ロックダウン下のイギリス・ロンドンに響く、毎週木曜20時の拍手。ロンドンで起きた変化とは?
ロックダウンが始まって早3週目。ロックダウン前は天気の悪い日が続いていたロンドン。この状況とは裏腹に、最近では晴天が続いています。私の住まいは、イズリントンというエリア。ロンドンのセントラルな位置にあり、その割には他のエリアより生粋のイギリス人も多く、古きよきロンドンも残りながら新しいロンドンも楽しめる場所です。
私は日本ではあまりなじみのない「サパークラブ」という“日本”をテーマにしたプライベートレストランを運営したり、ワークショップやイベントをオーガナイズしています。サパークラブではいろいろなシェフを招くこともあれば、時には私が料理することもあります。もともと食べることも作ることも大好き。試作とかこつけて、毎日何か作っては友人を招いて食事会をしていた私にとって、食材を買い出しに行くのが日々の日課になっていました。
ロックダウン前後にスーパーの棚から消えたもの
今回は、ロックダウンが始まってからのロンドンの様子の違いをお伝えしたいと思います。まず、3月中旬頃から、もうすぐロックダウンになるのでは?という状況になり、他の国と同様、トイレットペーパーや缶詰などの保存食品、塩や砂糖、小麦粉、卵などがスーパーの棚から姿を消しました。
そしてロックダウン宣言直後、びっくりしたのが今まで簡単に買えていたアルコール類がほぼ姿を消しました。ロックダウンによりレストラン、パブなどの飲食店が全てクローズになったので、パブカルチャーが根付いたイギリスでは、みんな慌ててアルコール類を買い占めたのでしょう。
そして3週目の今、いまだに小麦粉や缶詰類はほとんどありません。トイレットペーパーなどの生活用品はかなり安定して買えるようになりました。ただ、ロックダウン後は、スーパーや小売店で入場制限もあるので、必ずどのお店にも列ができ、買い物に費やす時間が長くなってしまいました。
ゴーストタウンと化したロンドン。デリバリー中にキツネと遭遇!
ロックダウンになってすぐに、私は和食のお弁当のデリバリーを始めました。シングルマザーの私にとって、独り身の人たちのことが気にかかり、なにか手助けになればと思ったのです。幸い料理がそこそこでき、車も持っているので、一人暮らしを助けるミニマムオーダー1個からのお弁当サービスにしました。
一人で作り一人でデリバリーしているので、なかなか大変なのですが誰かに喜んでもらえるうちは私にとっても活力になるので、頑張りたいと思っています。今では毎日オーダーしてくれるお客様もいて、ロンドンのど真ん中のピカデリーやソーホーにも毎日デリバリーしています。人っ子一人いないゴーストタウンロンドンで、先日はキツネに遭遇しました! 優雅にソーホーをお散歩しているキツネ。人も車もないせいか空気も澄んでいて、空もとてもきれいに感じます。鳥のさえずりも響き渡り、ふと、この状況は地球からの警告、人間に与えられた試練なのではないのかな、と思ってしまいました。
私の感じるロックダウンは、悪いことばかりではないと思い直しました。今まで気付かなかったことに気付いたり、人の優しさに触れたり。
毎週木曜20時は街が一体感につつまれる
イギリスでは毎週木曜日の20時にNHS(National Health Service/イギリスの国民保健サービス)を励ますために、人々が窓を開けたり玄関の前に出て拍手をします。これには私たちも励まされます。静まり返った街がその瞬間だけ一体感につつまれる。「あぁ、みんな生きてるんだ」「大変だけどみんなで頑張ろう」と元気づけられ、娘とも楽しみのひとつになっています。
私の家の近所では、2階の窓から顔を出している女性とその下で立ち話をする、まるで現代版のロミオとジュリエットのような姿も見かけたりします。犬の散歩で偶然見かけたのは、ソーシャルディスタンスを保ちながら世間話をする人。今までの普通がそうでなくなった今、できる範囲の中で人々は繋がり助け合い、時にはコロナをブラックジョークにしながら、懸命に生きています。
いつまで続くかわからないこの状況はとても不安です。それでも私たちは生きているし、今日のこの瞬間は今しかありません。今ロンドンで暮らしている私にとって、ここは地獄の果てではありません。人々の優しさを以前よりも感じることができます。ロンドンは今日も元気です!
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