18歳はもう“大人”なのか? 有栖(福原遥)の夢と苦悩が交錯する『18/40~ふたりなら夢も恋も~』2話
有栖が頑なに父親へのカミングアウトを拒む理由
妊娠した事実を、有栖(福原)は父親・仲川市郎(安田顕)に言えないでいる。1話の終盤で「妊娠した」と告げたはずが、それは有栖の想像だった。子どもができた、相手は別れてもういない、一人で育てると告げると、想像のなかの市郎は「一時の感情で突っ走るな、おろしなさい!」と怒鳴る。
有栖はその後も、なかなか市郎に妊娠の事実を告げられない。その理由は何か?
市郎はごく一般的な父親として描かれている。大学入学を機に一人暮らしをする娘に対し、少々過保護になるのはよくあることだろう。有栖が11歳のころに母親が亡くなり、父親の手で育ってきたのならなおさらだ。
しかし、妊娠がわかったと同時に有栖が相談していれば、市郎は頭ごなしに押さえつけることなどないのでは? ましてや娘の言い分をひとつも聞かずに「おろしなさい!」なんて、非倫理的なことをぶつけそうな父親にも見えない。
まだ描かれていない、父親と娘の確執があるのだろうか。それとも、18歳の一人娘が妊娠し、あまつさえ相手が“逃げて”しまったと知ったら、どんな父親でも声を荒らげるのだろうか。本作は、扱うテーマがデリケートなだけに、脚本にはリアリティと納得感が求められる。拭いきれないちょっとした違和感は、確実に物語全体への印象と繋がっていく。
18歳は子どもか?大人か?
瞳子(深田)の会社が展開するアートカフェで、無事にアルバイトを始められた有栖。市郎には妊娠の事実を告げていないままだが、キュレーターになるという夢を叶(かな)えるためには必要な一歩だと、信じて疑わないようだ。その素直さ、頑固なほどの実直さは、若さゆえなのか、それとも。
疑うことを知らない有栖のパーソナリティが、如実にあらわれたエピソードがある。出産を決めた彼女にとって、育児にかかる費用は悩みの種だ。アートカフェでアルバイトをする以外にも、在宅でできる仕事を探し始める。その結果、学友たちから紹介された、詐欺まがいのブラックバイトに応募してしまう。
人は、悩んだり不安になったり、イライラしたりすると、とたんに視野が狭くなりやすい生き物だと思う。有栖の場合、妊娠した事実を父親にも伝えられず、瞳子は身内でもないので頼れない。18歳なので「もう子どもではない」と言っているが、 自分ひとりだけで出産・育児が完遂できるはずもなく、金銭面の問題に向き合うには父親の協力は必須。それなのに、もっとも大事なハードルを越えられずにいる。そんな有栖は最終的に、睡眠時間を削ってブラックバイトに時間を注ぎ、体調を崩してしまった。
有栖が運ばれてきた、と友人の産婦人科医・柴崎薫(松本若菜)から連絡をもらった瞳子は、有栖の自宅を訪問。「こんなことしてたら、そりゃ睡眠不足にもなるわよ」「だから子どもだって言ってんのよ」と説教する。
はたから見れば、瞳子はバイト先の上司が入り込める境界線をゆうゆうと越えている。「今日から家(うち)で、一緒に暮らします」と有栖に宣言する彼女の姿を、大変な状況にいるスタッフの救世主ととるか、それとも、子どもができにくい自身の願望を投影する身勝手な上司ととるか。視聴者の立場によって、真っ二つに分かれそうだ。
18歳と40歳の“恋”の対比
本作のテーマとして、18歳と40歳、それぞれの女性の“恋愛”や“生き様”を描き出すコンセプトが敷かれていると見える。妊娠したと思いきやパートナーがいなくなり、シンママになることを余儀なくされた18歳。そして、妊娠しにくい身体であることが発覚したとたんに、一回り年下の男性と恋の予感を覚える40歳。
有栖の目から見れば、決して日本は、18歳のシンママが余裕と安心を持って暮らせる社会ではない。必要な支援を受けるのも難しく、道を閉ざされたように感じている。蔓延(まんえん)した自己責任論にがんじがらめになった挙句(あげく)、お金が必要だからとブラックバイトに手を染める。
片や、瞳子は30歳になる直前、キャリアと恋愛の転機を同時に迎えた。努力が実を結び、ようやくキャリアアップできると思った矢先、当時のパートナーからプロポーズされる。40歳の瞳子が独身でバリバリ仕事をしていることから、結婚よりも仕事を優先したのだろう。
彼女の選択は良し悪しの判断で決められるものではない。しかし、仕事を優先したから結婚や家庭が遠のいたと映るのは、特定の考え方を是とする提案のように思えてしまう。
18歳と40歳の“恋愛”や“生き様”を対比的に描くことに、どれほどの意味があるのか。そもそも描き出せているのか。本作をきっかけに、互いの恋愛や仕事観を語り合う風潮をつくりだすのが目的だとしたら、それは大いに叶っていると思える。
TBS系火曜22時~
出演:福原遥、深田恭子、鈴鹿央士、上杉柊平、出口夏希、長澤樹、八木勇征、嵐莉菜、美村里江、松本若菜、髙嶋政宏、片平なぎさ、安田顕ほか
脚本:龍居由佳里、木村涼子
音楽:吉俣良
主題歌:Ado「向日葵」
プロデュース:韓哲、荒木沙耶、内川祐紀
演出:福田亮介、松木彩、宮﨑萌加
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