収めるファインプレー

天海が避難所で確認したものは、家族の安否だけではなかった。救援物資が届いていないことなど、命のリアルを見た天海は、外されていた未来推進会議へ電話をかけ、石塚(ウエンツ瑛士)に現状を伝えた。どれだけ国民の命を心配しても足りていなかったと、自身の甘さを悔やんだのだ。

経済面のみで日本の未来を心配する里城副総理(石橋蓮司)と、現場で戦う天海の現状の違いを知った常盤(松山ケンイチ)は、自衛隊と東山総理(仲村トオル)を引き連れて避難所を回る。この自衛隊と総理大臣の登場の心強さ。どこか頼りなかった東山に、風格みたいなものが生まれた。

松葉町で常盤は、天海が正しかったと頭を下げ、未来推進会議に復帰するよう告げる。東山総理も天海に力を貸して欲しいと握手を求めた。仲違いを1話で解決してくるあたりは、本当に視聴者の気持ちがわかる制作陣だ。これを2~3話引っ張られなくてよかった。

5話にて第一章は終了。ちょっと首都圏の復帰は早いようにも思えるが、いったんはめでたしめでたしといった形。しかし、田所博士(香川照之)は、第二波が来る危険を察知していた。関東ではなく、第二章は「日本沈没」だ。強くなった天海と未来推進会議は、どう立ち向かっていくのだろうか。

小栗旬×松山ケンイチ『日本沈没ー希望のひとー』4話。不憫すぎる小栗旬、そのケツを叩き続ける杏!

日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』

TBS系毎週日曜よる9時~
原作:小松左京「日本沈没」
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、風吹ジュン、比嘉愛美、宮崎美子、吉田鋼太郎(特別出演)、杉本哲太、風間杜夫、石橋蓮司、仲村トオル、香川照之ほか
脚本:橋本裕志
音楽:菅野祐悟
演出:平野俊一、土井裕泰、宮崎陽平
プロデューサー:東仲恵吾
企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
ドラマレビュー