telling,2018傑作選 キレイの定義

【telling,傑作選】美容好き集団「劇団雌猫」と考えた、女性がメイクする理由

2018年telling,でご好評いただいた記事や、もう一度お伝えしたい記事をご紹介しています。 (元公開日:2018年11月26日)さまざまな女性の「なぜメイク・おしゃれをするのか」を集めた本、『だから私はメイクする』(柏書房)。編著者の「劇団雌猫」4人のうち、ひらりささん、かんさんにインタビューしました。後編では、オタクとコスメ、おしゃれの「正解」について語ります。

●キレイの定義 03

SNSでコスメ好きが「オタク」になれた

――最近は買ったコスメやメイク術を公開している「コスメ垢」もたくさんありますよね。みんなオタクとも言える没入具合で。

かん: ですね、「このコスメが特別にすごいから」というより、その人の気質なのかなと思うんですが、ついついコレクションみたいに集めてしまったり、限定品となると目の色を変えて突撃したりしがちですね。

ひらりさ:私は今の時代になってSNSが流行ることで、コスメ・メイク好きな人が「オタクになれた」んじゃないかなと思ってます。たとえばアイドルオタクには、コンサートというリアルの場があって、そこに行けばたくさん同志がいて、バッグに缶バッジをつけたり、うちわを掲げたりして、誰が推しかを示していることが多い。

その点、コスメ好きの人って今までは「場」みたいなのがなかったと思うんです。例えば限定品を手に入れたとか、このアイテムを可愛く使ったりっていうことを見せられるようになって、その価値をわかる人に対して発信して楽しめるようになったと思います。

かん: 限定品になんで並ぶのかなんて、好きじゃない人にはわかんないですもんね。

デパートのカウンターは怖いところじゃない

ひらりさ: 私はさっきも言ったとおり、もともとおしゃれに興味がなくて、最初は年配の方がよく言う「アイドルの顔が全部同じに見える」っていうのと本当に同じで、コスメブランドの見分けがつきませんでした。でも、根がオタクなので、ブランドごとの思想や解釈を知ったら、「キャラ」として認識できるようになりました。それでブランドの見分けもついてきたというか。

あとは、メイクって「錯視」の技術だと思うんです。まつげを上げると、瞳が大きく見えるとか、アイラインを引くとめりはりがつくとか、チークは顔を引き締めるとか、そういう理論なんだなと知ってから、メイクのことがわかるようになりました。

――それはどういうタイミングで知ったんですか?

ひらりさ: 大人になってから、メイクレッスンなどに自分でお金をかけられるようになってからです。20代前半までは、基礎化粧品の使い方もあやふやでした。

かん: 私は子供の頃、自分が知らないことを誰かができているというのがすごく不思議で。オタクだからこそ「おしゃれ」についても知りたいなと思ってものすごく調べてわかるようになった感じです。大人になってからもお金には限りがあるから、例えばすごく良い乳液を買って、その製品の最大の効果を発揮できないのがすごい嫌ですね。調べていくといろんなメソッドというか、流派みたいなものがあって正解は一つじゃないと気づきました。

――たしかに、洗顔ひとつとっても「洗顔は不要」「石鹸で洗え」「こすっちゃダメ」「泡で洗顔する」などなど、無数にありますよね。

ひらりさ: そうそう、何が正解かっていうのが全然わからないんですよ。だから私はすごくコスメとか、美容の世界に入っていきづらくて。ドラッグストアで安く買っても、使い方がわからないから負のサイクルに入っていくという。

かん: それって、10代の頃にティーン誌を読んでるか読んでないかでもだいぶ違うかもしれないです。雑誌にはやっぱりメイクの仕方や化粧品の解説なんかが載っているから。

ひらりさ: それはあるね。私はとにかく漫画ばかり読んでいて、美容の情報に触れるのが遅かったから、なおさら何から始めたらいいのかわからなくて。

かん: 一緒にいる人から伝染するのもあると思います。親やお姉ちゃんなんかがそういうことを言う人かどうかっていうのも。私は母からすごく言われていたのもあって、早くから興味もありました。

ひらりさ: わからないときに誰に助けを求めたらいいのかっていうのがわからない、っていうのもあるかと。みんな、デパートのカウンターは怖いって敬遠しがちですけど、お金を払ったらちゃんと教えてくれる、こんなにいいところはない。いや、もしかしたらお金を払わなくても教えてくれますから。早めにプロに聞くっていうのは本当に大事だなと思います。

正解はひとつじゃないから、自由に考えてもいい

――最近特に美容雑誌でも「イエベ」「ブルベ」といったワードを見かけますが、パーソナルカラー診断についても、ひとつの目安になるという感じでしょうか?

かん: はい、自分に似合うものが分からなくて結局着ない服ばかり買っちゃう人はぜひ行ってみてください。私たちは4人とも行きました!似合う色と好きな色が違ったりする……っていうのは、「人生」って感じで面白かったです(笑)。

ひらりさ: 何から始めたらいいかわからない人にも、いいかもしれない。パーソナルカラーも、メイクも、おしゃれもみんな流派はあるけど、ルールは理解した上で縛られないのが楽しいんじゃないかなあ。この本もいろんな方を紹介していますが、共感したり面白いなと思ってくれると嬉しいですけど、全然どれかが正解というわけではないというのは強調したいです。

雑誌とは違って、「こういう自分になろうよ」っていうのがないからこそ色んな人の事例を載せられていると思うので、迷っている人にこそ読んでもらえるといいなと思っています。

だから私はメイクする

だから私はメイクする
劇団雌猫 (著)
出版社: 柏書房 (2018/10/24)

朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
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