婚外恋愛を考える

結婚制度がある限り「パパ活」はなくならない

女性が、自分の夢を経済的に支援してくれる“パパ”を探す、「パパ活」。奨学金返済や留学のための資金をためようと、始める女性も多いと言います。「お食事だけ」の関係もあるとは言いますが、ほとんどがセックスを含むもの。”パパ”の多くが既婚者であることから「不倫を斡旋しているの?」「それって売春じゃないの?」と疑問がふつふつ。『パパ活の社会学』の著者である坂爪真吾さん(36)に聞いてきました。

●婚外恋愛を考える

元祖は「紹介売春」

――「パパ活」っていつ生まれた言葉なんですか?

 2016、17年頃にはやり始めた印象です。「パパ活」と検索すると、「交際クラブ」と説明されていることが多いです。

 交際クラブの元祖は「紹介売春」になると思います。戦後、遊郭がつぶれて、1958年売春防止法が始まったくらいに、結婚紹介所を装って始まりました。

 そこから、1980年代に“男女交際仲介業”をうたった「愛人バンク」が一世を風靡します。愛人バンクの「プロの女性じゃなくて、素人の若い女性と関係を持ちたい」という男性のニーズと、かかわる若い女性の背景に貧困があったのも、「パパ活」と同じだと思います。1983年に「愛人バンク」の代表者が売春防止法違反で逮捕され、ブームは終わりを迎えました。

――パパ活は売春ではないんですか?

 売春防止法では、売春を「対償を受け、または受ける約束で不特定の相手方と性交すること」としています。「不特定」の相手からお金をもらってセックスをすれば売春ですが、特定の相手からお金をもらって交際をするのは売春ではない、という理屈です。

パパが何を求めているかはわからない

――交際クラブのHPを見ると「あなたの夢を応援します」というような宣伝文句が見えるんですが、登録する男性の中に、肉体関係以外に「夢を応援したい」っていう気持ちはあるんですか?

「俺の力であいつは大きくなったんだ」っていう男性の庇護欲、足長おじさんに近い満足感を得たい、という気持ちはあるんだと思います。アイドルを応援する男性もそれに近いものはあるんじゃないですかね?

 もちろん”パパ”になる方の多くは肉体関係も求めているとは思います。でも、セックスだけを求めているなら風俗に行けばいいわけで。そうではなくて、お食事で関係を築いてからのセックスを希望している。もっと言えば、肉体関係なしに「その子の夢を応援したい」という人もいないわけではないんです。

 そこがブラックボックスなんですよね。女性がパパに求めるものは99%お金。だけど、パパは何を求めているのかは、正直よくわからないんですよね。

――坂爪さんは著書の中で「不倫はインフルエンザのようなもので、いつでも・どこでも・誰でもかかりうる病。個人の意志や努力だけでは感染を防げない。不倫ワクチンをあらかじめ摂取することで、不幸や被害は最小限になる」と記しています。このパパ活は「不倫ワクチン」になりうると?

 婚外セックスのポジティブな例になればいいかなと。リスクを少なく「婚外セックス」をできるんですよね。薬物を全面禁止するのではなくて、危険性を弱めたものを使ってもらうイメージです。

――パパ活をすすめる「交際クラブ」を使った方が危険性が低いということですか?

 もちろん100%安全ではありませんが、マッチングアプリを使うよりは、よっぽど安全だと思います。入会する際には、身分証明書の提出と面接が必要だし、男女の間でトラブルがあった場合、クラブ側に報告することができます。お互いの身元確認ができているから、詐欺や美人局に遭う可能性は低いといえます。

 出会い系アプリで出会った女子大生に金銭を渡し、交際していたことで辞職した元新潟県知事も、交際クラブにすれば良かったのに! って思いました。交際クラブの場合、登録の誓約書の中には「秘密厳守」がうたわれているので、出会い系アプリに比べれば、社会的地位のある男性にとっては安全で、秘密が漏れる可能性も低い。人が介在している分、それなりに安心な仕組みになっていると思います。

パパ活は「結婚制度の歪み」

――パパ活は必要悪ということですか?

 悪というよりは、今の結婚制度の歪みの産物だと思っています。一夫一婦制度は無理というか、不可能なんだと思います。結婚制度がある限り、パパ活はなくならないとも言えます。

 イギリスのチャーチル元首相が「民主主義は最悪の制度だが、これ以上の制度はない」という趣旨のことを言っていますが、一夫一婦制も同じようなものだと思っています。最悪だけど、他の制度よりマシ。
その歪みを「不倫はダメ!」と糾弾するだけじゃなくて、どうしたら不倫によって傷つく人を最少限にできるかを考えていくほうが建設的な気がします。

  • 坂爪真吾さんプロフィール
    1981年新潟市生まれ。社会的な切り口から性問題の解決に取り組んでいる「ホワイトハンズ」代表理事。著書に『はじめての不倫学』(光文書新書)などがある。10月16日に『パパ活の社会学』(光文書新書)を出版予定。

telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
婚外恋愛を考える