18歳の妊娠に怒鳴る父。有栖(福原遥)に世話を焼く瞳子(深田恭子)の真意は 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』3話
有栖に向けた父・市郎の衝撃的な言葉
ずっと父・市郎(安田)に妊娠の事実を告げられなかった有栖(福原)。3話にて、にっちもさっちもいかない状況に陥り、瞳子(深田)が同席する場でようやく告白する。18歳の一人娘が妊娠したと知った市郎の反応は、有栖が想像していたとおりだった。
本当なのか、と事実を確認し、相手は誰だ、連れてこいと声を荒げ、1人で産んで育てるのは無理だ、大学に行って夢を叶(かな)えたいなら子どもは諦めろと怒鳴る。「だから嫌だった、お父さんに言うの」「私の赤ちゃん、勝手に殺そうとしないでよ」と切実に訴える有栖の言葉が、胸に迫る。
これまでのレビューで、有栖が頑なに市郎への告白を拒む理由がわからない、と書いた。市郎は思慮深く、娘のことを思っている父親として、理想的に映っていたからだ。しかし、もしかすると物語には描かれていない場面で、有栖は市郎に対し一種の不信感を抱いていたのかもしれない。「(亡くなった)お母さんだったらそんなこと絶対に言わなかった」の一言に、その疑心が表れているように思う。
市郎は、まともに娘の話も聞かないうちに、頭ごなしに行動を制限しようとする。それが、娘の幸せを願う父親に共通する心理、とでも言いたいのだろうか。
本作の登場人物にも共通するが、何がしたいのか、行動基準がいまいちわからない。
有栖の幼稚さと瞳子の冷静さ
しばらく、瞳子の自宅で共同生活をすることになった2人。物理的な距離が縮まったことで、それぞれの人柄が良くも悪くも可視化される。有栖は18歳ゆえの幼稚さ、そして瞳子はそれと対になるような冷静さを見せた。
有栖からすれば、実の父親も頼れない身重の状態で、住む場所や働く環境を整えてくれるだけでも願ったり叶ったりだろう。せめてものお礼に、と食事作りの担当を申し出るまではよかったが、家主である瞳子が不在中に友人2人を家にあげてしまったことで、一波乱起こる。2人が帰る前に、瞳子が帰ってきてしまったのだ。瞳子から「友達を呼ぶなとは言わない、でも私に電話の1本くらいできたでしょ」とまっとうに叱られた有栖は、すねて家を出ていってしまう。
有栖の行動に、SNS上では「失礼」「非常識」といった声も。
共同生活の始めにも、有栖は広い家で一人暮らしをする瞳子に対し「結婚を諦めた人がマンションを買っちゃうっていう……」と発言している。
そんな有栖の幼稚さと対になる形で、瞳子は冷静だった。出ていってしまった有栖が戻ってきやすいよう、自ら有栖へ連絡し、買ったばかりの車でアパートまで迎えに来る。3話終盤では、喧嘩(けんか)別れしかけた2人の関係性はなんとか元に戻るのだが……。赤の他人のために、わざわざ車まで購入するだろうか?といった疑問は拭えない。
瞳子の目当ては有栖の子ども?
なぜ瞳子はここまで有栖の世話を焼くのだろうか。道端で体調不良になっていた有栖を助け、産婦人科で自分の分の予約を割り当ててあげてからというもの、おせっかいすぎるほどに尽くしている。本人も口にしているが、赤の他人のことなのだから、本来は放っておいても問題はない。
子どもを産むか産まないかの選択を促し、早く父親に相談するよう助言し、住む場所や働く環境を整え、「子どもが急に熱を出した」ときのために車まで購入した瞳子。有栖には「あなたと、あなたの赤ちゃんのことが心配なの」と言っていたが、その真意は。
ここまでくると、有栖の友人たちが言っていた「もしかして、有栖の赤ちゃんが目的だったりして?」「いずれは有栖の子供を自分の養子に」が信憑性(しんぴょうせい)を帯びて聞こえてくるほどだ。有栖というよりは、彼女の子どもへの執着のように見える瞬間もある。
女性のキャリアを考えるにあたり、結婚・出産・育児は、直面することの多いステージの変化だ。親戚や、血の繋がった父親ではなく、たまたま知り合ってアルバイト先の上司となった相手の助けを借り、子育てをする。もはやそれも、ひとつの多様性と言えるのかもしれない。
TBS系火曜22時~
出演:福原遥、深田恭子、鈴鹿央士、上杉柊平、出口夏希、長澤樹、八木勇征、嵐莉菜、美村里江、松本若菜、髙嶋政宏、片平なぎさ、安田顕ほか
脚本:龍居由佳里、木村涼子
音楽:吉俣良
主題歌:Ado「向日葵」
プロデュース:韓哲、荒木沙耶、内川祐紀
演出:福田亮介、松木彩、宮﨑萌加
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