telling Diary ―私たちの心の中。

いつ発言したらいいの…?本当は、グループLINEが怖い

「グループLINEが苦手やねん」。そう語るのはtelling, 編集部員の友人で、名古屋市在住の会社員Nさん(31)。コミュニケーション能力が高く、毎夜飲み歩くほど友人の多いNさんですが、複数で会話する“グループLINE”での発言は少なめ。その理由を、「telling, Diary」として、“あなただけに、言うね”とコラムに寄せてくれました。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

グループLINEが怖い

 本当は一対一のLINEも怖いのだけど、私の返答を待ってくれる(というより私が答えないと進まない)から時間をかければ対処ができる。
 グループになると入り込むタイミングがわからない。
特にどうしていいのかわからないのは「たわいもない会話」。
「きょうブルームーンだって!」
「次は東京五輪の年!」
 スマホが震えてLINEが来たことを知らせる。
そうなんだ。いいこと教えてもらった。ベランダに出て感想を打ち込もう。
その数秒後には別の友人から家の片付けの経過を伝えるLINE。

 話題変わっちゃった。
もういまからブルームーンって打っても話の腰を折っちゃうよな。
片付け……。片付け……。片付けが順調に進んでるってことなんだから、ここがきれいとか、前と違うねってことを伝えたらいいよね。
あ、片付け終えた本棚の写真がきた。
本棚かぁ。本棚の何だろう。前と違うところあったっけ。
考えてたら、本棚の中の『ONE PIECE(ワンピース)』の漫画の話になって、「あ、そっちかー」と頭の中に修正をかける。

打っては消し、打っては消し

 文字を打ちかけては消し、投稿する直前にまた消し。その繰り返し。
 そうしてる間に私のいない会話が続いて既読スルー状態。
なんだか感じが悪いから、えいやっと「すごい」とか「ほんまや」とか邪魔にならない言葉をなんとか挟み込む。
 文面を打つ時は誰が見ても私の意図が伝わるように何度も読み返す。
「なにこれ」って勢いで返答しかけたけど、人によっては責めたような言い方に見えるかな。
「なんだこれー!笑」。これが正解だ。あ、話題変わってる。

だれかを、嫌な思いにさせてないかな

 会話についていこうと慌てて「なにこれ」と打った時には、自分を責めた。
だれか嫌な思いをしている人はいないかな。でも、そんなこと聞き返すほどでもないこともわかってる。
打つたびに呼吸が荒くなって部屋の中で叫びたくなる。いや、実際叫んでる。
そして疲弊してスマホをそっと机に置く。実際は既読スルーしてるだけだけど。
「この2時間、私は映画館で映画を見ている」と自分に言い聞かせて放置する。
 対面での会話には、ニュアンスと表情が言葉の温度をつくる。
それが発した言葉以上に重要で、うれしいのか怒っているのか、共感を求めているのか喜びを伝えたいのかを感じとって応じる。
集団での会話になると、場の盛り上がりからも判断できる。

無理でしょう

 無機質な文字から感情を読み取るには、ラインはあまりにも文字数が少ない。
なのに集団で会話をしろという。
無理でしょう。
「そんなに深く考えなくても」と言われるけれど、考えないで言葉を発するとは一体どういうこと?
ブルームーンの投稿の後に、突然自分が飲んだビールの写真を載せていいってこと?
そんな勇気はない。
話が180度変わることがあれば、案外その話題に関連した会話が続いていることもある。
けれど投稿しようとやっと文面を書いた頃にはもう遅い。
やり取りを続けている友人たちが超人に見える。

今日も、私は

 たわいもない会話で疲弊している自分がばかばかしくなって、今日も心の中の映画館に逃げ込んでいる。

20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。
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