柴咲コウ「35歳の少女」6話「みんなを幸せにする!」と言いながら家族をブチ壊す望美

柴咲コウが5年ぶりに民放ドラマ主演で話題の「35歳の少女」。10歳の少女・望美は不慮の事故が原因で長い眠りにつき、25年の歳月を経て、奇跡的に目覚めます。長年眠ったままだった望美は、心は10歳のままなのに、体は35歳……しかも家族はバラバラに。同棲を開始して、アナウンサーを目指す望美。6話は、主人公ががんばればがんばるほど周囲をイライラさせていくというのも遊川ドラマのお約束通りの展開に!?

柴咲コウ主演、遊川和彦脚本のドラマ「35歳の少女」第6話。
毎週、急速に精神年齢が成長している時岡望美(柴咲コウ)。今回は幼なじみの広瀬結人(坂口健太郎)との同棲生活をはじめ、夢だったアナウンサーを目指すため就職活動もスタートした。
……ということは大学生くらいの精神年齢になったということか? 言動はまだまだ中学生くらいに思えるけど。

無職率高すぎな一族が心配

再び教師になるために代行業を辞めた結人をはじめ、泥酔ストーキング動画の流出などもあり大手広告代理店を辞めることになった妹・愛美(橋本愛)、引き渡し前の家で泥酔して一流ハウスメーカーを懲戒解雇になった父・進次。
気付けば、進次が再婚した家族を含めても働いているのは母・多恵(鈴木保奈美)だけという状況。
大手企業に勤めていた愛美と進次はそれなりに貯金もありそうだが、代行業……というか要はフリーターだった結人は貯金あるのか? そんな状態で無職どころかバイトすらしたことがない望美と同棲をはじめて大丈夫なの!? 色々と心配だ。

一方、望美はウキウキで同棲生活をエンジョイ。キッスを求めたり、同棲=結婚と思い込んだり(このへんも中学生っぽい!)。結人は、浮かれる望美を「その前にママたちに認めてもらわないとまずいんじゃないか?」とかわす。

「みんなを幸せにする」ために動き出した望美が達成すべき目標は下記の通りだ。

  • ママたちに認められて結人と結婚をする。
  • 就活をして夢だったアナウンサーになる。
  • 多恵たち3人が一緒に暮らせるようにして、昔のみんなに戻ってもらう。

この目標を見ていると、どうしても思い出してしまうのが同じ遊川和彦脚本のドラマ「過保護のカホコ」だ。
母親に恋人との結婚を認めてもらうため、自分のやるべきことを見つけ、・すんばらしい・恋人の絵を世の中に広め、みんなを幸せにしたいというドラマだった。

ピュアな主人公が一生懸命にがんばってみんなを幸せにするというのは遊川ドラマの定番だが、ピュアであるが故に、主人公ががんばればがんばるほど周囲をイライラさせていくというのも遊川ドラマのお約束だ。
本作もお約束通りの展開を見せていく。

家族の幸せより自分の幸せを優先?

ひとまず「家族3人が一緒に暮らせるようにする」という目標を達成するために望美がやったのは、豆腐を買ってくるというもの。
醤油もかけず、みんなで豆腐をむさぼり食ったアレをまたやろうというのか……。
第2話での豆腐は、望美の事故に対して責任を感じていた家族が、事故の原因となった豆腐へのトラウマを払拭するための儀式だった。
あの時は「こんなことで和解しちゃうの!?」と、遊川ドラマらしからぬハートフルな展開に戸惑ってしまったが、今回への布石だったのだろう。

「豆腐を食べたら仲直りできる」と思い込んでいる望美は家族みんなを実家に集めるが、当然、そう何度も豆腐で和解できるはずもなく、険悪な雰囲気に。

ただ、ここにきて判明したのが、多恵は意外と家族のことを思っているということ。
進次に対しては「アナタと結婚したのだって(後悔していない)」
愛美にも「(実家に戻ってこいと)今まで何回も言ってるわよ。電話やメールも毎週してるけど、この子が全然返事してこないだけで」とのこと。
望美を目覚めさせるため、冷血な介護マシーンになってしまったのかと思ったら、意外とツンデレ……。一番家族のことを愛しているのは多恵なんじゃないだろうか。
家族みんなで暮らして欲しいという望美の願いにも「分かった。昔みたいにここで家族で暮らしましょう」との返答だった。
愛美と進次も「ウソでしょ!?」「いいのか!?」と、実家での同居にまんざらでもない様子。何だかんだで空気を読まない望美のピュア力が家族の絆を取り戻した……と思いきや、ブチ壊したのも望美のピュア力だった。

同居する条件として多恵が挙げたのが、望美も結人との同棲を解消して実家に戻ってくること。
「私が事故に遭う前のみんなに戻って欲しいの」と言うのなら、そんなにおかしな条件ではないと思うが、望美の返事はNO。
結局、望美の「みんなを幸せにしたい」は、「自分の夢を全部かなえたい」の一貫にすぎないのだ。

「25年前お姉ちゃんが寄り道して事故に遭っただけでも迷惑なのに、目覚めてからも自分だけが純粋なままみたいな顔して私たちに色々イヤな思いさせてるの分かってる? こんなことなら、あの時死んでくれればよかったのよ!」

そりゃあ愛美もブチギレるわ。

「誰かを幸せにする」って時代遅れじゃない?

家族をバラバラにしてしまい、アナウンサーの夢を全否定された望美がすがるのは結人しかいない。

「私、結人くんを幸せにしてる?」
「わたし、目覚めてからずっと、モモみたいに時間泥棒に時間を盗まれたと思ってたけど、本当は私がみんなの時間を盗んでたんだね」

ここで結人が「何があってもお前のそばにいる」と宣言してキス。

アナウンサーになるのも難しい、家族を幸せにするのも一筋縄ではいかない。自分の夢、全部はかなえられないかも……と気付いた望美が、夢見る大学生から大人の女性にレベルアップしたという表現なんだろうけど……。

「私たちは無力だ。でも私にはこの人がいる、それだけでいい」

さんざん家族を引っかき回した挙げ句、「この人がいればいい」という結論もひどい。この辺の絶妙なイラつかせ方は遊川ドラマの真骨頂ではあるのだが。
ただ、どうしても気になってしまうのが、遊川ドラマに頻発する「誰かを幸せにする」「誰かに幸せにしてもらう」という概念(ドラマ全般で使われがちだけど)。
もはや「○○さんと結婚したら幸せにしてもらえる」なんて時代ではないわけで、やたらと「○○を幸せにする」を連発されるとモヤモヤしてしまう。

「家族はバラバラになってしまったけど、私は私で結人くんと幸せになる!」みたいな展開になれば、遊川ドラマにも新時代到来! という感じだが、結局「過保護のカホコ」と同じ「みんなを幸せにするのが私の幸せ」路線に行ってしまうのだろうか。

次回はこちら:柴咲コウ「35歳の少女」7話。大人になった望美の「もう誰の幸せも祈らない」宣言

■35歳の少女

1:「35歳の少女」1話。ギャン泣き「うわぁ~ん」“頭の中10歳”な柴咲コウの演技にネットざわざわ
2:『35歳の少女』2話。見た目は大人、頭脳は子ども。柴咲コウは、逆「名探偵コナン」
3:柴咲コウ「35歳の少女」3話。鈴木保奈美演じる過干渉母親が「過保護のカホコ」とリンクする
4:「35歳の少女」4話。セーラー服を着た中学生・柴咲コウが反抗期に
5:「35歳の少女」5話。坂口健太郎が女子高生・柴咲コウと同棲開始

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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