telling, Diary ―私たちの心の中。

遊びだけの関係は終わり、あなたのいる暮らしを私は選ぶ

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。 telling,世代のライター、クリエイター、アーティストが綴る「telling, Diary」としてお届けします。

「かりそめの関係」だけでいい、と思っていた

もういい加減、曖昧な関係を清算しようと思った。

外に出ればいくらでも遊んでくれる子はいる。
それが例え互いの欲求をぶつけ合うだけの関係でも、相手を見つけるのはそう難しくない。
幸いにも、そういう子に出会える場所を私は街に何か所か知っている。

会いたい時に行って、触らせてもらって、相手も欲しいものを得て、ただそれだけ。
もちろん気まぐれな子ばかりだから、いつでも望むように遊んでくれるとは限らないけど、すり寄って来られたら悪い気はしない。

これからもずっとそんな関係性だけでいいと思っていた。
つまり、特定の相手を作ることなんて馬鹿らしい。コストも時間も、桁違い。
もしも誰か一人にコミットしなきゃいけなかったら、それは素敵なことだけど、いつか来る別れのことも考えなければいけない。
愛して、愛して、あなたが居る生活が良いのに、いなくなってしまうなんて耐えられそうもない。
だったら最初から「かりそめの関係」だけでいい。傷つかなくて済む。
失うくらいなら最初から深い関係を築かなければいいだけの話。

出会ってしまった

そんな風に思っていたのに、私はついに運命の相手と出会ってしまった。
最初は、ふとした出会い。よくある遊びの相手にしか思っていなかった。
いつも同じところにいるなあ、くらいにしか思わない。呼んだら来てくれる。人懐っこい子。
長い毛と大きな瞳がとっても可愛いから、会えたら嬉しいけど、まさか一緒に暮らすことになるなんて思いもしなかった
雨の日。寒い日だった。一日中しとしと降り続いていい加減うんざりしていた仕事の帰り、その子はいつもの場所で待っていた。雨に濡れて、長い毛をびしょびしょに濡らしたまま。
私は驚いてしまった。だって、水に濡れるのが一番嫌いなはずなのに。私を待ってた?
声をかけると、一目散に私の元に駆けてきて足元に擦り寄る。甘えた声で鳴いて、見上げてくるその子を家に招き入れるのにそう時間はかからなかった。

あなたのいる人生を選びたい

濡れた毛をタオルで軽く拭いて、手足の汚れを落としてあげてから、コンビニで急いで買ってきた餌を出すとお腹が空いていたのか勢いよく食べ始めた。
こうして明るいところで見るとなかなか綺麗な子だ。
もしかしたら以前はどこかで飼われていたのかもしれない。
とりあえずの保護、と思って始めた同居も1カ月が過ぎた。
お医者さんにも連れて行き、どこかのおうちの子でないことを確認できたので、正式に我が家の一員となった。
今ではすっかり家にも馴染み、私の布団の上で腹を出して仰向けで寝ている。

今まではずっと曖昧な関係で良いと思っていた。
小さい時に子猫を拾ってきて、死なせてしまったことがあり、自分には動物を飼う資格がないと感じていた。
猫を可愛がりたいなら、猫カフェに行ったり地域猫を可愛がればいい。家で飼う必要はない。
お金もかかるし、いつか死んでしまうことを考えると胸が押しつぶされそうだ。
けれど、これまでの「猫のいない生活」よりもこれから始まる「猫のいる生活」の方が、ずっとずっとわくわくしている自分に気がついた。
いつか来る別れを恐れて今まで通りに暮らすより、これから先は猫のいる人生を選びたい。

寝返りを打ちたい方向に陣取られたり、歩いている足にじゃれて噛み付かれたりするのも悪くない。
妻も猫好きなので二人して夢中になっている。
新しい家族が増えました。

ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。