本という贅沢『自分を傷つけながら生きるなんて、あんたどれだけドMなの?』 (ダイヤモンド社/堀ママ)

さとゆみ#125 堀ママの愛の言葉、いますぐ食べて。そして抱かれて! 『あんたどれだけドMなの?』

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。今回はインスタグラムで話題の堀ママの最新作を取り上げます。その言葉に何度も救われた、という書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さん大絶賛の一冊です。

●本という贅沢125 『自分を傷つけながら生きるなんて、あんたどれだけドMなの?』 (ダイヤモンド社/堀ママ)

『自分を傷つけながら生きるなんて、あんたどれだけドMなの?』(ダイヤモンド社/堀ママ)

今日はもう、ちょっと興奮してるから、多少荒らぶるけどごめんね。
あのね、telling,を読んでるみなさんに、どうしても知ってほしい本があってね、もう、いまからこれ、全力でぶんぶんこぶし振り回しながらおすすめするから、ちょっと待ってて。お願い、今日だけは読んで。

何から書こう。
まず、この本の著者である、堀ママの話から。

SNSでROM専(人の投稿を読むだけ)の人っているじゃないですか。私、あれのまるっと逆でして。
SNSでは発信onlyで、人の投稿は、ほぼ見てないという一方的で身勝手な女なんですよ。

でも、そんな私が、唯一、ほんとに唯一、しかも一日に何度も「更新されてないかなー」って見にいく投稿があって、それが、堀ママのInstagramなのね。

私の体はワインでできていると言ったのは、川島なおみさんだったけれど、
この1年、私は毎日、堀ママの言葉をぱくぱく食べて、生きてきた。だから、今、私のカラダの何割かは、堀ママの言葉でできている。

堀ママは、婦人科系の病気の専門家で、大ベストセラー著者さんで、ゲイです。
そんでもって、体や漢方に対する知識と、オネエなメッセージの両方で、人の命を救ってしまう人です。

このコロナ禍、安倍内閣も菅内閣も、国民の命を守るためにいろんな施策を打ち出してきたと思うんだ。
だけど、堀ママほど、このコロナ禍、ガチで国民の命を救ってきた人はいないと思うのよ。少なくとも私は、堀ママの投稿を見るだけで、なんども救われてきた。

堀ママの言葉は、あったかくて、優しい。
だけど、ただ優しくて甘やかしてくれるだけじゃなくて、時々ピシッと愛のムチがあって、それがもう、たまらない。あー、私たち、堀ママに心底愛されてるって思う。
あと、毎度くすっと笑ってしまう。オチのない投稿がないから、いつも必ず笑ってしまう。それで、幸せな気持ちになる。

いま、私、Instagramの保存機能のところ見てるんだけど、例えば、こんな堀ママの言葉が保存されている(実際にはこの10倍くらい保存されている)。

「体重は辛さの重みよ」
「生理って流血よ」
「うんちが詰まると人生も詰まるわよ」
「恋する脳って、しあわせホルモンが減ってるのよ」
「体めあての男ばかり寄ってくるの」
「言葉って消しゴムでは消せないわ」
「あきらめるのって悪いことではないわ」
「セックスと愛を混同してはいけないわ」

体のことを言われているようで、心のことだったり、仕事のことを言われているようで、恋愛のことだったりする。
堀ママの言葉は、自由自在に人生を行き来する。
そして、単に癒されるとかだけじゃなくて、エビデンスに基づいた話だから、「あー、だからか。私の不調(好調)、ここに理由があったのね」って、気づかせてももらえる。

これって、「体」と「心」と「言葉」の全部を知っている人じゃないと、できない所業だなと思うわけ。
体についてのプロで、繊細な心を扱うカウンセラーで、凄腕の物書きで。だから、堀ママは、他の人には伝えられないことが、伝えられる。

あと、これは誤解のないように書くのがちょっと難しいけれど、堀ママがゲイだってことも、その言葉を受け取りやすい理由だと思う。

女性に言われると落ち込んだり、男性に言われるとカチンとくることが、堀ママに言われると、くすっと笑いながら「は〜い。堀ママ。わっかりましたー」ってなるんだよね。すーっと心に入ってくる。これ、不思議だ。

(ちなみに、堀ママいわく、普段自分はオネエ言葉は使わないんだって。でも、オネエ言葉で語られるからこそ、すんなり受け止められるというファンの意見を尊重して、あえてオネエ言葉で発信しているそうだ)

そんな堀ママの、(堀ママとしては)初の書籍。
『自分を傷つけながら生きるなんて、あんたどれだけドMなの?』

期待しかないんだけど、ずっとそわそわしてるくらい待ち遠しかったんだけれど、でも一方で、一抹の不安もあったのね。

こんなに大好きな堀ママの本、期待しすぎて、期待はずれだったらどうしようって。

Instagramでは全開だった堀ママ節が、書籍の上品なオブラートにくるまれちゃってたら、どうしよう、私がっかりして泣いちゃうかもしれないって。
なんか、大好きな漫画の実写版映画を観にいくときのドキドキに似てた。

だけど、ね。そんなの全部、全部、杞憂だった。
もう、のっけから、最高だったよ。

なんてったって、この本

「やだ、本開いてくれたのね。
ありがと❤️」

から、始まる。
最高か。

もう、私が愛した堀ママ、そのものがぎゅっと詰まってた。
そして、Instagramからさらにひとつっこみした、堀ママの深い思想と愛情が溢れ出てきて、もう、読んでる間じゅう、ずーっと幸せだった。

この本の中で、堀ママは
「心の悩みを心で解決しようとするから、どうにもならない」
と言っている。

心の問題の多くは、体の仕組みと直結している。だから、体のことを知らないと、心の問題も解決できないんだって。

これを言えるのが、堀ママのすごさだ。

エビデンスとエモが融合してる。
理屈と共感が両方ある。
理系と文系のコラボ。
実用だけど哲学。
あと、堀ママなだけに、男心と女心が、どっちもリアル。

でね、なによりすごいのが、堀ママが、なにひとつ決めつけたり押し付けたりしてこないこと。
本に「余白」が、いっぱいある。

いろんなモノの見方を教えてくれるのだけれど、でも、最後はかならず
「どれを選んでもいいのよ」
「あなたは、どうなりたいの」
と、聞いてくれる。

これがもう、本当にたまらない。

私、人は、「自分が選んだことしか、結局、できない」って思ってる。
で、堀ママは、それを選ぶところまで、一緒に手を握って待っててくれるんだ。

堀ママの言葉に抱かれながら、なんというか、一枚一枚、服というか、鎧というか、そういう余計なものを少しずつ脱いでる感じになるよ。
読み終わったら、堀ママの言葉が通過していった体が、ぽかぽかして、やわらかくなっている。

そして、本を読み終わってからも、もっともっと堀ママの言葉をぱくぱくしたくて、中毒みたいになって、またInstagramを1年前に遡って、すみずみ、読み込んだりしちゃったよ。

私が、めっちゃお金持ちだったら、10万部くらい買ってみんなに配りたい。
でも、残念ながら私、貯金がないので、みんな、それぞれ買って読んでみて。

くすっと笑えて、ほろっと泣けて、ばばーんと脱げて、裸になれる、そんな本だよ。

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この堀ママ本、出版業界では知らない人はいない、ダイヤモンド社の重鎮・土江英明編集長と、世界的ベストセラー、こんまりさんの本を世に出した編集者・高橋朋宏(タカトモ)さんの、超ありえない豪華タッグで世に放たれた一冊、というところにも、萌えます。

あと、堀ママのInstagramファンのみなさんは、あの歌詞の部分とかどうなってるんだろうって気になると思うんですが、まさかの、ファン垂涎の仕様になってますから、ご心配なくです!

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それではまた、来週の水曜日に。

●佐藤友美さんの新刊『女は、髪と、生きていく』が発売中です!

佐藤友美さんのコラム「本という贅沢」のバックナンバーはこちらです。

・病むことと病まないことの差。ほんの1ミリくらいだったりする(村上春樹/講談社/『ノルウェイの森』)
・デブには幸せデブと不幸デブがある。不幸なデブはここに全員集合整列敬礼!(テキーラ村上/KADOKAWA/『痩せない豚は幻想を捨てろ』)

・人と比べないから楽になれる。自己肯定感クライシスに「髪型」でひとつの解を(佐藤友美/幻冬舎/『女は、髪と、生きていく』)

ライター・コラムニストとして活動。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。