“呪い”をといて「自分専用の幸せ」を見つける
●本という贅沢。06
突然ですが、昔話です。
20世紀の終わりごろ、友人たちとディズニーランド行ったことがあるんですよ。その時はじめてミッキーとミニーが出てくるショーを見たんですよね。
で、びっくりしたのが、ミニーがずっと「ミッキーは何が食べたいの?」「ミッキーは何がやりたいの?」「私は、ミッキーが幸せであれば幸せ!」と言い続けていたこと。
当時私は大学生だったけれど、その時のミニーちゃんは、私が苦手な「ぶりっ子系女子(ただし、めっちゃモテる)」の典型に見えてぞっとしたわけです(ミニーちゃんファンの方がいらしたらごめんなさい!)。
就職を間近に控えていた私は、このショーを作った人たちが才能ある立派な大人たちだろうことを思い、「うわ、ひょっとして、これから出ていく『社会』というやつは、想像以上に大変な場所なのかもしれない」と、思って、シンデレラ城の前で一人、暗〜い気持ちになっていました。
でも、ですね! この間、息子と行ったディズニーランドにおけるミニーちゃんは、私の記憶とは全然違った。自分の意見を主張して、人の意見もちゃんと聞いてアイデアを出す、自立した女子になっていた!
主語が「ミッキーは〜」じゃなくて、「私は〜」になっていた。これ、20世紀のミニーちゃんと、完全に別人格じゃない? って思うくらい。
そして、その時思ったんですよ。
21世紀になって18年経つわけですが、この18年は女性が数々の“呪い”から解放されてきた(されつつある)18年だったんじゃないかって。
例えば、「女は控えめにして男の意見を立てるべき」とか、「結婚したら料理や洗濯は女性がやるべき」とか、「女は結婚や出産であてにならならいから重役を任せられない」などといった“呪い”の数々。
2018年現在、こういったことを公の場で言う人がいたら、多分その人は批判されると思う。発言の主が会社だったら、訴えることもできる。
現実が追いついているかどうかは別としても、少なくとも、こういうことは「言ってはいけないこと」側にリストされるようになったし、これは21世紀における進歩のひとつだと思うんですよね。
ただ、一方で、こうも思います。公の場でこういう発言をすることはタブーとなったけれど、こういった考え方に今でも心を支配されているのは、実は男性以上に、女性の方なのかもしれない、って。
例えば、仕事がバリバリできるすてきな女性たちと話をしていても、料理が下手な自分に劣等感を感じるとか、子供を保育園に預けて働くことに罪悪感を感じる時がある、といった言葉を聞くことがあります。
これこそ、長い時間をかけて私たちに染み付いた、ちょっとやそっとでは解けない「女子はこうあるべき」といった、“呪い”なんだろうなって思います。
周りの人たちに「もっと自由に羽ばたいていいんだよ」と言われ、世間がそれを応援する空気になっていても、心のどこかに残っている“呪い”のせいで、知らず知らず自重してしまっている女子は、多いんじゃないかなあ。
ということを思っていた時に、この本、ですよ。大崎麻子さんの『エンパワーメント』。この本は、私たちにかかっている数々の“呪い”を、するりするりとといていってくれる「解放の書」です。
もうね、働く女子にはもれなく読んでもらいたい。めっちゃ元気になるし、前向きな気持ちになれる本なんですよ。
この本は、大学院に留学しようと思った矢先に妊娠が発覚した大崎さんが、育児に専念するために入学を辞退しようとしたら、「どうして? 育児と学生を両立している女性なんてたくさんいるわよ」と言われたことで、自分がどれだけ世間の「○○すべき」に囚われていたかに気づいた話から始まります。
その“呪い”に気づいて、子どもを育てながら大学院に通い、国連で働くようになった大崎さんは、過去の自分のように“呪い”にかかっている女子たちに、その呪いのときかたを教えてくれます。
しかもそれが、説教くさくないところが全然いいんですよね。
例えば、呪いをとくための具体的な手段としてあげられているのは、「事実」と「意見」を区別する力をつけること。
人の「意見」を「事実」だと誤解してしまうと、「○○すべき」の呪いにかかってしまうので、両者を区別することが大事なのだとか。
この本には女子が幸せに生きるためのいろんな秘訣(ひけつ)が載っているわけですが、中でも私が一番好きなフレーズは、
“「女の幸せ」などというものはなく、人の数だけ幸せの形がある”
という部分。
その「自分専用の幸せ」を見つけるために必要な力、この本で見つけていきましょう!
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