●好きよ、百貨店

百貨店にミレニアル女性が集まる3つの理由

今、百貨店に20~30歳のミレニアル女性が戻ってきています。貨店協会の統計によると、2017年の化粧品の売上は2013年から17年まで右肩上がり。なぜそのような現象が起きているのでしょうか。化粧品のトレンドと歴史に詳しいモデル・ビューティージャーナリストのSAKURAさんは、キーワードは「SNS」、「商品力」、「ナチュラル系コスメ」と分析します。

●好きよ、百貨店 05

SNSの流行が百貨店に足を運ぶきっかけに

 Twitter、Facebook、InstagramなどSNSが一般化している今、百貨店もSNSを使って、新商品の紹介などを積極的に情報発信しています。私たちは気軽にトレンドや各メーカーのおススメ商品を知ることができますが、SNS発信だけでは店の集客に直結するのは難しそう。

「買うまでのステップは何段階かあるようで、購入までの流れが自然にできているように思います」
とSAKURAさんは言います。

<購入までのステップ分析>
①美容院などの美容サロンで雑誌を読む
②その中に、SNSで見て気になっていたコスメが載っているとさらに興味をもつ
③百貨店に足を運んでみる
④ビューティーアドバイザー(BA)と対面で話をする
⑤購入に至る

 SNSはあくまで興味を持つ入り口に過ぎません。百貨店に行くとBAのカウンセリングやパーソナルのスキンチェックなどのサービスを提供しています。エンターテイメント色を押し出していることも、リピーター客も増えている理由です。

東武百貨店池袋店舗の化粧品売り場。昨年11月に化粧品をリニューアルし、NARSやTHREEなどの新ブランドを導入した。(東急百貨店提供)

 多くのサービスが無料なので、手軽に楽しめますし、SNSと対面を上手く利用することで、より自分に合った商品に出会うことができますよね。これまで敷居が高いイメージのあった百貨店にまずはお客さんを呼び込み、購買につなげる――。結果的にリピーター客が増えているのかもしれません。

「美容界の革命が起きています」

「これまで化粧品は何十年も進化し続けてきていますが、“深いシワを改善する”と化粧品に表記できるようになり、効果効能が認められたのは画期的でした」

 SAKURAさんは2017年1月1日に発売された「ポーラ リンクルショット」の登場に驚いたと言います。

 日本で初めて承認された「シワを改善する薬用化粧品」。ポーラのホームページによると、真皮の分解を抑え、肌本来の力でシワを改善していく力があるそう。発売後から約1年で56万人が体感したという統計も出ていて、世間の興味関心が伺えます。

 その後、資生堂も追従して「エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリームS」を発売しました。こちらも同じく売れているそうです。

「今までなかった商品が立て続けに出ていて、今は美容界の革命が起きています。科学的な進化は大きいですね」

 百貨店でスキンケアチェックを受けた後、メイクアップ商品よりスキンケアに興味をもつミレニアル女性もいるそうです。

 スマートフォンを日常的に使用する人が多い中、画面を見る時によく下を向く人は要注意。アゴ付近にシワが出来たり血流が悪くなったりすることもあるとのこと。美容意識が高まる現在、早い段階からエイジングケアを始める若年層が多いと考えられます。

ナチュラル系コスメで人気のブランド

 最近はオーガニック、ナチュラル系のコスメへの注目も集まっています。特に、THREE(スリー)に勢いがあるとSAKURAさんは言います。

「THREEはコスメブランドとしてだけでなく、コスメとフードを合わせた“ライフスタイル”を売りに展開する形態として、業界の先駆けになりました。カフェ&デリカッセン、ヘアケアからフェイシャル、ボディトリートメントなどサービスや商品が多岐に渡っています」

 THREEのコンセプトは「NATURAL、HONEST、CREATIVE」。インナービューティーとメイクのトレンドをバランス良く取り入れているうえにユニセックス仕様なので、若い世代だけでなく、男性も使っているのも特徴的です。

 SAKURAさんが注目しているのは、「ADDICTION」、「THREE」、「CHICCA」、「RMK」の4ブランド。「海外で活躍する日本人アーティストが関わっており、これらのメイクアップアイテムは、モード感やアーティストの個性が感じられる」とSAKURAさんは言います。

 新たにヘアケア製品も展開し始めた「ETOVOS(エトヴォス)」、カラーアイテムに力を入れ始めた「shiro(シロ)」、そしてラグジュアリーなイメージを保ちながらスキンケアやドリンクを提供している「celvoke(セルヴォーク)」などのナチュラルコスメも、注目しているそう。

ブランド系とナチュラル系がそろう百貨店

 今のトレンドは、ブランド系コスメだけではなく、ナチュラル系のコスメも取り入れること。両方をバランス良く使いこなすことがオシャレだとSAKURAさんは言います。

 例えば、伊勢丹では各メーカーが並ぶ化粧品売り場に加え、「ビューティーアポセカリー」というナチュラル系のコスメを置いているフロアもあります。最新の気になるブラントを紹介するポップアップコーナーもいち早く取り入れ、次々と新しいブランドを導入しています。

「メイクやスキンケアなどの体験ができるサービスが充実しているうえに、商品力が高まっている。それらを百貨店の同じ館内で体験できることが、売上につながっているのではないでしょうか。実際に行ってみて、自分の目で体験していくことも大事だと思います」

モデル・ビューティジャーナリスト SAKURA: 国内外でファッションモデルとして活躍後、ビューティジャーナリストへと活動の場を広げる。ビューティ、ファッション、ライフスタイルを情報発信。甲南女子大学にて「モード論」講義を10年間担当。
同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。