可愛い子ぶらなくてもいいんだよ―telling, Diary
●telling, Diary ―私たちの心の中。
誰がみても「可愛い!」というような幼顔の28歳の女の子が私の部下になり、プレゼンを見る機会があった。
普段の彼女はスナックでのんだくれ、漫画や舞台に造詣が深くサバサバしたオモロイやつで好感を持った。
が、いざズラリと並ぶおじさんたちを前にした時、急に身体をくねらせ、会話の端々に含みを持たせ、質問には芯をついた答えをせずけむに巻いた。
私はなんだか悔しかった。
多分、彼女をそうさせたのは周りの大人の男性たちだ。
あまりにもファンシーな見た目に、多くの人が「期待」をしただろう。彼女が入社してきた時、そのルックスに社内は騒然となっていた。その頃から今まで、彼女の内面にまで目を向けることができた人がどれだけいただろう。
なまじ、その見た目の良さだけで、いくつかの仕事が取れてきてしまった若かった頃の彼女に。
それも彼女の処世術
彼女のことをあまり好きではないという同性も少なからずいた。それは彼女が少しハスに構えた知った口を利く瞬間があったからのようだった。
そんな陰口を言うのは決まって彼女と同い年かそれより若い子たちだった。
彼女より年上の私からすると、それも彼女の処世術のように思えた。
男性に見せるような定型のフェミニンさをぶりっこと取られ、たくさんの女の子を敵に回してしまったであろう過去も想像できる。
そんな風に見られたくなくて、「おバカなわたし」じゃない私を見て欲しくて、実年齢より背伸びした(それは本当は彼女が元来もっている知性なのだけど)発言や態度を同性にはとってしまうのではないか。
そして、それはそれでまた、他者に誤解を与えてきたのではないかと。
あなたはもっとすてきな人なのに
彼女のプレゼンに初めて立ち会った後、2人で話した。
あなたの振る舞いは、あなた自身をつまらない人間に見せている。
あなたは本当はもっと様々なことに思慮深い人間なのに、素敵な人なのに、周りの人が本当のあなたを知るまでの距離を、自分で長くしている。
あなたというお家のお庭は、あなたの本意とは別にとても可愛らしい。だからといって、玄関までの距離を長くして、あなたが本当に大事にしている家を見せないなんてことしなくていい。
もう良い子にならなくていいし、可愛い子ぶらなくてもいいんだよ、ようやく中身に年齢が追いついてきたんだから、これからもっと良い仕事がたくさんできるようになるから。
途中から半分だけ、自分に向けて言っていた。
私も今、脱皮中
彼女のような美貌を持ち合わせていない私も、何度も「生意気だ」と言われた。色んなことを知らないふりをすると喜ばれた。恋愛の本にはそれが「モテるためのテクニック」だと書いてあるのを目にしたこともあった。でも、自分を何重にもラッピングしていくうちに、自分が好きで近づきたい、憧れている同性が離れていった経験もした。
そして、自分をアピールしていないのに人が離れていくことがどれほどむなしいかも知った。
そして気づいたら「知らない」というと白い目を向ける異性が現れるようになった。
年を重ねるということは、肩の荷が下りるということなのかもしれない。
自分の包装紙をとっていけるチャンスを逃さなければ、とても楽しい未来が待っている。
後輩ちゃんへ。私も今、脱皮中。
あなたも一緒に脱ぎませんか。
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