夫婦の“愛”と一過性の“恋”。2人が導く答えは? 見始めたら止まらない『離婚しようよ』1~3話

2023年6月22日より配信開始された、TBS制作によるNetflixシリーズ第3弾ドラマ「離婚しようよ」。脚本に宮藤官九郎・大石静、夫婦役に仲里依紗・松坂桃李を迎えた本作品は、一体どのような化学反応を起こすのか。本記事では、1~3話までをレビュー。国民的女優・黒澤ゆい(仲)と愛媛県の三世議員・東海林大志(松坂)の夫婦事情だけでなく、色気あふれる自称アーティスト・加納恭二(錦戸亮)のセンセーショナルな登場、フリーアナウンサー・三俣桜子(織田梨沙)の存在、そしてゆいと大志の離婚にあたり、双方についた弁護士のキャスティングも見逃せない。
「ポジティブな離婚」に立ちはだかる選挙と妊娠、ゆい(仲里依紗)の選択は 『離婚しようよ』4~6話

脚本・キャスト・ストーリー……最高のタッグに沸いた

ドラマ『最高の離婚』(フジ系)、『リコカツ』(TBS系)、映画『花束みたいな恋をした』――。人間の別れを起点とした物語は、だいたい面白い。

そんな中、配信を心待ちにしていた『離婚しようよ』。

社会問題に切り込みながらもからっとポップな描写が印象的な宮藤官九郎と、女性の心に深く刺さるじとっと湿度の高い恋愛ものを描かせたら右に出る者はいない大石静による共同脚本。“ドラマ『俺の家の話』(TBS系・宮藤脚本)と『恋する母たち』(同・大石脚本)が交わる世界線”なんて、誰が想像しただろうか。

さらには、仲里依紗×松坂桃李という、ありそうでなかったタッグにも拍手喝采である。
代議士の妻役を演じている中でさらに女優を演じるという難題を軽々とクリアする仲。「黒澤ゆいは、仲里依紗が演じる以外考えられない」とまで思わせる没入感に脱帽だ。

続いて、映画『不能犯』、『新聞記者』、『あの頃。』、『流浪の月』など、ダークヒーローからオタクまで幅広い役柄に憑依(ひょうい)してきた松坂桃李。大志の隠しきれない女たらし感、応援演説で飛び出す薄っぺらい言葉たち……。見ているこちらまで若干イライラしてしまうダメ男っぷりは、彼が演じるからこそだろう。

そして、本作品において言及せずにはいられないのが、錦戸演じる恭二だ。
街中でゆいにぶつかった後、パチンコが大当たりしたことから、ゆいのことを“女神”と呼ぶ。さらに、会って間もないのに、ゆいのことを「すごく好きだ」と言う。にもかかわらず、「離婚なんかしなくていい」と言ったり、パチプロと思いきやアーティストだったり、まさかの“不能”だったりと、ゆいの思考をこころゆくまでかき乱す。

他、著者的要注目キャストとしては、三俣役の織田と、ゆいの母・佐藤富恵(高島礼子)の恋人役・中島歩だ。

大志の不倫相手である三俣は、なにがあってもタフでしたたか。大志の煩悩をかき乱しているようだ。
エキゾチックなビジュアルにパワフルさとキュートさをあわせ持つ、織田が演じる三俣には、きっと誰もが面くらってしまうことだろう。

中島は、昭和スターを彷彿(ほうふつ)とさせる甘いマスクに響く低音ボイス。その色気は錦戸と大差ないように思う。

古田新太&板谷由夏コンビのスパイスがたまらない

ゆいは、愛媛を舞台にしたドラマ『巫女ちゃん』で大ブレークし、CM契約も複数持つなど、女優として成功している。だが、大志は、三俣との路上キス写真を暴露され、政界では失言などの不祥事を重ねる。2人は結婚5年目で子どもはいない。口げんかが絶えず、仮面夫婦ぶりもはななだしい状況だ。

1話にて早々に離婚を決意するゆいと大志は、協議を円滑に進めるためにそれぞれ弁護士を雇う。
ゆいの弁護士は、なんとも胡散臭(うさんくさ)そうだが腕は確かな石原ヘンリーK(古田新太)、大志の弁護士は、容姿端麗でりんとした印田薫(板谷由夏)だ。
この2人が、ゆいと大志の過去をひもとき、離婚物語に多大なる影響を及ぼしていく。

中でも、3話での4人の話し合いのシーンは、抱腹絶倒だ。
ジャケットを脱ぐ印田とゆいは、ノースリーブの服で美しい二の腕があらわになる。その流れで、ヘンリーもジャケットを脱ぎ、なぜか印田と同じグリーンのタンクトップ姿に。
多額の慰謝料を条件に出すような殺伐とした雰囲気に反する大志の心の声のツッコミに、吹き出さずにはいられない。

予想はしていたが、ヘンリーと印田のまさかの過去にも驚きだ。大学院時代の同級生だった2人は、昔、男女の関係にあった。
本作品の裏主人公と言っても過言ではない古田&板谷コンビの今後の関係性も、気になるところである。

“離婚物語”に、正解はあるのか

離婚にまつわるドラマにおいては、直近だと『あなたがしてくれなくても』(フジ系)が話題となった。
離婚までしたにもかかわらず、主人公は「元サヤ」へ、という最終回にネットは騒然、賛否両論の声が入り乱れたことは記憶に新しい。

結局離婚せずに事を終えるのか、別々の道に進むことになるのか、それぞれの不倫相手と新しい人生をスタートするのか――、離婚物語に、正解はない。どれもその夫婦にとっての答えなのである。

本作品では、たとえ“離婚”という答えが導かれていたとしても、ゆいと大志がお互いに尊敬している部分は消えることなく、2人の間には確実に“愛”が存在している。2人が出会ったのは中学生の時。ゆいは、大人になってからも変わらない大志のまっすぐさや優しさを、マネージャーの笹井(少路勇介)に吐露している。

その“愛”に対立する“恋”が、離婚への動きを加速させていくわけだが、今のところゆいにとっての恭二も、大志にとっての三俣も、一過性のものとしか感じられない。
とはいえ、それぞれの関係性がどうなっていくのかがわからないのが、恋愛の厄介かつ面白いところなのであろう。

「ポジティブな離婚」に立ちはだかる選挙と妊娠、ゆい(仲里依紗)の選択は 『離婚しようよ』4~6話

『離婚しようよ』

2023年6月22日〜Netflixにて全世界同時配信
出演:松坂桃李、仲里依紗、錦戸亮、板谷由夏、織田梨沙、神尾楓珠、少路勇介、矢沢心、守屋麗奈、高岸宏行、前原滉、尾美としのり、池田成志、山本耕史、高島礼子、竹下景子、古田新太ほか
脚本:宮藤官九郎、大石静
音楽:河野伸
主題歌:Rin音『Good Bye feat. asmi』『Fruits feat. asmi』
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一
プロデューサー:磯山晶、勝野逸未、佐藤菜穂美
監督:金子文紀、福田亮介、坂上卓哉
制作協力:TBSスパークル
製作著作:TBSテレビ

映画・ドラマ好きが高じてライターになった元役者。 週末は映画館に足を運び、毎クール最低10個はドラマチェック、配信で過去作を見漁るなど、圧倒的コンテンツ摂取過多。 推しがいないことが推しです、もはや全員推しなので。
福岡県出身。現在は大阪在住のイラストレーター&クリエイター。"変化を起こすトキメキ"をテーマにPOPなイラストを描いています。WEBサイト、ノベルティーグッズ、イベントロゴ、動画などでイラストを提供中。趣味は映画、ドラマ、アニメ、ミュージカルなど鑑賞に偏りがち。
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