特集「集中力」を高めるには?

集中力はどう高める? 今日からできる方法をじっくり聞いてきた

「働き方改革」なんて言葉が叫ばれて久しいですが、いまいち変わっていないよね……と思っている方も多いのでは? 今回はそのヒントになるかもしれない「集中力」について、書籍『集中力』を執筆した井上一鷹さんにお話を伺ってきました。

●特集「集中力」を高めるには?

集中力は、どうやって高める?今日からできる方法をじっくり聞いてきた

井上一鷹さん 株式会社ジンズ JINS MEMEグループマネージャー。まばたきや視線移動によって「集中」を計測するメガネ型ウェアラブルデバイス、「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」の開発に携わっています。

――井上さんは著書の中で、「集中力が働き方改革につながる」ということをおっしゃっていましたが、どういう意味なんでしょうか?

 今盛んに「働き方改革」ということが言われていますが、実際に指標となるものが労働時間などの数字しかないという状況なんですね。でも実際に成果が出ているかということや、労働の中身はわからない状態です。「集中」という指標を用いることによって、仕事への満足度を上げたり、生産性が高く働ける時間帯を認識することができるようになると考えました。集中力を測る「JINS MEME」を用いて、集中している時間などのデータを取り、可視化するようにしています。

――集中を見える化するんですね。

 そうなんです。自分でも測ってみて驚いたのが、圧倒的に朝のほうが集中できている割合が多かったことです。自分は夜型だと思ってたんですけどね。どうやら、日本人のほとんどが朝方の遺伝子を持っているそうです。「自分が朝集中できる」とわかった上で集中すると、より集中できるようになるという効果もあります。

邪魔されないよう、思い切ってWi-Fiを切る

――仕事中もなかなか集中できないな、と思ったりするんですが、集中力を上げるためまずできることってなんでしょうか?

 そればズバリ、「邪魔が入らないようにすること」です。もっと言うと、話しかけられない状態をつくること。「この時間は絶対に話しかけるな」という強い姿勢が重要です。とはいえ、職場で1人だけそういうことをしていると角が立つので、たとえばグループのみんなで「9時~11時は私語厳禁、集中する時間にしよう」などと決めてやるのがいいと思います。

 それから、思い切ってWi-Fiを切ってしまうこと。スマホもしまって、通知が来ないようにしてしまいます。話しかけられるのを避けられない場合は、これだけでも違いますよ。

――確かに、通知が来ると見ちゃいますもんね。あと、昼過ぎは眠くなって集中できないことがありますよね。

 思い切ってお昼ご飯を変えることも、集中力アップにつながります。体調を一定に保つためには、血糖値の変化量を少なくしたほうがいいんです。炭水化物や脂質、例えば唐揚げ定食や丼のようなご飯は、血糖値を一気に上げてしまうのでおすすめしません。炭水化物でも「GI値」の高い食品を避け、お蕎麦とか、タンパク質を多く含む食べ物などがおすすめです。ダイエットに近い食生活かもしれません。

 あとは椅子ですね。オフィスの椅子って、背筋が強い欧米人の骨格に合わせて作っているものがほとんどなんです。椅子を変えるのは難しい、という人は椅子に浅く座ってみてください。それだけで背筋が伸びて胸が開いて、肺活量が増えるんです。

――なるほど。実際、ちゃんと座ると気持ちもピシッと引き締まる感じがしますね。

 そうなんですよ。かなり違います。それから家でできることだと、寝る前のスマホは厳禁です。

――いろいろなところで言われていますが、やっぱりだめなんですね。

 はい。スマホから出るブルーライトは、「昼の光」なんです。これを寝る前に浴びることによって、体が「昼だ」と認識してしまって、眠りが浅くなってしまうという研究もあるそうです。実際に測ってみて、次の日の朝全然集中できていないということもわかりました。

――井上さん個人的に「一番効果があった」と思うのはどんなことですか?

 僕はなんか話しかけやすいキャラらしくて(笑)、邪魔しないでって言っても難しいんですよ。だから一番効果があるなと実感しているのは、昼食を変えたことですね。

集中するまでにかかる時間「23分」をうまく生かす

 さらに、これは「ポモドーロ・テクニック」というんですが、25分集中したら、強制的に5分休む。PCやスマホを見ない時間を作るんです。一般的に、人間は集中するまでに23分かかると言われているんですが、あえてそこで休んじゃう。

――そんなことをしたら、せっかく集中してきたのにもったいないのでは?

 そう思いますよね。でも集中してきた時に強制的に集中を切ると、休んでいる間にも「もっとやりたい」という気持ちが湧き上がってきて、次のタームでグッと集中できるゾーンに入れるんです。

――そうなんですね。ちなみに、集中力を保ったりするのって、男女で違いはあるんでしょうか?

 僕は女性こそメリハリをつけて働けると思っているんです。特に出産後復帰された女性は、時間も人もマネジメント能力が抜群に上がっている。限られた時間でやるべきことをやらなきゃ、という意識が強く、見習うところが多々あります。

 日本人って、「空気読め」っていう文化で育ってきてるじゃないですか。でも集中するためには、空気読まない、コミュニケーションしない時間を意識的に取ることも重要だと思うんです。それは家庭や育児でも一緒で、お互いの一人の時間をいかにつくるかが、その後のコミュニケーションを円滑に進める鍵にもなるんじゃないかと思います。って、子どもがいるような口ぶりで話しちゃいましたけど、僕の家にはハリネズミしかいないんですけどね(笑)。

――ハリネズミ(笑)。働くtelling,女性にメッセージをお願いします。

 実は集中力って、若い人のほうがあると思われがちですが、研究では43歳が最も集中できるというデータも出ています。それは体力だけでカバーできる状態ではなくなってきて、自分の体をマネジメントしようとしてくるから。女性の皆様も、自分の体と向き合いながら「集中」できる方法、環境を見つけていってください。

〈参考〉2015年、ハーバード大学とBoston Attention and Learning Laboratoryの研究者らが行った研究によると、集中力は年齢とともに向上し、43歳前後にピークを迎えることがわかった。同研究を率いる科学者の1人、ジョー・デグティス(Joe DeGutis)氏は声明の中で、「若者が情報処理の速さと柔軟性に優れている一方で、中年になるにつれ、集中力はピークへ向かうようだ」と述べた。

※明日は「世界一集中できるワークスペース」で実際に集中してみます。お楽しみに。

20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。