『あなたがしてくれなくても』が描く夫婦のセックスレス、誰も悪くないのになぜ「つらい」

ドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジ系)は、建設会社の営業推進部で働く吉野みち(奈緒)と、その夫でありカフェ店長の陽一(永山瑛太)、そして、みちの上司である新名誠(岩田剛典)と、その妻でありファッション誌副編集長の楓(田中みな実)、二組の30代夫婦に焦点を当てた「セックスレス」がテーマの物語。第1話では、吉野夫妻が直面している“とある問題”が浮き彫りになりました。
「セックス、そんなに大事?」夫婦の不一致がやるせない『あなたがしてくれなくても』2話

婚姻関係にある男女の約半数が「セックスレス」

「セックスレス」をテーマにした漫画の代表格、ハルノ晴による「あなたがしてくれなくても」が、魅力的なキャストによってドラマ化。みち(奈緒)と、陽一(永山)は、一見すると仲睦(むつ)まじい夫婦である。しかし、2年も体を重ねていない事実が、少しずつ二人の間の溝を深めている。

日本家族計画協会の調査「ジャパン・セックスサーベイ 2020」によると、国内20〜40代の婚姻関係にある男女のうち、約半数がセックスレスであることがわかっている。同調査は、セックスレスを「特殊な事情が認められないにも拘(かか)わらずカップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1カ月以上なく、その後も長期に亘(わた)ることが予想される場合(日本性科学会による定義)」としている。おそらく、この問題は多くの人を悩ませていると想像できる。

吉野夫婦を取り巻く状況も、まさにそれだ。くわえて、誠(岩田)と楓(田中)の間にも、同じ問題が横たわっている。決して表立っては言えない、けれど無視なんてできない。『あなたがしてくれなくても』は、多くの夫婦やパートナー同士に襲いかかっているであろう、密(ひそ)やかな核心に光を当てようとしている。

二組の夫婦、対比によって浮き彫りになる“問題”

みちと陽一は、ともにビールで晩酌をしたり、雨のなかレジャーシートを傘にして花見をしたりと、第三者から見たらじゅうぶんにコミュニケーションが取れている夫婦だ。本人たちの自覚としても、嫌い合っていたり、決定的な確執があったりするわけではない。

しかし、みちの心中には“しこり”がある。それは、2年も夫から体を求められていない事実。もちろん夫婦間のコミュニケーションは性交渉に帰結するわけではない。愛情のやりとりは他の形でも可能である。けれど、みちが主張するように「愛してたら、求めたいって思うのが普通じゃないの?」と感じる場合が多いだろう。

恋愛における性交渉の頻度や有無を、そのまま愛情の濃度や有無につなげてしまう議論は、慎重に進めなければならないと考える。

性交渉がないと、お互いを愛していないことになるのだろうか。みちは、陽一が働くカフェのカウンターで「ただエッチがしたいだけじゃない」「陽ちゃんに“愛されてる”って感じたいからなんだよ」と口にする。それは本心なのだろう。ただ、かといって、陽一がみちに対し“性交渉以外の愛情表現”をしたとしても、彼女は満足しないのではないだろうか。

1話の終盤にて、新名夫妻もセックスレスであることがわかった。彼らが置かれた状況は、吉野夫妻とはまた違っているかもしれない。

自身の仕事にくわえて料理(おそらくほかの家事も)を担当する誠と、雑誌の副編集長として仕事に邁進(まいしん)する楓。互いに電話で連絡を取り合ったり、デジタルメモを介して意思疎通をとったりする様は、夫婦間の愛情が残っていることを示している。

どちらかが(主に楓が)時間をやりくりし、もっと夫婦のコミュニケーションに寄り添う姿勢を見せてくれれば、解決に近づきそうな気もするが……。きっと、吉野夫妻と同様に、そこまで単純な話ではないのだろう。

誰も悪くない、だからこそ、つらい

みちと陽一。誠と楓。今のところ、誰ひとり“悪者”がいない。だからこそ、やりきれない思いが募るし、つらい。

吉野夫妻に関しては、懸命に話し合いの場を持とうと苦心するみちに対し、賛同の意見が集まりそうだ。しっかり話をしようとする側と、面倒がって避けてしまう側。夫婦やパートナー同志は、不思議とこういった構図になることが多いように思う。

しかし、一概に陽一だけが悪いとは言えない。間に合わせのスイーツを買ってきて妻のご機嫌取りをしたり、せっかくの約束をドタキャンしたり、靴下を脱ぎっぱなしにしたり、スマートフォンの画面がバキバキに割れていたりと、少なくとも陽一はマメな性格ではないのだろう。

けれど、みちが愛用していたキーケースと同じものを探して買ってくる、過ちは認めて自ら謝るなど、妻に対する愛情が失われたわけではない。言ってしまえば、陽一は性交渉なしの関係に満足している。「私にとっての今日と、陽ちゃんにとっての今日は、重みが違う」とみちが言ったように、みちが問題としている状況(=セックスレス)を、陽一は重く捉えていないだけなのだ。

新名夫妻についても同じことが言える。1話を見る限り、夫婦間のコミュニケーションが薄くなっていることに危機感を持っているのは、夫の誠のほう。楓が何も考えていないとは思わないけれど、仕事が忙しい以上できることには限界がある、と理性的に解釈していそうだ。

どちらかが一方的に100%悪いわけではない。だからこそ、気づいた側から変わらなければいけない。みちも同じように考え、懸命に陽一と言葉を重ねようとするが……。今のところ、その“努力”が実を結びそうな気配はない。

陽一に不満を持つみちと、楓に背を向けられる誠。1話は、そんな二人がハグをするシーンで終わった。セックスレスに悩む二人が、単純に肌の触れ合いによって互いの心を慰める展開になるのか……。そんな明け透けな流れに疑問を抱く自分と、一概にむげにはできない自分がいる。

「セックス、そんなに大事?」夫婦の不一致がやるせない『あなたがしてくれなくても』2話

『あなたがしてくれなくても』

フジ系木曜22時~
出演:奈緒、永山瑛太、岩田剛典、田中みな実、さとうほなみ、武田玲奈、宇野祥平、MEGUMI、大塚寧々ほか
原作:ハルノ晴
脚本:市川貴幸、おかざきさとこ、黒田狭
音楽:菅野祐悟
主題歌:稲葉浩志『Stray Hearts』
挿入歌:稲葉浩志『ダンスはうまく踊れない』
プロデュース:三竿玲子
演出:西谷弘、髙野舞、三橋利行(FILM)

ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
福岡県出身。現在は大阪在住のイラストレーター&クリエイター。"変化を起こすトキメキ"をテーマにPOPなイラストを描いています。WEBサイト、ノベルティーグッズ、イベントロゴ、動画などでイラストを提供中。趣味は映画、ドラマ、アニメ、ミュージカルなど鑑賞に偏りがち。
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