柴咲コウ「35歳の少女」3話。鈴木保奈美演じる過干渉母親が「過保護のカホコ」とリンクする

柴咲コウが5年ぶりに民放ドラマ主演で話題の「35歳の少女」。10歳の少女・望美は不慮の事故が原因で長い眠りにつき、25年の歳月を経て、奇跡的に目覚めます。長年眠ったままだった望美は、心は10歳のままなのに、体は35歳……しかも家族はバラバラに。ヒステリックな母親・多恵(鈴木保奈美)が「過保護のカホコ」と重なる3話を振り返ります。

柴咲コウ主演、遊川和彦脚本のドラマ「35歳の少女」第3話。
25年前、時岡望美(柴咲コウ)が事故に遭った原因は自分にあると、それぞれ責任を感じ続けていた家族。

第2話のラストで望美は、そんな家族を「悪くないから」と赦した。原因となった豆腐を(醤油もかけないで)みんなでむさぼり食ったことで、険悪な関係になっていた家族がなんとなーく和解したのかと思っていたが、第3話ではあの豆腐は何だったんだというほどの元通りっぷり。
みんな険悪なままだし、母親・多恵(鈴木保奈美)は相変わらず怖い。

老けた演技をする鈴木保奈美の若さが尋常じゃない

家族たちの仲が悪いのは、望美に対する罪悪感以上に、現在のそれぞれの人生が上手くいっていないことに原因がありそうだ。

父親の進次(田中哲司)は、再婚相手の連れ子(竜星涼)がバイオレントな引きこもりで、父親らしい態度をまったく取れていない。
妹の愛美(橋本愛)は、仕事は順調そうなものの、元カレである上司に未練たらたらで、ストーカー的行為を行っている。

中でも一番キツイ境遇におかれているのは、母親の多恵だろう。

25年前に望美が昏睡状態となって以降、手足をマッサージしたり様々な治療法を試したりと執念で介護を続けてきた。
しかし進次とは離婚。愛美も家を出ていってしまった。25年目にようやく目を覚ました望美も、頭の中が10歳のままという心配過ぎる状態だ。
望美の入院費もハンパなさそうだし、目覚めた35歳児を養っていかなくてはならない。それなのに、保険の外交員としての仕事は上手くいってなさそう……。苦労しすぎ!

同じだけ歳を取っているはずの進次と比べ、多恵の老け込み方が尋常ではないのも仕方ないところだ。
望美の介護による苦労から白髪が増えまくってしまったのか、白髪を染める時間すら惜しんで世話をしてきたということなのか?

それにしても、鈴木保奈美の実年齢(54歳)を考えれば、現在パート(57歳設定)は素顔でそのまま演じられそうなものだが、実際には顔全体を特殊メイクでシワシワにして年齢を表現している。
むしろ、25年前(32歳設定)の方を自然に演じているように見える。3人の娘を育ててきたというのに……鈴木保奈美の若さ、恐るべしだ。

多恵の過干渉っぷりに「過保護のカホコ」を思い出す

かつては笑顔の絶えない優しい母親だった多恵だが、25年間の苦労のせいか、かなりヤバイ母親になっていた。交友関係を制限し、望美の部屋に監視カメラを設置。部屋から出られないように外から鍵をかける。
過干渉すぎる行動を望美から批判された多恵は、亀のぬいぐるみに向かってこんなことをつぶやいていた。

「なんでこんなことになっちゃったんだろ。あの子が目覚めたら嬉しいことばっかりだと思ったのに……」

25年間の介護は相当キツかったとは思うが、ある側面では、子どもがいつまでも自分の手の内にあるという喜びも感じていたのではないだろうか。
望美を目覚めさせるために努力してきたはずなのに、いざ目覚めてみると、望美の回復を早々に諦めて家を出ていった進次と仲良くしたり、かつての同級生・広瀬結人(坂口健太郎)のことを自分(多恵)以上に信頼したり……。

「私だけの望美だったはずなのに!」そんな感情から多恵の娘への“過干渉”はますますエスカレートしていってしまう。

この構図、どこかで見たな……と思ったら、遊川和彦の過去作「過保護のカホコ」だ。
「カホコ」では、メチャクチャ箱入り娘として育てられてきたカホコが結婚相手を連れてきたことから、過保護な母親と衝突。カホコの成長とともに、母親の子離れも描かれていた。
本作でも、望美(の脳内)が成長する過程と、多恵の子離れが描かれていくのだろう。

ただ、気になったのは今回の仲直りの方法。第2話では家族みんなに対し「悪いのは私だから」と望美に言わせることで、それぞれが抱えていた事故に対する責任感に赦しを与えていたが、第3話ではヒステリックなまでに過干渉になっている多恵に対し、

「それは全部私のせいなんだよね。私がみんなから笑顔を奪ったんだよね」

と謝罪の手紙を読ませている。

多恵の苦労を労う感動的なシーンではあったものの、「何でもかんでも“事故に遭った望美が悪い”という結論で問題を解決していく気なのかよ!?」とモヤモヤしてしまった。
確かに、家族がバラバラになってしまった遠因が望美の事故にあることは間違いないんだけど……。

今後、精神年齢が上がって、自分の責任をますます自覚してしまった望美がみんなに謝りまくる……なんて展開は見たくない!

次回はこちら:「35歳の少女」4話。セーラー服を着た中学生・柴咲コウが反抗期に

■35歳の少女

1:「35歳の少女」1話。ギャン泣き「うわぁ~ん」“頭の中10歳”な柴咲コウの演技にネットざわざわ
2:『35歳の少女』2話。見た目は大人、頭脳は子ども。柴咲コウは、逆「名探偵コナン」

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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