行平あい佳さん・青柳翔さん「セフレ、本命……。関係性だけで恋愛は語れない」 映画『セフレの品格』でW主演

シリーズ累計430万部を誇る大ヒットレディースコミックシリーズ『セフレの品格』(原作・湊よりこ)が映画化、前編は7月21日、後編は8月4日から公開されます。同窓会で再会し、一晩を共にしたことから始まる男女の物語。W主演を務める俳優の行平あい佳さん・青柳翔さんが、多様化する恋愛や男女の曖昧な関係に悩む人たちへのメッセージなどについて対談しました。
行平あい佳さん・青柳翔さん、年齢を重ねることに「迫り来る恐怖」と「楽しみ」と

切実で一途な思いを描く

――行平さん演じる森村抄子は、青柳さん演じる北田一樹の提案で「セフレ」の関係になります。原作にはどのような印象を持ちましたか?

行平あい佳さん(以下、行平): 「セフレ」という言葉は一般的に、“揶揄(やゆ)”とか“卑下”した意味合いで用いられることが多いのかなと思っていたんです。他人が「あの二人はセフレらしいよ」と揶揄したり、自分を「私なんてどうせ、セフレだし……」と卑下したり。でも、この作品のタイトルには、セフレの“品格(プライド)”とある。どういうことだろう、と言葉の取り合わせの違和感に惹かれたのが、最初の印象でした。
その後、映画のオーディション前に原作を読んで、抄子と一樹、この二人の関係だからこそ「セフレの品格」という言葉が意味を持つのだと思いました。他の人が、気軽に使える言葉ではなかった。誰もが忘れているような初恋の淡い思い出を、30代になった今も大切にしている抄子の思いはすごく切実で、心を掴まれました。

青柳翔さん(以下、青柳): 脚本をいただいてから原作を読み始めたのですが、最初は、僕が演じる一樹が本当にひどい人間に見えて。また、数々の女性を虜にする男なので、一樹を演じるのは役者として挑戦になるなと思いました。城定秀夫監督の作品を以前から拝見していて作風に惹かれていたので、今回も「きっと面白い作品になる」と信頼していましたね。

――同窓会の一晩をきっかけに、抄子と一樹の関係は、もつれ合っていきます。抄子にとって一樹は初恋の相手であり、二人は「セフレ」という言葉から通常は連想しやすい、都合の良い、割り切った関係とは異なるように思えました。お二人は、作中の二人の関係をどう捉えましたか。

行平: 二人の関係……。難しいな。抄子と一樹は二人とも独身なのですが、お互いに離婚経験があったり、複雑な事情や暗い過去を抱えたりしていて、一歩、関係を踏み込めないんですよね。

青柳: すごく単純に言うと、それでも二人は「運命の人」同士なんじゃないですか。

行平: あーー、でも、そうかもしれないですね。本当は相手のことを、心から大切に思っている。大事な「初恋」だから、壊したくない。

青柳: だけど大抵、初恋ってうまくいかないじゃない?

行平: そうですね、あまりに純粋すぎて。抄子たちは「セフレ」の関係を選択することで、これ以上傷を深めないように、そして求めすぎて相手を失うことのないように、なんとか繋ぎとめている。ある意味、けなげな愛ですよね。

青柳: めちゃくちゃ、けなげですよ。

どんな愛の形が“正解”なのか

――現実社会でも、「セフレ」という関係を続けながら、相手に恋愛感情を抱いてしまって悩んだり、「本命」になれずに苦しんだりする女性は少なくないような気がします。

行平: きっと苦しいですよね……。もし本命になりたいと思ったとしても「関係をはっきりさせようと迫ると、下手したら、相手を永遠に失うかもしれない」なんて思うと、なかなか動けないだろうと思う。自分にとって大切な相手に、本心を打ち明けるのは、恋愛に限らず怖いものですし。
相手との信頼関係があるかどうかが、大事なんじゃないかな。一方的に自分が傷ついてしまうのではなく、ちゃんと信じ合えているか。自分の心が癒される瞬間があるか。

――「セフレなんて本当はよくないのに……」と自分を責めてしまう女性もいます。

青柳: セフレというと世間的にはやはり、あまりよくないイメージがあるわけですよね。でも……一体、どういう愛の形が“正解”なのかと、この作品を通じて考えてしまうんですよ。
極端なたとえ話をするんですけど、結婚している二人がいたとしますよね。相手への愛情はあって、家庭円満なのだけれど、男女の恋愛感情のようなものはお互いになくなっている。その状態で、合意の上で家庭の外で恋愛しているとしたら、この愛の形は、“間違い”ですか?

行平: 難しい~。でも、夫婦でも恋のお相手との間でもちゃんと話ができていて、合意がとれているなら、間違いではないと思う。

青柳: それでも、そういう関係が世間に露見したら、きっと「間違ってる!」と言われてしまうじゃない?

行平: 周りから「変わっているね」「それでいいの?」なんて、言われるでしょうね。「この二人に限っては、この関係がベストなんだ」ってことなのに。

青柳: そうそう、そうなんですよ。だから、「恋人」や「セフレ」のように、関係を指す言葉を使うとき、すべての人にとって同じものだとひとくくりにしないほうがいいのかな。「セフレ」ではなくて「抄子と一樹の場合のセフレという関係」といったように。どんな恋愛であっても、人それぞれ異なるものだから、関係性の名前だけに注目して、こうあるべきだ、あるべきではない、と悩むことはしなくていいんじゃないかと。

二人の葛藤を見ながら「自分の恋」を振り返って

――恋愛や結婚の形も多様化している今、恋愛関係も確かにひとくくりでは語れなくなっているような気もしますね。お二人は、どのような恋愛観を持っていますか?

青柳: ……僕はもう、恋愛に対してすごく冷静というか、冷めています。

行平: 恋愛に対して熱量を注げないということですか? どれくらい恋愛に冷めているのか、教えてください。

青柳: たぶん、水を数時間置いておいたら凍るような、ひどく寒い日の屋外くらいには冷えている。周りが見えなくなるくらい夢中になることは、もうないかもしれない……。

行平: でも、凍りそうな心を溶かしてくれる人と出会って、また火がつくこともあるかもしれないじゃないですか。

青柳: いやん(笑)。

行平: (笑)。私はどうかな…。そういえば最近、少し考え方に変化がありました。今31歳なのですが、これまで結婚したいと思ったことはなかったんですね。ところが3年くらい前から、周りで結婚する人や、子どもを持つ人が増えて。結婚式に呼んでいただくことが続いたら「こんな幸せの形があるんだ。私の人生にも、そういう可能性があるのかもしれない」と、最近は自然と思うようになってきたんですよね。“絶対に結婚する!”といった心境ではないのですが、“絶対に結婚しない”とも思わなくなった。恋愛や結婚について、柔軟に考えるようになったのかもしれません。

――今、恋愛で曖昧な関係に苦しんでいたり、報われない恋に悩んでいたりする人へ、アドバイスをいただけますか?

青柳: 悩みを抱えている人は映画館へ……は強引でしょうか。

行平: ちょっと強引です(笑)。

青柳: 強引でした(笑)。いや真面目な話、この映画では前編・後編を通じて「抄子と一樹の場合の」結論が描かれると思うので、前編をご覧になってから、後編までの間に、ご自身のことを振り返って整理してもらえるんじゃないかと思います。

行平: たしかに。悩みに直球で向き合う作品というよりも、観てくださる方がご自身のことを振り返って、考える糸口のようなものを掴んでいただける作品なのでは。映画を通じて、何かを感じ取っていただけたら嬉しいです。

●行平あい佳(ゆきひら・あいか)さんのプロフィール
1991年生まれ。東京都出身。早稲田大学を卒業後、フリーの助監督として2年間、撮影現場で働く。2017年から俳優活動を開始。2018年、城定秀夫監督作品の映画『私の奴隷になりなさい 第2章 ご主人様と呼ばせてください』の主演に抜擢。近年の主な出演作に、映画『「アララト」誰でもない恋人たちの風景vol.3』『いつか、いつも……いつまでも。』『百合の雨音』、日本テレビ系ドラマ『リバーサルオーケストラ』など。

●青柳翔さん(あおやぎ・しょう)さんのプロフィール
1985年生まれ。北海道出身。2009年に舞台『あたっくNo.1』で俳優デビュー。2011年、劇団EXILEのメンバーとなる。2012年、映画『今日、恋をはじめます』で第22回日本映画批評家大賞新人賞を受賞。WOWOW「アクターズ・ショート・フィルム 2」では初めて監督に挑戦した。近年の主な出演作に、映画『孤狼の血 LEVEL2』、Netflixシリーズ『今際の国のアリス』、日本テレビ系ドラマ『日本統一 関東編』など。

▼スタイリスト: Seki Toshiaki
▼ヘアメイク: Shirogane Kazuta(TENT MANAGEMENT)

行平あい佳さん・青柳翔さん、年齢を重ねることに「迫り来る恐怖」と「楽しみ」と
©2023日活

■『セフレの品格 初恋』『セフレの品格 決意』

行平あい佳 青柳 翔 片山萌美 新納慎也
原作:湊よりこ『セフレの品格(プライド)』(双葉社 JOUR COMICS)
監督・脚本:城定秀夫
主題歌:前野健太「ああ…」(romance records)
制作プロダクション:レオーネ 企画・製作・配給:日活
R15+ ©2023 日活

ライター・編集者。1988年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後ベネッセコーポレーションに入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスに。雑誌やWEB、書籍で取材・執筆を手がける他に、子ども向けの教育コンテンツ企画・編集も行う。文京区在住。お酒と料理が好き。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。