柴咲コウ「35歳の少女」広げまくった風呂敷がとっちらかったまま最終回に突入

柴咲コウが5年ぶりに民放ドラマ主演で話題の「35歳の少女」。10歳の少女・望美は不慮の事故が原因で長い眠りにつき、25年の歳月を経て、奇跡的に目覚めます。長年眠ったままだった望美は、心は10歳のままなのに、体は35歳……しかも家族はバラバラに。最終回直前、いろいろとっちらかっていた9話。このドラマはどこへ向かっている?

柴咲コウ主演、遊川和彦脚本のドラマ「35歳の少女」第9話。

時間を売買するという、ちょっとアレなYouTuberになってしまった時岡望美(柴咲コウ)を止めるため、母・多恵(鈴木保奈美)は「じゃあ、一緒に死のう」と、望美を窓から突き落とそうとする。しかし長年の介護がたたり、心不全とクモ膜下出血で逆に多恵がぶっ倒れてしまった。

25年間眠っていた望美に代わり、今度は多恵が寝たきりに。ここから、多恵を目覚めさせるために家族がひとつになる的な展開を予想していたら……アッサリ死んだー!
ついでに広瀬結人(坂口健太郎)と折り合いの悪かった父親も唐突に死んでしまった。

母ちゃんが死んだから仲直りってそれでいいのか!?

何だかんだあって、スマホで非常ベルの音を流しながら、望美と愛美が「とんぼのめがね」を歌うという謎の儀式を経て意識を取り戻した多恵。最期に家族ひとりひとりへ言葉をかけ「愛してる」を連呼しながら、望美の事故以来、失っていた笑顔を浮かべた。

白髪にしてもなお美しい鈴木保奈美の熱演は、「家政婦のミタ」最終回で冷徹家政婦が見せたはじめての笑顔を思わせるグッとくる演出ではあったのだが、こじれにこじれていた時岡家なのに「母ちゃんが死んだからみんな仲直り」って、そんな決着でいいの!?

昏睡状態の望美に母親の愛情を取られてしまったと感じ、多恵に反発しまくっていた妹の愛美(橋本愛)は、多恵がぶっ倒れたと聞いて急に家族愛全開に。
家族や友人、恋人を「ムダなもの」と切り捨てていたはずの望美も、多恵が遺していたカセットテープのメッセージを聴いて、あっという間に転向。……というか、再び中学生くらいの精神年齢に戻ったように見える。

父・進次は……、もともと多恵とよりを戻したそうな雰囲気だったので、あまり変化はナシ。多恵の葬式を終えて、みんなですき焼きを食べてめでたしめでたし。そんな結末じゃまったく納得できない!

Hulu配信のサイドストーリーでよかったんじゃ……

父・進次が再婚した家庭の問題も、何だかよく分からないままサクッと解決してしまった。

進次が懲戒解雇! 母親まで引きこもりに!? 引きこもりの息子が母親から100万円もらったかと思ったら、実の父親からさらに100万円せしめてきた! その金を競馬にぶっ込んで倍々ゲームで増やすって!?
この家族はどうなってしまうのか、それなりに盛り上がっていたのに、結局、進次が息子の部屋のドアをこじ開け、体当たりでぶつかってみたら分かり合えましたって……。

この程度の話だったら、「Huluで独占公開中!」的なサイドストーリーでもよかったんじゃないだろうか(サイドストーリーという名のミニコント程度のコンテンツを、有料会員制サイト限定で公開するという最近の流行、大っ嫌いだけど)。

はじめて公開された息子の部屋には、絵画にギター、英会話、様々な資格試験からジグソーパズルまで、すべて中途半端な状態で放置されていた。これを見るだけでも息子の抱えていた闇に興味津々となってしまうのだが、こちらも家族みんなで食卓を囲んでハッピーエンド……なのか?

いろいろとっちらかったまま最終回へ

近年、遊川和彦がテーマにしている家族愛からはじまり、子どものいじめ問題、世界中の人たちの幸せ、『モモ』をモチーフにした・盗まれた時間・問題などなど。
いろいろと手を広げてきた本作だが、どれも納得感のないままフェードアウトしてしまっている感がある。
望美が目覚め、多恵も目覚め、再び幸せだった家族に戻るのかと思いきや、そんな展開にはならず。望美がアナウンサーになる夢をかなえて、みんなを笑顔にする……ということもなく。
メチャクチャ気になる時間売買ビジネスも詳細が描かれることはなさそうだ。

10歳から眠り続けてきた少女が、母親の25年間にわたる執念の介護のおかげで35歳になって目覚めた! 
これだけで十分インパクトのある設定なのに、さらにいろいろ乗っけちゃった結果、ドラマ全体がどこに向かっているのかよく分からないことに。

そもそも進次の家庭にしろ、結人の両親にしろ、『35歳の少女』というタイトルにもかかわらず、望美と関係なく解決していく問題が多すぎる!
残された課題は、愛美の再就職と、結人が受け持っているクラスのいじめ問題だが、これも望美が入り込む余地なさそうだが……。

とにかく今夜最終回! いろいろあったけど全部放り投げて、本当に愛する人と結ばれたからハッピー……みたいな結末にならないといいけど。

■35歳の少女

1:「35歳の少女」1話。ギャン泣き「うわぁ~ん」“頭の中10歳”な柴咲コウの演技にネットざわざわ
2:『35歳の少女』2話。見た目は大人、頭脳は子ども。柴咲コウは、逆「名探偵コナン」
3:柴咲コウ「35歳の少女」3話。鈴木保奈美演じる過干渉母親が「過保護のカホコ」とリンクする
4:「35歳の少女」4話。セーラー服を着た中学生・柴咲コウが反抗期に
5:「35歳の少女」5話。坂口健太郎が女子高生・柴咲コウと同棲開始
6:柴咲コウ「35歳の少女」6話「みんなを幸せにする!」と言いながら家族をブチ壊す望美
柴咲コウ「35歳の少女」7話。大人になった望美の「もう誰の幸せも祈らない」宣言
8:柴咲コウ「35歳の少女」8話。「じゃあ、一緒に死のう」鈴木保奈美が柴咲コウと無理心中を図る、唐突!

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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