●好きよ、百貨店 ―セールスマネージャー(31歳)

買い物で人生が変わったお客様が、自作の小説を贈ってくれました。

セールスマネージャー(31歳) 伊勢丹新宿本店婦人営業部 マ・ランジェリー セールスマネージャー。入社10年目。大学卒業後の2009年、伊勢丹(現:三越伊勢丹)に入社。婦人肌着のスタイリスト、化粧品アシスタントバイヤーなどを経て16年から現職。

●好きよ、百貨店03

 先日、あるお客様からご自身で書かれた小説とお手紙をいただきました。その方は30代で乳がんとなったことで下着や洋服を着ることに興味をなくしていらっしゃいました。

 そこで伊勢丹新宿本店に来られた時、ランジェリーコンシェルジュというプロのフィッティングアドバイザーが対応し、「工夫次第で、いくらでも楽しめる、そうすればぐっと自信が出て、びっくりするくらいきれになるわ」と言ったそうなんです。

 そのお買い物がきっかけで、そのお客様は「おしゃれをするのが楽しい」と前向きになり、転職し、結婚して人生が変わられたようです。その時感動した内容を、小説として書いてくださっていて。とてもありがたいことです。

 百貨店は若い世代に敷居が高く感じられるかもしれませんが、最近は20代から30代前半のお客様も増えてきています。下着一つにしても、様々なブランドの商品からその方に最適のものを提案し、アドバイスさせていただくので、女性の悩みを解決できる場所だと思います。

目の前の人に笑顔と感動を与えたくて

 現在は「マ・ランジェリー」という婦人肌着の売場で、売場管理や部下育成などを担当しています。店頭の商品の平均価格は約8,500円と決して安くないですが、平日はおよそ250人のお客様が来店され、下着上下セットなど数万円分の商品を買っていただくことが多いです。

伊勢丹新宿に来店したお客様のツイートが4.6万リツイート

 2016年、マ・ランジェリーに来店されたと思われるお客様のツイートが4.6万リツイートとなったことがありました。

 ランジェリーコンシェルジュがブラジャーをお選びし、ブラジャーを試着した時の感想が投稿されています。その影響もあってか、20代、30代のお客様の来店が増えるようになりました。

 最近は美容やボディラインを意識する女性が増えてきています。ブランドや団体などとコラボレーションしたイベントやセミナーを開催しているので、それがきっかけで伊勢丹に来られる方もいますね。

女性は体の変化があり、ずっと同じ下着を使うのはよくない

 女性は30代で年齢に伴い身体の変化が始まるので、ずっと同じ下着を着用するのはよくありません。本当に自分自身に合う下着は、特定のブランドの中から探すとどうしても限界があります。

 百貨店は多くのブランドを扱っているので、お客様のなりたい姿や悩みを聞いてお客様に合うものをご提案しやすいですね。洋服を着た時のボディラインの変化を感じられると、皆さま目をキラキラされて「あれもこれも試着したい」と言われます。

 誰しも人に聞けない身体の悩みがあると思いますが、中でもお胸の悩みがある人が多いと感じています。

お客様のためになることと収益が結びつかないことが苦しい

 お客様からの声の中で数字には表れないこともあり、その声をもとに企画を考えても定性情報になりがちです。上司を説得するだけの材料に欠ける時があります。

 「それは良い提案だけど、売り上げの見込みは?」というやり取りも多いです。この仕事をしていて苦しいと思うこと、それは、お客様のためになると思う提案を定量データで提示をするのが難しいということです。

 それでも入社当時から変わらないことは、美しくありたいという女性の悩みを少しでも解消したいと思っていること。私が感動する時は自分自身のお客様の悩みが解消された時です。これからもお客様からの声を大切に、お客様に喜んでいただける企画を発信してしていきたいと思っています。

肩書はこだわらない。ただ、女性に寄り添える人間でありたいと思う

 今は100人以上が働くセクションの責任者です。年齢も経歴も違う人ばかりですが、一人ひとり尊敬する部分が必ずあります。そうすると、その人から学びたいと思うようになります。

 毎日忙しいですが、どんな時も余裕のある雰囲気を出すようにしています。お客様はもちろん、スタッフに対しても話しかけやすいオーラが出ると思います。あとはスタッフとよく話すことは心掛けています。お客様の来店の理由は必ず確認しますし、スタッフの顔色や表情も気にしています。

 将来のことを考えた時、高みを目指していきたいという気持ちはありますが肩書にはこだわりがありません。入社当時から、「美しくありたい」というお客様の役に立ちたい気持ちは変わらないですね。売場が好きなので、お客様の声に耳を傾けながら、今後は今よりももっと大きな規模で、感動を提供していきたいです。

同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。

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