円満離婚は1パーセントに満たないハッピーな人たちかも
●離婚してもいい
「円満離婚おめでとうございます」
離婚式の発案者、寺井広樹さん(38)によると、申し込みをする人の95%が男性だそうです。「未練を吹っ切りたい、あわよくばよりを戻したい、と思っている方が多いようです。旧婦(元妻)側は、旧郎(元夫)の最後のわがままとして聞いてあげる、という大人の女性が多いですね」。
「自然の摂理」で離婚?
当日は、旧郎・旧婦が裂人(さこうど:元仲人)に連れられ入場します。衣装は自由なので、ジーンズからウェディングドレスまで様々だそうです。音楽は「エンダー!!!」が印象的なホイットニー・ヒューストンの「I will Always Love you」が定番。確かに「お互いのためにお別れしましょう」はぴったりかも。
① 離婚の経緯を司会者が説明
入場後、さっそく離婚にいたった経緯を司会者が読み上げます。
寺井さんによると、この「離婚の経緯」作りが最難関だといいます。「旧婦様からは『旦那の浮気が原因と絶対にいれて』と言われるのですが、式のお金を払ってくれているのは旧郎様なので、旧郎様の合意も必要。だけど旧郎様も体裁があるので『異性関係が原因…いや、わかる人にはわかってしまうなあ。自然の摂理で離婚と書いてくれ』などと言うので折り合いはつかない。結局『人間関係のいざこさ』と丸めました(笑)」。ちなみに、聞いている時の参列者の表情は、「無」がマナー。「浮気が原因だったりすると、笑っては失礼ですからね」。
② 2人から一言ごあいさつ
旧郎の場合は「別れても仲良くしてください」というものから「僕がいたらなかったばかりで、彼女に非はありません」と言う(言わされる?)方もいるそうです。続く友人代表あいさつでは、基本的には離婚経験者にお願いします。「こういう式ができてうらやましい」といったものから、ガチ説教まで、人によりけりで決まった型はないようです。
③ 最後の共同作業
そして次はメインイベント「最後の共同作業」。結婚指輪をハンマーでたたきつぶします。カエルのハンマーは「独身にかえる」という意味です。司会者の「みなさま応援の拍手をしてください」にあわせて拍手。つぶれた指輪を「良かったら見てください」とまわします。目を背ける人から、写真を撮る人まで反応も様々だそうです。
結婚生活いいところもあったよね
④ スライドショー
別会場に移動して、会食が続きます。旧郎・旧婦は背中あわせに座り、2人が出会ってから、別れるまでをスライドショーで楽しみます。寺井さんが決めていることは、「最後は必ず結婚式の写真で締める」ということ。「離婚をするほとんどの人が『運が悪い』『相手が悪い』と言って、自分に矢印が向かないんです。『自分が悪い』っていう人はほとんどいない。おせっかいかもしれないけど、良かったころもあったよねというのを印象づけたい」。大泣きしてしまう人もいるそうです。
⑤ お色崩し
離婚式もいよいよ終盤。ここでお色直しならぬ「お色崩し」という「パイ投げ」が行われます。結婚で嫁いだ家に染まったものを、白紙にするという意味があります。
⑥ ブーケトス
最後は、おきまりの「ブーケトス」。結婚式では受け取った人が「次に結婚できる」というジンクスがありますが、それは離婚式も同じ。「次に円満離婚ができる」と言われています。逃げ惑う人もいるそうですが、よけずにしっかりキャッチするというのもマナー。なんせ、円満離婚は離婚したカップルの約1%。ある意味、結婚するより難しいことなんですから。
以上が離婚式の式次第でした。
結婚も離婚も幸せになるためのもの
これまで離婚式をした夫婦は、9年間で約600人。実はそのうち15組が、離婚をやめているといいます。「昔は良いことだと思っていたけど、ちょっと違うのかも。その時思いとどまっても、また相談にくるんですよね。振り返るいい機会になったとしても、根本的な解決にはいたらないんだと思います」。
寺井さん自身は独身ですが、円満離婚へのあこがれもあるそうです。「結婚と離婚は一見、真逆に思いますが目的は同じ。幸せになるためなんです。なかでも円満離婚は数少ないハッピーな人たちなのかなとも思います」。
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