「人生を諦めるな」。妊娠・出産、キャリア……、岐路に立つ2人が偶然出会う『18/40~ふたりなら夢も恋も~』1話

ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)は、福原遥演じる18歳のキュレーター志望・仲川有栖と、深田恭子演じる40歳目前のアートスペシャリスト・成瀬瞳子をメインに繰り広げられる、女性の生き方を描いた物語。「妊娠・出産」や「キャリア」など、人生のステージが変わる局面に立たされた女性が、どんな選択をするかに注目が集まる。1話では、高校を卒業したばかりの有栖に妊娠が発覚。産む・産まないの選択を迫られる展開になった。
18歳はもう“大人”なのか? 有栖(福原遥)の夢と苦悩が交錯する『18/40~ふたりなら夢も恋も~』2話

突然の妊娠と病気の発覚。初回から重いテーマが凝縮

初回から、なんとも議論が飛び交いそうな重いテーマが続く。主人公のひとり・有栖(福原)は18歳。高校を卒業したとたんに妊娠が発覚し、パートナーに相談するや否や逃げられてしまった。母親は有栖が11歳のころに他界しており、父親・市郎(安田顕)に妊娠の事実を告げていない(1話終盤で告白)。

もうひとりの主人公である瞳子(深田)についても、これまでは仕事に人生を捧げ、ようやく本腰を入れて婚活・妊活をしようと思った矢先に、子宮内膜症が発覚。いつの間にか妊娠しにくい体になってしまっていた事実に、産婦人科のベッドで横たわりながら、さめざめと泣くしかない。

このドラマで主軸となるのは、女性にとって切っても切り離せない「子どもが欲しいと思ったときの身体的リミット」と「妊娠・出産・育児と、それらがキャリアに与える影響」になるだろう。

まだ若く、可能性や選択肢が開かれている有栖と、重ねる年齢によって着実に選択肢が減っているように感じてしまう瞳子。キュレーターを目指す有栖は、「少しでも夢に近づいておきたい」と瞳子の会社が展開するアートカフェにて短期で働くことになる。

ともに産婦人科のベッドで横たわりながら語り合った、偶然にも交わった有栖と瞳子の人生は、今後どのように展開されるのか。

「産む」が善で、「産まない」は悪なのか

ドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジ系)にも顕著だったように、見る側が「これは自分たちのことを描いている」と当事者意識が刺激されるドラマほど、賛否両論が沸き起こりやすい傾向にあるようだ。『18/40』も、まさに今、妊娠や出産、結婚やキャリアにまつわる悩みを抱える人たちにとって、突きつけられるものが多いドラマだ。

一視聴者として、この作品が「タイミングの合わない妊娠に対し、産むことが善で、産まないことが悪である価値観を助長するドラマ」にならないことを望む。

1話において、有栖が診察を受けた産婦人科医の柴崎薫(松本若菜)が口にした言葉がすべてだ。「産む、産まないを決められるのは、あなただけです。あなたの体は、あなたのものだから」「望まない妊娠や、産めない事情があった場合、妊娠を中断するのは決して悪いことではありません」……。結果的に有栖は、子どもを産み育てることを決めた。しかし、この決断は、彼女自身が自分の人生に向き合った結果の選択である。

ドラマの性質上、ここで「産まない」選択をすれば物語は広がっていかない。そんなメタ的な視点を前提としたうえで、それでもなお、「産まない」ことも選択のひとつなのだと思う。善悪や正誤なんていう二項対立な考え方では対処しきれない、また「命を大切に」なんて綺麗事(きれいごと)だけでも片付けられない、ひとりの女性に降りかかった“人生の選択”のひとつなのである、と。

突きつけられる「育児とキャリアの両立」の現実

有栖がパートナーに妊娠を打ち明けたところ、後日やってきたのは相手の母親だった。彼女は言う。「将来、やりたいことだって何かあるんじゃない? 子どもを産んで育てるっていうことは、それを諦めるっていうことなのよ」と。

果たして、そうなのだろうか。女性にとって「夢・目標」と「妊娠・出産・育児」は、どうしたって両立できないものなのだろうか。

40歳を目前に病気が発覚した瞳子自身も、有栖に対して「あなた若いから、ママになっても、これから先の人生いっぱい楽しいことが待ってていいなあ」と言っていた。確かに、妊娠・出産には明確な身体的リミットがある以上、できること・できないことは明確になっていく。

しかし、30代には30代の、40代には40代にしか見えない景色があるのではないか。年齢によって自然発生する“制限”にとらわれる人生よりも、年齢によって夢や目標を塗り替えていく人生に、目を向けてもいいはず。

とはいえ、きっとこれらも綺麗事だ。頭ではわかっていても、言葉では理解できても、心や腹に落ちていかない感覚はきっと、誰にでも覚えがあるもの。子どもが好きで、「いつかは結婚して自分の子どもを!」と望みながら仕事に邁進(まいしん)してきた瞳子にとって、いざそのタイミングになった瞬間に突きつけられた現実は、飲み込みがたいものだろう。

18歳の有栖が迷いなく「子どもを産んだら大学に行けなくなるし、そしたら将来の夢もかなわない。産んだら仕事に戻れない以前の、スタートラインにも立てないって話じゃないですか」と言ったのも、やるせない現実をどこまでも投影している。

“大人”はわかった顔をしながら言うだろう。「女性が活躍できる社会を!」「男女ともに育児できる制度を!」……。しかし、そんな社会が実現に近づいていると、どれくらいの人が胸を張って言えるだろうか。

いくつになったって迷い、悩み、ときには不安を抱えながら、それでも選択をする。瞳子が有栖に言った「自分の生きたい人生を諦めるなってこと」のメッセージは、さまざまな人生の岐路に立った側にとって、自身の足元をしっかり見つめるトリガーとして響いている。

18歳はもう“大人”なのか? 有栖(福原遥)の夢と苦悩が交錯する『18/40~ふたりなら夢も恋も~』2話

『18/40~ふたりなら夢も恋も~』

TBS系火曜22時~
出演:福原遥、深田恭子、鈴鹿央士、上杉柊平、出口夏希、長澤樹、八木勇征、嵐莉菜、美村里江、松本若菜、髙嶋政宏、片平なぎさ、安田顕ほか
脚本:龍居由佳里、木村涼子
音楽:吉俣良
主題歌:Ado「向日葵」
プロデュース:韓哲、荒木沙耶、内川祐紀
演出:福田亮介、松木彩、宮﨑萌加

ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。
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