本という贅沢101『メンタルクエスト 心のHPがゼロになりそうな自分をラクにする本』(鈴木裕介/大和出版)

倒れる前に読む。倒れてからでも間に合う。自立とは依存先を複数持つこと。

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。今月のテーマは「出口」。 続く自粛生活や将来の不透明感が、心身を疲弊させる日々が続きます。それでも「先」はやってきます。来たるべき時に備えて今、どのような準備をしたらいいのでしょうか。今回はヒントを与えてくれる一冊を取り上げます。 自身の体験を交えつつ、紹介するのは書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんです。

●本という贅沢101『メンタルクエスト 心のHPがゼロになりそうな自分をラクにする本』(鈴木裕介/大和出版)

『メンタルクエスト 心のHPがゼロになりそうな自分をラクにする本』(鈴木裕介/大和出版)

しばらくネット無しの生活をしていた。こんなご時世だからと病院に行くのを後回しにしていたら持病が悪化して、病院につくなりそのまま収監されたのだ。
で、そんなつもりなく超軽装だったので、あえなくケータイの充電が切れたのです。

FacebookもInstagramも開けない。Kindleも読めない。そんな時に、バッグに入っていたのがこの『メンタルクエスト』1冊だったのは、なんだかなあとバツが悪くなった。
こっそり具合悪くなって、うっかりこじらせてHPゼロになってる自分が、盛大に神様にバレた。そんな感じ。点滴されながら、いつになく敬虔な気持ちでゆっくりと読んだよ。

この本の著者のゆうすけ先生には、一度秋葉原のクリニックで診てもらったことがある。若い友人に、「疲れがたまってるなら、ゆうすけ先生のところに行ってみたらどうですか? なんでも相談できますよう」と、勧められたのだ。
「よくあたる占いだよー」くらいのカジュアルさだったので、あの場所が心療内科だったことは、今回の本を見てはじめて知った。

この時、ゆうすけ先生にもらったアドバイスのひとつが、「佐藤さんは、もう少し人に頼ったほうがいいんじゃないかな」だった。
その時は、傲慢にも「センセイ、それができれば、苦労しません」と思って診察室を出た。可愛くない患者だ。

これは私に限らず、みんな多かれ少なかれそういうところがあると思うのだけれど、当時の私は、人に頼ったり相談したりすることがすごく苦手だった。
苦手、というか、怖い。
ぶっちゃけ、人にどれくらい身体を預けていいのかわからない。そういうのって、ありません?

こと病気に関しては、辛い時は逐一教えてほしいと言われたので、しぶしぶそうしたら、私より先に家族がパニックになったのがトラウマになっていた。周りの人が私のことで泣いたりオロオロしたりするのを見るのは、痛み以上に痛い。
だからもう、痛みも弱みも絶対に見せないと決めた。検査も入院も、いつも出張だと嘘をついて家を出てきた。その勢いで、仕事もプライベートも、辛いことは人に話さないと決めた。強くなる、自立してやる、と思った。可愛くない女だ。

ところが、ゆうすけ先生に言わせると、それは自立でもなんでもない、という。

この本には、

自立とは、依存先を増やすことだ

と、書かれている。

そして、それをすることは、本人のためだけではなく、周りの人を助けることにもなると。

たしか、ゆうすけ先生の診察を受けたときにも聞いた言葉だった。その時には、うーん、そう言われてもなあ……と腹落ちしてなかった私だけれど。昨年、あるトラブルに巻き込まれた時、その言葉を思い出した。それで結果的に命拾いした。

この頃から私は、人に弱みを見せ、泣きを入れたり、頼ったりすることができるようになったと思う。
おそるおそる、手を伸ばしてつかまらせてもらった腕はみんな、あたたかかった。こうできるまでに、40年以上もかかっちゃったな。

でもまたこうやって倒れちゃってるということは、懲りずに一人でいろいろ抱え込もうとして、傲慢になっていたんだろう。
(本には、弱みを見せられないのは、謙虚さと誠実さが足りないからだとも、書かれている)
たしかに最近、なんでもかんでも自分で解決しなきゃと思っていたふしがある。こんな時代に子どもを守るためには、しっかりしなきゃ、とか。

面白いよね、そんな時に、この本がバッグから出てくるなんて。今読むべき本とは、ちゃんと出会うようになってるんだろうなー。

疲れてる人や、HP落ちてる人には、おすすめだよん。コロナ明けにまた走れるように、今のうちに元気になっておこう。
ちなみに、この本、ドラクエをモチーフにしながら、自分のメンタル状況を把握し、それぞれのタイプによってメンタルを守り切る攻略法を解説してくれる本です。
わたし、ドラクエやったことないけど、妙にわかりやすかったし、説得力あったよ。解決策もふわっとしてなくて、とても現実的だった。そして、最後は切なくて、泣く。

いっぱい泣いて頭が痛くなったから、以前ゆうすけ先生にもらった薬をどさっとのんで、こんこんと寝た。そういえば、鎮痛剤なんて躊躇なくのんでいいんだよと言われたのを思い出す。
家に戻ったら、息子が甲斐甲斐しくお世話をしてくれた。守っていると思っていた存在に守られている。

本や、友人や、家族や、薬。
世の中に頼れるところはいっぱいあるね。
もっと素直に助けてもらえばいいんだろうな。

おかげでずいぶん元気になりました。
またゆっくり歩き始めよう。多分、夜明けはもうすぐだ。

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ところで、この本には、このコラムでも紹介した
分人主義安定型・不安型・回避型の話も出てきます。
ゆうすけ先生の解説と攻略法がわかりやすいし楽しいからぜひ読んでほしい。

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それではまた来週水曜日に。

●佐藤友美さんの新刊『女は、髪と、生きていく』が発売中です!

佐藤友美さんのコラム「本という贅沢」のバックナンバーはこちらです。

・恋愛で自分を見失うタイプの皆さん。救世の書がココにありましたよ!(アミール・レイバン、レイチェル・ヘラー/プレジデント社/『異性の心を上手に透視する方法』)
・デブには幸せデブと不幸デブがある。不幸なデブはここに全員集合整列敬礼!(テキーラ村上/KADOKAWA/『痩せない豚は幻想を捨てろ』)
・人と比べないから楽になれる。自己肯定感クライシスに「髪型」でひとつの解を(佐藤友美/幻冬舎/『女は、髪と、生きていく』)

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年間10冊以上を担当する書籍のライターとして活動。ビジネス書から実用書まで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『道を継ぐ』など。