「35歳の少女」4話。セーラー服を着た中学生・柴咲コウが反抗期に

柴咲コウが5年ぶりに民放ドラマ主演で話題の「35歳の少女」。10歳の少女・望美は不慮の事故が原因で長い眠りにつき、25年の歳月を経て、奇跡的に目覚めます。長年眠ったままだった望美は、心は10歳のままなのに、体は35歳……しかも家族はバラバラに。望美もいよいよ反抗期に突中。ピュアな主人公が周囲の人を救っていくという遊川和彦お得意のパターンの本作。毎回いい話にまとめられていて、ちょっと物足りないかも?!

柴咲コウ主演、遊川和彦脚本のドラマ「35歳の少女」第4話。

25年間の眠りから覚めた頭の中10歳の35歳・時岡望美(柴咲コウ)。今回は精神年齢が中学生くらいまで成長して反抗期に突入した。前回のラストには母・多恵(鈴木保奈美)と抱き合って「ママ、だ~い好き」なんて言っていたのに、たちまち「ママの顔見るとイライラするんですけどぉ~」だ。

いくらなんでもヤバ過ぎるパパ活男VS鈴木保奈美

精神年齢が中学生になった望美は早速、親よりも友達ということで、リアル女子中学生たちと仲良くなる。
しかしリアル女子中学生からしたら望美は、自分のことを中学生だと言い張る35歳のおばさん。事情を理解していなければだいぶ危ない人だ。

実は「タバコを買いに行かせる」など、便利に使える大人として計算尽くで付き合っていたのだが、それにしてもセーラー服を着た35歳と一緒に遊ぶのはキツかろうに……。
見た目が柴咲コウなので、リアル女子中学生と並んでセーラー服を着ていても、まあまあイケているのがスゴイけど。
女子中学生たちに利用されていると薄々気付きつつも、

「お願い、のぞみん助けてくれないかな」

との電話を受た望美。このくだりも色々と謎だった。
望美が現場に向かうと、女子中学生が男に腕をグイグイ引っぱられてホテルに連れ込まれそうになっている真っ最中。パパ活のつもりで男と会ったらこんなことになってしまったという。
しかし、望美は電話を受けてから母・多恵に止められ、幼なじみの広瀬結人(坂口健太郎)に相談し、それから現場に向かったのだ。その間、ずーっと腕の引っ張り合いをしていたの!?

望美のせいで女子中学生を逃がしてしまった男は、「こうなったら責任取れよおばさん」と今度は望美をホテルに連れ込もうとする。
さらに、例のごとくGPSで追跡していたのか、奇跡的に助けに現れた多恵にグーパン。
女子中学生を無理矢理ホテルに連れ込もうとした挙げ句、35歳でもいいやとなり、最終的には白髪のおばさんを殴るとは、まさに外道! どれほど性欲に支配されてるのよ……。

娘の反抗期を喜ぶ母親の気持ち

こんなやばいパパ活男から助けてもらったのに、依然反抗期の望美は多恵に、

「別に助けてもらわなくても、私ひとりで何とかできたんだからね」

なんてツンデレなことを言ってしまう。甘えたい&反抗したい気持ちが拮抗している中学生らしい発言ではあるが。
これに対して多恵は、予想外のうれし涙を流した。
実は、望美が寝たきり状態のまま数年経った頃、

「元気だったら今頃中学に行ってたんだな。もう私は望美の反抗期を見ることはできないんだな……」

と絶望し、心中を考えたことがあるという。

その時は“勝利や絶対に逃げないことの象徴”であるトンボを見たことで思いとどまることができたのだ。

「おかげで今こうして、アンタの反抗期を見ている。そうか、これが望美の反抗期か……」

昏睡状態になってしまった娘の親が、「反抗期でもいいから見てみたい」と願う気持ちを考えるとものすごく切ない。ただそれ以上に、普通に中学生になってセーラー服を着た姿も見たかったのでは……。アナタ、さっきセーラー服を着て喜んでる望美を全否定していたでしょ!?

さらに、望美の反抗期が見られなくて絶望した数年後には、妹・愛美(橋本愛)の反抗期が到来していたはず。その時期、望美の世話にかまけて愛美を見ていなかったからこそ、家族バラバラになっている現状が生み出されているのだ。
娘の反抗期に感動する母親といういい話ではあったものの、多恵の闇はまだまだ深そう。

結人にとって望美は仮想生徒なのか?

今回、これまで隠されていた結人が教師を辞めた理由も明かされた。
第1話では教師を辞めた理由を、

「今のガキは大人のことなめてるし、保護者はどいつもこいつもガーガーうるせえし……」

と説明していたので、生徒や保護者たちのイヤな面を見てしまって、憧れていた教師生活に幻滅したのかと思っていたが、真相はまったく違った。
はじめて担任を受け持ったクラスで「いじめなんて絶対ない」と信じていたのに、生徒のひとりがいじめを苦に投身自殺してしまったのだ。
その子を救えなかったことに責任を感じて教師を辞めたという、ものすごく真っ当な理由。第1話で妙にやさぐれていたのは何だったんだ。

ダメな人多めなこのドラマにおいて、一番まともそうな結人。代行業も、教師を辞めてヤケクソでやっているのかと思いきや、意外と真面目に取り組んでいるように見える。
しかし、かえってそこに結人の闇を感じてしまう。

看病してきた25年間の思いを望美にガッツリ乗っけている多恵。
それと同じように、教師をとっくに辞めているのに、なにかと教師口調になってしまう結人は、成就できなかった教師の夢を、自分を頼ってくれる望美に乗っけているんじゃないだろうか。
授業参観代行で訪れた小学校で、突然いじめ問題に首を突っ込んだのも、冷静に考えるとまあまあどうかしている行動だ。
教師を辞めた理由を明かした結人に対して望美は、

「そばにいてあげたかった、結人くんが苦しんでいる時に一緒にいてあげたかった」

と慰めの言葉をかけていたが、同級生としての慰めよりも、仮想生徒としての望美の存在を求めているように見えてしまう。

もっと遊川ドラマらしいエグい展開が見たい!

ピュアな主人公が周囲の人を救っていくという遊川和彦お得意のパターンが明確になってきている本作が、なんだか毎回いい話にまとめてきているのでちょっと物足りない。
多恵や結人からむりやり闇を感じ取ってしまうも、いい話かと思っていたらいきなり人が死んだりする、いつもの遊川ドラマを期待しているからかも……。
その点で注目したいのは、泥酔して元カレの家に行き「難破船」を熱唱した愛美と、それを隠し録り&ネットに公開した元カレの今カノ・林田藤子(大友花恋)のバトル。

「だってぇ~ん、目の前にうるさい虫が飛んでたら潰しません?」
「ふざけんじゃないわよこの小娘が! ぶっ殺すぞ!」

遊川ドラマに求めてるのはこういう話よ!
愛美が広告代理店を退社し、フリーランスのデザイナーになってめでたしめでたし……なんて話じゃなく、藤子にキッチリとエグい倍返しをしてもらいたい!

次回はこちら:「35歳の少女」5話。坂口健太郎が女子高生・柴咲コウと同棲開始

■35歳の少女

1:「35歳の少女」1話。ギャン泣き「うわぁ~ん」“頭の中10歳”な柴咲コウの演技にネットざわざわ
2:『35歳の少女』2話。見た目は大人、頭脳は子ども。柴咲コウは、逆「名探偵コナン」
3:柴咲コウ「35歳の少女」3話。鈴木保奈美演じる過干渉母親が「過保護のカホコ」とリンクする

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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