【古谷有美】女子アナが中華料理店でひそかに抱く野望とは?
●女子アナの立ち位置。
「一人で食事も飲みにも行きますー」と言うと周りから「ええー!意外」というリアクションをもらうことが多い の ですが、 大人になるにつれて、どんどん一人で食事をすることの楽しみも覚えてきました。
近所の中華料理屋さんで、スポーツ新聞を読みながらラーメンをすするおじさんや学生さんに混 ざ ってカウンターで 熱々の ギョーザを頰張る。 一人で初詣に行った帰りに焼き鳥屋さんで軽く一杯。こんな風に過ごす休日でまた仕事を頑張れるときがあります。
深夜のバーで一人飲みデビューした20代
私が一人飲みに目覚めたのは、4年前、深夜のニュース番組を担当していた頃のことです。深夜1時 く らいに仕事が終わり、次の日は早朝から取材という過密なスケジュールで、家と会社と取材先の往復が続きました。仕事に追われているという感情もあったのかもしれません。
その毎日の中で、ある日初めて仕事帰りに「わー、一人で飲みたい」という気持ちになったんです。普段からお酒は好きなほうだけど 、 家で一人で飲みたいなんて気持ちにはならなかった。けれど、気がつけば過去に数人で行ったことのあるお店に電話していました。結局カウンターで一人で赤ワインのグラスを空けましたね。
「人に見られたら恥ずかしいかも」
と緊張する一方で、開放感と高揚感もあり、楽しかったのを今でも思い出します。
この経験がきっかけで覚醒して一人でしょっちゅう飲みに行く…というのはなかったのですが、自分の中で、一人で飲むということに対するハードルや抵抗感がなくなった出来事でした。
最近は、頑張ったと思える週末にビールを飲むのが最高のご褒美です。
朝の番組を担当しているので、タイミングよく早めに仕事があがれる時には、日が明るいうちから、一息つけるお気に入りのカフェでiPadで絵を描きながら、左手にはビール。
「可愛く思われたい。女子アナなんだからちゃんとしなきゃ」
そんな思いに捕らわれていた昔の自分が今の姿を見たら、きっとびっくりするでしょうね。
LINEで友だちを呼ぶ指が止まるとき
今年の初詣は、一人で神社に行ってそのまま焼き鳥屋さん へ 。この世代 になると、 仕事も忙しく、結婚したり子どもが生まれた友人も増えてきて…。LINEで連絡しようとする指がつい止まってしまいがちに。なんだかあれこれ考えて、一人でいいか!となることが多いです。
けっして人と一緒にいることが嫌いというわけではありません。 寂しがりも末っ子がゆえ?突然のお誘いは大歓迎だし、フットワークは軽くしておこうと思っています。
時間が空いたときに、ぱっと私のことを思い出して声をかけてくれる、そんな存在で いられたらとても嬉しくなっちゃう。
ただ、無理せずこころに素直に過ごす時間の豊かさや楽しさに気づくと、それが自分を高めてくれるという思いもあります。
例えば イラストを描くときは、 私にとっては、一人で集中する「勉強の時間」。 誰かから誘われても、「ごめん、勉強があるからまた今度ね」と割とあっさり遊びより優先できちゃう。イラストを描く時間は私にとっては、リラックスでありつつ、鍛錬でもあるから、すっと抵抗なく「勉強」という言葉が出てくるのでしょうね。
中華料理店で全メニューコンプリート?
さて、そんな一人の時間を最近よく過ごすのが、ご近所の中華料理屋さん。厨房では、年季の入った中華鍋でガシガシと料理が作られ、ギョーザとから揚げのセットがおいしすぎて、こっそりご飯のお代わりを頼んでしまいます。
八宝菜と五目そばはおいしいけれど、麻婆豆腐はイマイチの出来で、メニューにはしばし、当たり外れが…。一人では大勢で囲むようにいろいろなものは頼めないので、毎回、カウンターに座って注文するときの一品にかける意気込みは相当なもの。
ハマったときは「よっしゃー」と心の中で歓声があがるし、おいしくなかったときは、
「次にかけよう」という期待に。 いつかメニューを全部制覇できちゃったりして。
本当にささやかといえばささやか過ぎる楽しみですが、一人の“自由”を感じるひとときでもあります。
誰かと一緒にいるのと同じくらい一人の時間を伸び伸びと過ごせるようになった30代って本当に心地いい。そんな風に思いながら、メニューを眺めているのかもしれません。
構成:山口亜祐子 写真:坂脇卓也
-
●10日にトークイベント イラスト展示も
古谷有美さんと大根仁監督が「おじさんとガール」をテーマにトークイベントを開催します。会場ではみんみん画伯のイラストも多数展示されます。
日時:6月10日(日)15~17時(14時半開場)
場所:本屋B&B(東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)
入場料:前売り1500円+1ドリンク/当日店頭2000円+1ドリンク
古谷有美×大根仁「おじさんとガール」