乙女とたこ焼き。03

【安藤なつ】カマキリ愛。

人気お笑いコンビ「メイプル超合金」安藤なつさん初の連載コラムです。すがすがしいほどわが道を生きながら、性別も世代も超えて多くの人に愛される安藤さんが、好きなもの、こだわり、普段考えていること。気の向くままに語ります。隔週金曜にお届けします。

●乙女とたこ焼き 03

カマキリ愛。

 あらかじめ言っておく。
女子の皆さん、引かないでほしい。

 今日は子どもの頃に飼っていた「ペット」の話。「何を飼っていたでしょーか?」など、わざわざ問いかけはしない。おそらく99%当たらないからだ。

飼っていたのは、カ・マ・キ・リ♡
はい、引いたー。ちょっと可愛く言ってみたけど、引いたー。

これからもっと加速していく。覚悟しておくように。

小学校低学年のとき、そこらへんにいたカマキリを捕まえて可愛がっていた。捕まえるときのポイントは、背中の部分をつまむこと。基本的にこれで捕獲できる。しかし、時折想定外に強いヤツもいて、カマを後ろまで伸ばしてきてグイッと指をひっかいてくる。非常に痛い!

一緒に食べる夕ご飯

そうやって苦労して捕まえても、まず、なつかない。
だが、驚くなかれ。当時私は、食卓で並んでカマキリと一緒にごはんを食べていたのだ。何と、ヤツは焼き魚を食べる。あの鋭いカマを器用に使って焼き魚をしっかと持ち上げ、強靱なアゴでむしゃむしゃと。
なかなか…可愛い。

 はい、引いたー。2回目。

 食べるときは放し飼い状態だったが、どこかに逃げて困ったという記憶がない。おそらく隣でおとなしく食べていたんだと思う。
 よく親が怒らなかったなと思う。もしかしたら怒られたのかもしれないが、ヤツとごはんを食べるのに夢中でよく覚えてない。
 なぜ焼き魚をあげてみたか。
「カマキリは肉食。バッタを食べるんだったら、魚も食べるんじゃないか?」っていう発想だ。「おいしいから食べろ」的な感覚で与えていた。一応、ヤツの健康に配慮して、醤油などの味つけのない部分だけ与え、素材の味を堪能させていた。
 
 さらに当時、道を歩いていると必ずカマキリの卵を見つける習性――否、特殊能力があった。見つけたら必ず取って帰ってきて、自分の部屋の机のひきだしに、卵をそっとしまっていた。

ある日、「何かいるな。アリかな?」と思ったら、孵化したカマキリの幼虫だったということがある。ワラワラワラと部屋中にあふれたその数、数百匹。

はい、引いたー。3回目。

ちゃんとしまっておいたのに、引き出しから外の世界に出てきた彼らをとりあえず、「こちらへどうぞ」と庭に逃がした。

カマキリの帰巣本能?

しかし、どうもカマキリには放たれたところに帰ってくる習性があるらしい。その後毎年、春になると、「気づくと、家の中にカマキリがいる」という現象が起きるようになったのだ。
どうやら、あのとき放った彼らは安藤家にてこの世に生を受けた恩を忘れず、代々わが家に帰ってきていたと思われる。安藤家=カマキリのホーム。

 ちなみに、並んで食べてた焼き魚はアジの開きだった。おいしそうに食べていたな。そしてtelling,女子の皆さん、ご存じだろうか? カマキリのみならずオニヤンマも焼き魚を食べるということを……、って、もう十分ですね。また次回!

構成:小野ヒデコ 写真:戸澤裕司

人気お笑いコンビ「メイプル超合金」として相方のカズレーザーとともに活躍するかたわら、ドラマや映画にも多数出演。
同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
1986年週刊朝日グラビア専属カメラマン。1989年フリーランスに。2000年から7年間、作家五木寛之氏の旅に同行した。2017年「歩きながら撮りながら写真のこと語ろう会」WS主催。