好きな人ができたかも。幸せな結婚生活を送っていた33歳女性の戸惑い
●telling, Diary ―私たちの心の中。
好きな人ができたようだ。
ようだ、というのはこの気持ちがいわゆる恋、というやつなのかわからないからだ。
20代のときは、それこそ「惚れっぽい」という言葉がぴったりなぐらい、いつも好きな人がいた。ドキドキしたり、ハラハラしたり、そんなことを中心に1日が回っていたように思う。
「結婚しないならつきあいません」強気の宣言
28歳の時に出会ったのが、今の夫。好きだな、と思ったけど最短距離で行きたかった私は、つきあってくださいという告白の返事に「結婚するつもりがないならつきあいません」と答えた。今思うと最悪だ。それでOKしてくれたんだから、なんという幸運なのだろう。
ドキドキした気持ちがあったのは、1年ぐらい。そのあと同棲をはじめたら、もっともっとラブラブな生活が待っている……と思いきや、そんなことはなかった。
トイレの使いかた、ご飯の食べ方。飲んで帰る時の連絡、家事の分担……。一緒に住むということは生活するということ。2人の落とし所をうまくつけるように、探り合いながら、思いやりながら、ときに傷つけながら。おさまりのつくところにおさまっていった感じだった。
「愛」と「信頼」から生まれる安定感
いつしか恋のときめきは失われていたが、2人の間には新しい感情が芽生えていた。それは、「信頼」ということばが一番ぴったりくるように思う。お互いを思いやり、信頼し、日々を過ごしていく。それをひっくるめて愛と呼ぶのかもしれない。そして私たちは結婚した。
「愛し合っている」という状態は、とても強固な安心感がある。例えるならば、しっかりと強いロープで港に係留されている船のような感じだ。まだ港に入れていない迷える友人や後輩から、アドバイスを求められることもあった。そのたび「落ち着いているよね」とか、「安心感があっていいよね」なんて言葉をもらっていた。
ときめきはなくても、お互いが思いあえている。とても素敵なことだ。この人と一生穏やかな気持ちで生きていくんだろうな。そう思っていたし、信じて疑わなかった。
突然やってきた、抗えない気持ち
なのに。
突然、それはやってきた。
ありがちだけれど、仕事仲間が開いてくれた飲み会に、彼は、いた。
たしかに好みのタイプだ。だけど、私よりうんと若く、しかも結婚している人だ。ありえない。
ありえない、ありえない。
そう思っているのに。
なんだか話が合うなとか、気づいたらそばにいるなとか、話すとき、顔が近いなとか。意識しまい、しまいと思うとどんどん気になってきて。
なにげなく寄せられた体、触れた肩に電流が走った。
あ、これ、まずいやつかも。
ずっと安定して凪いでいた港が、一瞬にして嵐にかわった。夫以外入り込めなかったはずの場所に、するりと入り込んできた人。
いま、あの人からのLINEを心待ちにしている自分がいる。返事を待つ、その時間がこんなに長いなんて…時空が歪んだような気分だ。
だからといって、夫を裏切ることはできない。夫のことは、愛しているのだ。
どうしたいんだろう?私は。答えの出ない気持ちを抱えながら、いま、嵐の中に立っている。
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