西郷理恵子先生のセキララ相談室

結婚はゴールじゃない! 四位(よんみ)一体幻想を自覚しよう

「他人には聞きづらい…」それが、性のこと。今だからこそ、恋、カラダ、セックス、結婚、社会……複雑にからみあった大人の性の悩みに、ちゃんと向き合ってみませんか。これまで5000人以上の男女の性に関する相談にのってきた恋愛・セックスカウンセラーの西郷理恵子さんが、あなたの悩みにお答えします。

●西郷理恵子先生のセキララ相談室 02

 こんにちは、恋愛・セックスカウンセラーの西郷理恵子です。今回はお悩み相談の前に、どうしてもこれだけは知っておいてほしい、ということについてお話しします。それは、私が「四位(よんみ)一体幻想」と呼んでいるものです。

四位一体幻想とは?

 恋愛のゴールは結婚だと思っていませんか。愛し合って結婚すれば満たされたセックス、子どもが自動的にセットで手に入ると考えていませんか? これは結婚において理想ですが、恋愛、結婚、セックス、生殖(子ども)の4つは、本来は独立した要素。この4要素を1人の相手に求めるのが「四位一体幻想」で、これによって現代人のさまざまな悩みが発生してくるのです。この4つの要素がどのように相互に関係しているのか、①~⑥で示した順番に見ていきましょう。

① 結婚と愛
愛の延長線上に結婚がある、と考えがちですが、恋愛結婚が主流になったのは近代のこと。日本でも、私達の祖父母の世代まではお見合い結婚が主流で、恋愛結婚がお見合い結婚を上回ったのは、1960年代後半になってからです。歴史的に見ても、家制度や資産を継承させるために、本人ではなく、親や親族が結婚を決めていました。ちなみに日本で一夫一妻制になったのは明治31年(1898年)の民法制定以降のこと。それ以前は一夫多妻制でした。
また、恋愛と結婚の相手は別だと言う人は昔からいました。好きでも経済力が不安な恋人とは結婚できないと別れる人もいます。逆に、条件が良ければ愛がなくても結婚できる人もいます。

② 結婚と生殖
 結婚の目的が「家」の存続だった時代は、結婚して子どもを産むことは必須でした。その名残で、今でも、日本では「結婚しないと子どもが持てない」とか「子どもができたら結婚すべき」と考えている人は多いですね。しかし、世界に目を向ければ、たとえばフランスやスウェーデンでは、未婚のカップルや一人親から生まれた婚外子の方が半数以上になっているのは有名ですね。
また現実問題として、子どもが生まれたことで夫婦関係が深まる場合もあれば、逆に関係が変化して、離婚のきっかけになってしまう場合もあります。

③ 結婚とセックス
 かつては「婚前交渉」という言葉がありましたが、結婚しなくてはセックスが許されなかった時代は今や過去のこと。むしろ現代では、結婚後のセックスレスや不倫という婚外セックスが珍しいことではありませんね。

④ セックスと愛
 たとえ愛を感じていなくても、相手に性的魅力を感じて発情することは、自然なこととしてよくあります。逆に、愛しているけれど、「家族のように思えてセックスしたいと思えない」とか「愛がない方が、いろんなプレイや性癖が楽しめる」と言う人もいます。

⑤ セックスと生殖
 人間にとって、セックスは生殖のためというより、むしろ快楽、愛情表現、コミュニケーション、お仕事などの要素の方が大きくなっています。子作りのためだけにセックスが存在するならば、マスターベーションや避妊、中絶は必要ないはずです。挿入や射精を伴わない性癖や、同性同士のセックスもポルノも存在しないはずです。そして閉経し生殖能力がなくなった後も、セックスを欲する女性は少なくありません。

⑥ 愛と生殖
 愛を求めても、子どもを望まない人や、子どもがいなくても、愛し合っているカップルはたくさんいます。一方で、子どもを最初から作らない夫婦もいます。また、特定のパートナーの有無に関係なく、最初から一人親として子どもをのぞみ、育てている人もいます。

 こうして見てみると、恋愛、結婚、セックス、生殖の要素は必ずしも一致しないということが分かります。しかし、4つの要素が結婚によってセットで付いてくると信じ、「結婚したのだから、残りの3つが揃わないと、自分たちは不完全な夫婦なのではないか」とか「4つが揃っていないから結婚してはいけないのではないか」と疑問や不安に思ってしまう人たちが今も、大勢います。

 あなたが本当に望むゴールを追求するために、この4つの要素が絡む「幻想」から目覚めて、何が自分の人生において優先度の高い項目なのかということを明確にしましょう。そうすれば、今の自分の悩みが何から来ているのか、解決への糸口が何かが、少しずつ分かってくるはずです。

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東邦大学医学部医学科客員講師。1980年、東京都生まれ。2006年から現在までに 5000件以上の恋愛、結婚、性に関する相談業務を行い、現在は、20代~40代の男 女を中心に電話カウンセリングを実施。早稲田大学法学部卒業。日本性機能会会員、日本性科学会会員。