編集部コラム

【編集長コラム】突撃インタビューをやって思うこと。

「すみません、あなたの人生について聞かせてもらえませんか」

 街なかでこんなふうに突撃インタビューされたら、どんなリアクションが多いと思いますか。
ワイドショーやニュース番組などで目にするような

「今、○○が流行っていますが知っていますか?」ではなくて、「あなた自身のことを詳しく教えてください」と聞かれたら。

①聞こえなかったふりをする
②とりあえず、立ち止まるが断る
③話す

 ① か②かな、となんとなく思いますよね。
 でも実は、③が一番多いんです。

突撃中

 telling,では、「Story」としてミレニアル女性のインタビュー記事を届けています。その多くが街頭で突撃して聞いた等身大の話です。

 街頭インタビューを売りにしていきたい、と周りの人に相談したとき、「プライバシーの問題とかあるし、答えてくれないんじゃない? ましてや写真は・・・」

 これが、圧倒的に多い意見でした。

 そうかもしれないなー。 

 でもやってみよう、と思ってやってみました。

 というのも、以前、私は週刊誌記者として働いていて、日本全国の殺人や災害などの事件現場に行って、聞き込み取材(事件現場に行って、情報を持っていそうな人に声をかけまくる)をしていました。20人声をかけても誰も答えてくれない、という感じだったので、「少々断られてもアタックあるのみ!」と自分を励まして、街中で、ベンチに座っている人、歩いている途中のスーツ姿の女性、女性2人連れでおしゃべりをしている女性・・・いろんな方に声をかけました。

「あの、今度オープンするメディアの取材で、まちの人がどんなことを考えているのかをインタビュー記事として載せたいと思ってまして・・・お写真も撮らせていただきたく・・・」

 もう、怪しいキャッチ以外の何者でもない・・・。

 でも、予想以上に、立ち止まって、話してくれる方が多かったのです。私だけでなく、関わっているライターさんなどでも同じように、たくさんの方が街頭インタビューに応じてくれるのです。(ちなみに、男性はすごく警戒して、答えてくれた方にはまだ出会えてません。なぜ男性はNGか、はまた別の機会に)

「なぜ話してくださったんですか」

と聞いたときに、こう答えてくれた女性がいました。

「自分が話をすることで、何か人の役に立つならうれしいから」

そして、「こんなに自分の話をして、人生を振り返ることってないから、逆に楽しかったです」とも。

 街頭インタビューは、話してくださる方に何のアドバイスもしないし、ただ聞くだけ。ちょっと、悩み相談に似ているのかもしれません。

日本全国、ニューヨークなどで行っている街頭インタビュー

 15分ほど、長いときは、30分以上その場で話してくださる方もいます。納棺師、ファッションデザイナー、起業家・・・職業も様々だし、「3日前に彼氏と別れたばかり」「最近、仕事を辞める決心をした」「実は20代から不妊治療をしている」。

 初対面(しかも会って5分)の人を相手に、私はそんな話をしたことはありません。でも、取材という、少し非日常なシチュエーションだからこそ、気兼ねなく話せるのかもしれないな、と思います。親しい相手だと、「彼氏の話とか、微妙かな」「会社の話は、やめておこう」というように、相手を傷つけないように、地雷を踏まないように話そうとするから。

「私を養ってくれる人と結婚したい」

 岡山県からたまたま上京してきた方のことばです。

 こうやって言い切れるってかっこいい。そういう人生だったらどうなっていたかな。ちょっと夢見たこともあったなあ・・・。

「仕事は今は楽しいけれど、育児と仕事の両立はすごくしんどそう。できれば旦那さんに稼いでもらって暮らしたいけれど、今の時代にそんなこと言っちゃいけないと思っていたから、自分だけじゃないんだと思った」と、新婚の方からメッセージをもらったりもしました。

 結婚観やお金のことは、年を重ねるほどに一人ひとり事情があって、親しいからこそ聞けない。でも、他の人はどうしているのかは知りたい。そんなときに、telling,のインタビューを読んでほしいなと思うのです。

 インタビューで、女性たちは「あなたの価値感狭いよ」とも「私はみんなこうすべきだと思う」とも言いません。自分の話をしてくれるだけ。でも、読み終わった後に、「私の価値感は、狭かったな。もっと好きに生きよう」と、私はいつも、思います。

telling,創刊編集長。鹿児島県出身、2005年朝日新聞社入社。週刊朝日記者/編集者を経て、デジタル本部、新規事業部門「メディアラボ」など。外部Webメディアでの執筆多数。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
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