不倫の定義とは？ 結婚の意味とは？ ドラマ『離婚しようよ』が問う夫婦の関係性

どこからが“不倫”？　その境界線は

ゆい「合体しなくても不倫は不倫です！」
東海林峰子（竹下景子）「合体イコール不倫でしょう！」
ゆい「合体以外のことは全部しました！」

ゆいと加納恭二（錦戸亮）、大志と三俣桜子（織田梨沙）の「W不倫」が週刊誌に暴露され、7話冒頭から連発される「合体」というワード。シリアスな雰囲気には決して似合わない言葉が、我を忘れたゆいと大志の母・峰子の口から繰り出される。
たしかに、愛し合っていてもセックスをしていなければ不倫ではないのか？という問いに、「YES」とは答えがたい。

「合体しかしてない大志と三俣は不倫なのに、恭二と私はなんで不倫じゃないんですか？」

ゆいのこの言い分、非常に共感できる。
2人の間に愛が存在しているのかは断言できない大志と三俣よりも、愛が存在しているゆいと恭二のほうが“不倫”の罪は大きいように思えるからだ。

グーグル検索によると、「不倫――人が踏み行うべき道からはずれること。特に、配偶者でない者との男女関係」とある。

一般的な意味に照らし合わせれば、ゆいと恭二も、大志と三俣も、不倫をしていることは事実であろう。
とはいえ、ゆいと大志の関係は事実上冷めきっており、そこに夫婦関係があるとはいえない。

そして、今まで死んだように生きてきた恭二は、ゆいと出会い、本気で人を愛することで、ぐっと人間らしくなった。さらには、結果として愛する人を失うという感情をも知ることになる。

「（恭二は）変わった人だなって思ったけど、世の中の大勢が持ってる家族や子育てが欲しい、普通の人なんだ」

ゆいが恭二に対して解き放っていた一言は、視聴者の目にも同じように映っていたように思う。

誰よりも“ミステリアス”という言葉が似合う恭二。センセーショナルな登場から期待を裏切らない支離滅裂さで、ゆいのみならず女性たちを虜（とりこ）にした彼だが、ゆいに対する愛が本気になればなるほど、おもしろいほどにその魅力は減退していった。

恭二にとっては恋愛という一大イベントで、純愛でもあった。
たまたま相手が既婚者だっただけ、というのはきれいごとがすぎるかもしれないが、せっかくの経験で不倫に巻き込まれてしまうなんて、また、本気になればなるほどゆいの気持ちが離れていくなんて、どう考えても不憫（ふびん）である。

ただ、ゆいとの関係が切れた後、パチンコ生活は継続しながらも「選挙専門ブロガー」に転身した恭二は、確実に生命力を取り戻したようだ。少なからずゆい、そして大志と出会えたことの報いと言えるだろう。

離婚してこそ深まる絆

選挙を通じて、「勝ったらやり直そう」と表明し、これまでの不仲を回収するかのように距離が縮まっていったゆいと大志。
女優として活躍しながらも、大志に最後まで添い遂げたゆいは、“議員の妻”の姿としてはある意味120点だったと思う。

投票日の夕方、大志はゆいにつぶやく。

「なんで離婚するんだっけ？」

視聴者である私たちも問いたい、この言葉。
選挙に勝っても負けても、もう離婚なんてしなくていいじゃない――。そう思うほどに、ゆいと大志は“理想の夫婦”そのものになっていた。

結果、大志は対立候補の想田豪（山本耕史）に僅差（きんさ）で敗北。
深夜の速報後、明け方に、ゆいと大志は離婚届を出しに市役所に向かった。
夜間・休日受付担当者のあまりにも雑な対応は、離婚という一大事をまるで日常的な行事のように錯覚させる。

月日は経ち、ゆいは大志との子ども・陽自を出産。
離婚しているとはいえ、定期的に交流を深める2人は、夫婦だったときよりも絆が深まっているように思える。

大志「なんであんな簡単に出しちゃったんだろ、離婚届」
ゆい「結婚するなら大志がいいかな。でもしない。再婚しないほうが絶対うまくいく」

結婚相手としてはベストなはずなのに、夫婦の状態ではない方が円満という矛盾。

でも、どこかわかる気がする。距離が近すぎないほうが、うまくいく。こんなの、実際に結婚してみないことにはわかりっこない。
一度きりの人生、ハードモードが過ぎる。が、それでこそ人生なのだ。

カラッと後味いいラストに拍手

惜しくも当選を逃した4年後の選挙で、無事勝利を掴んだ大志。
海外で主演女優賞を獲得するなど、女優としてますます快進撃をみせるゆい。
裏金疑惑が発覚し議員辞職した想田は、パン屋として奮闘。議員になった三俣は、男女同権庁の副大臣へ大成した。
そして、ゆいと大志それぞれについた弁護士、石原ヘンリーK（古田新太）と印田薫（板谷由夏）はまさかの結婚？！と、紆余曲折（うよきょくせつ）ありながらも、それぞれの人生は着実に前に進んでいく。

ゆい「人生が長すぎて、1人の人をずっと好きでいることなんか無理」

さすがは波乱瀾丈な人生を生きてきた佐藤富恵（高島礼子）の娘。たとえ母を反面教師にしていたとしても、この事実からはあらがえない。さっそく第二の人生を楽しんでいるようだ。

“離婚”というネガティブとも取れるテーマを扱いながらも、ときにはポップに、ときにはコミカルに、ゆいと大志の夫婦生活を描いた「離婚しようよ」。

自身の人生において「離婚しようよ」と発言する・される世界線はなるべく避けたいものの、いちコンテンツとして摂取する分には興味深いものだったかもしれない。