綾野剛×藤井道人『アバランチ』5話。アバランチ誕生を描くエピソード0に涙!生配信にこだわる理由もわかった

綾野剛主演『アバランチ』。雪崩という意味を持つ、謎の集団「アバランチ」とは……? 第5回は「Episode0 夜明け」として、アバランチ誕生の背景が明らかに。山守(木村佳乃)はなぜ羽生(綾野剛)たちを集めたのか。羽生の先輩刑事であり、山守の婚約者だった藤田(駿河学)の殉職の裏にあった陰謀、大山(渡部篤郎)の思惑、それを許さない「アバランチ」というストーリーの構図が現れた。また、失意の羽生を救った存在として少女・あかり(北香那)との出会いのエピソードに、アバランチがよりどころとする「正義」の性質も示された。
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第5話はアバランチ誕生までが描かれた。羽生と山守の過去。アバランチが生配信という手段を取る理由。タバコシーンやピアスにもちゃんと意味が込められていた。4話までのモヤモヤとした疑問が解けてスッキリ。この1話でぐんと深みが増し、ますます面白くなってきた。


人の心が死ぬ瞬間を見てしまった

羽生(綾野剛)と先輩の藤田(駿河太郎)の印象的な会話

3年前、公安部外事三課だった羽生(綾野剛)は先輩の藤田(駿河太郎)らとテロリストの潜伏先へ向かう。情報提供者の命を救うため羽生は藤田の制止を振り切り突入。しかしそれは罠だった。
爆弾によって藤田を含む5人の仲間が死亡する。生き残ったのは羽生ただ一人。藤田の婚約者だった山守(木村佳乃)が泣き崩れるシーンには胸が締め付けられた。

この事件の指揮を取っていたのが当時警備局長だった大山(渡部篤郎)。大失態のはずだが大山はこの直後、官房副長官に出世する。そんなバカな。あの日藤田が要請したSATも出動記録が無い。当時内調(内閣情報調査室)所属だった山守はいち早く「裏に何かある」と大山に疑いを持つ。

退院後羽生は仕事に復帰。しかしテロ事件の捜査は上層部からの命令で中止に。
公安部長・戸倉(手塚とおる)に抗議するが、
「そもそもお前が暴走したから藤田たちは爆破に巻き込まれた。お前の身勝手な行動が仲間の命を奪ったんだ。全てはお前の責任だ」
戸倉は呪いのような言葉を羽生に突き刺した。

「俺の責任……なんで俺生きてんだ……」
羽生の表情が静かに変わっていく。人の心が死んでいく瞬間を見てしまったようで恐ろしかった。

呪いのようだった戸倉(手塚とおる)の言葉

羽生を照らしたあかり

警察を辞めた羽生は小さな町工場で働き始める。
社長(森下能幸)は取引を続けてもらうため取引先の社員・長谷川(金子昇)にわずかな貯えの中から金を渡していた。社長の娘・あかり(北香那)は「普通に間違ってる」と憤るが、羽生は「世界は正しいことだけで回ってるわけじゃない」と覇気がない。

山守が羽生をアバランチに誘うために訪ねてきた時も羽生の心は動かなかった。あのテロ事件は大山が仕組んだ偽装テロだという新事実を知らされても無気力な状態。

「捜査が中止になって俺は自分で調べようとしました。でも誰も協力してくれなかった。警察を辞め調べ続けようとしたけど何者でもない俺にできることなんて何もなかった。俺の正義は何の役にも立ちませんでした。すみません」
全てに絶望している。そう見えた。

そんな羽生を変えたのがあかりだった。

ある日、長谷川にあっさり取引を切られてしまう。詰め寄る社長にうすら笑いで「そんな金をもらったなんて証拠はどこにあるんですか?」などとのたまう。
このしらばっくれ方、4話で大山が蘭子に言った「本当にそんなファイルがあるんですか?」という言い方にそっくり。ムカつくー! この町工場はまるで社会の縮図だ。

あかりは「父があんたに金渡してた証拠がある」とUSBを見せ長谷川を路地裏に呼び出す。
「あんなショボいキックバックでいつまで仕事もらえると持ってる方がバカなんだよ」
USBを力づくで奪う長谷川。
こ、こいつ……。自分の立場を利用して不当に金をむしり取った挙句女性に暴力まで振るうとは。卑怯で浅ましくて最低の男。

ボロボロになって帰宅したあかり。
心配する羽生に「でも証拠押さえた。この動画、世に出す」とスマホの映像を見せる。

「私、工場のこと諦めないから。新しい取引先も探す。まだ時間はある。正義は勝つよね?」
うつろだった羽生の目がみるみる生気を取り戻していく。
「すげぇな。お前すげぇよ。よく頑張った」
あかりに微笑みかけて涙をこぼす。

あかりの正義感に触れて、羽生は再び感情を取り戻した。
あかりという人は羽生にとって、真っ暗な闇の中に差し込んだ一筋の光のようだったのではないだろうか。

羽生にとってのあかりの存在の大きさにグッときた

なるほどねー。アバランチが生配信という方法にこだわっていたのはこういうことがあったからなんだと納得。あかりへのリスペクト。
半透明のお面で生配信出演しちゃってたのも、あかりに「俺頑張ってるよ!」的に見て欲しかったからなのかなぁ。
あとアバランチになってからの羽生が、警察時代に比べて明るくヤンチャくさいのもあかりの影響だったりして。

アバランチ好きだなぁと改めて思ったのが、弱い女が男に守ってもらうという筋書きにならないところ。男も女も関係なく悪いものに立ち向かっていく。そして、性別も年齢も関係なくリスペクトを示す。素敵だ。
(逆に敵側の人間は自分より弱者を平気で踏み躙る)

さて、アバランチによってこれまで何人もの腹心を失った大山が反撃に出る。なんと羽生が指名手配されてしまったのだ。
アバランチのメンバーにも週刊誌記者が近づいている。

内調の桐島(山中崇)はもしかしたら山守の味方なのかも? いや、やはり敵か。この人にも要注目。

今夜からの第二部が楽しみだ。

綾野剛×藤井道人『アバランチ』4話。国生さゆり衝撃の死!田中要次衝撃の過去!「正義」の定義が揺れ始める

『アバランチ』

カンテレ・フジテレビ系 毎週月曜よる10時~
出演:綾野剛、木村佳乃、福士蒼汰、高橋メアリージュン、田中要次、千葉雄大、渡部篤郎、利重剛、堀田茜、板尾創路、安井順平、磯村勇斗 ほか
監督:藤井道人(映画「ヤクザと家族 The Family」映画「新聞記者」)、三宅喜重(カンテレ)、山口健人
脚本:丸茂周(第一話)
音楽:堤 裕介
主題歌:UVERworld
プロデュース:安藤和久(カンテレ)、岡光寛子(カンテレ)、笠置高弘(トライストーン・ピクチャーズ)演弘大 (トライストーン・ピクチャーズ)
制作:カンテレ、トライストーン・ピクチャーズ
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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