不要不急の外出禁止のスペインで、スーパーマーケットに行ってみて気づいたこと

新型コロナウイルス対策で非常事態宣言を出したスペイン政府。国民は不要不急の外出を禁止された状況が続いています。2年前からスペイン・バルセロナに住む日本人女性に、現在の状況と4日ぶりにスーパーマーケットまで出かけた時の様子をレポートしてもらいました。
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スペイン・バルセロナに住んで2年。窓から眺める風景が180度変わった、と言っても過言ではない。
3月13日、スペイン全土に発令された非常事態宣言。ついに新型コロナウイルスの魔の手が欧州にまで襲い掛かってきた。被害は日に日に拡大し、観光客で溢れる賑やかな街並みも、カフェのテラスでコーヒーとおしゃべりを楽しむ地元の人たちも、公園で遊ぶ子どもたちの元気な声も、活気も、すべて目に見えないウイルスによって行き場を失ってしまった。

空も泣いているのか、太陽が自慢のバルセロナは曇りや雨の日が続いている。せめてもの救いが太陽だったのに……と空を見ながら思う。

食材の買い出し、犬の散歩などは許可されているが、“不要不急”の外出以外は家にいないといけない。また生活必需品とは関係のない店舗、レストラン(持ち帰りは除く)の営業が停止となった。陽気なスペイン人にとって、これほどの苦しみはないのではないか。外出禁止の影響で「逆に病気になってしまうよ」という声すらも聞こえてくる。

しかし、根が明るいスペイン人。隣人たちとベランダ越しにスポーツを楽しむ様子や、おもちゃの犬を散歩させる様子などがSNS上で話題を呼んでいる。笑いに発想を転換させるあたりは、さすがだな、と思わせられる。

 

4日ぶりの外出、食料品を買いにスーパーまで

非常事態宣言が発令されてから、4日ぶりの外出。国内大手スーパーの「メルカドーナ」へ買い物に出かけた。ランニングで罰金を課された友人の話を聞いたばかりで不安に思い、警察に止められてもいいように、大きな買い物袋を持って。

スーパーに向かう10分間の道のりは、今までバルセロナで見たことのないような光景だった。すれ違う人たちが、マスクや手袋をしていたのだ。日本人にとってマスクをつけることは習慣であるが、ここはスペイン。風邪を引いていようが、花粉症だろうが、マスクをつけないのが当たり前なのだ。

それなのに薬局の前を通ると「今日はマスクあります」という看板が出ていたりする。人々がマスクをつけている。スカーフをマスク替わりに使っている。今になってようやく、みんなが意識して、拡大を防ごうとしているのだろう。

 

警察官が入場制限、手袋着用……いつもと違う店内

スーパーに着くと、入り口は入場制限がかかっていた。最初の自動ドアを抜けると警察がいた。人数調整をしながら、手袋をはめて入場することや、店内ではその手袋を絶対に外さないことなど注意点を説明してくれる。次の扉に入ると、スーパーの店員が手袋を渡してくれた。外に列ができた際には、原則として人と人との間は1メートル間隔をあける、入場時は1人ずつ、前の人が手袋をしっかりはめてからでないと入れない、などいくつか決まりがあった。

オープンから2時間後に訪れた店内は、トイレットペーパーはもちろん既になくなっていた。非常事態宣言が出る以前から紙類がスーパーから消えているとは聞いていたが、クッキングペーパーだけはたくさんあった。ないと言われているものがあると、なぜ欲しくなってしまうのだろうか。買うつもりはなかったが、「念のため」という思いで、クッキングペーパーをカートへ。本当に欲しいと思っている人たちに申し訳なさを感じたが、他の客も考えることは一緒なのか、みんながカートに何らかの紙類の商品をしっかりと確保していた。

 

不要不急の外出禁止が人々をスーパーに向かわせている?

牛乳やチーズなどの乳製品、ハム、水、野菜など、生活に欠かせないものは十分に揃っていた。普段ニュースで見ている、買いだめする映像のような光景を想像していたので、逆に驚いた。買い物リストの商品がすべて買えるくらいに補充されていたので、今後も特に不安になることはなさそうだ。ただ、トイレットペーパーなどの品薄商品を含め、欲しいものを手に入れるなら朝一、開店前からできている行列に並んで買わなければと思った。

在宅ワークに欠かせないチョコレートを買おうと売り場に行くと、普段はびっしり並べられているチョコレートが、高価な商品以外はほぼ売り切れ状態だった。子どもたちが好きなおもちゃ付きのお菓子も一部を除いてはキレイさっぱりなくなっていた。休校の影響か、子どもたちがこの期間を飽きずに過ごすために、親たちがいろいろな種類のお菓子を買っているのかもしれない。

「家にいるだけだしお腹がすかないから、本当は買う必要もないんだけど……」と、スーパーの利用客は言う。不要不急の外出禁止が、人々をスーパーへ向かわせている要因でもあると思う。いつまで続くかわからないこの状況で、周りのうわさ話や買いだめの映像に惑わされず、ストレスを溜めずに過ごす方法を考えていきたい。

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