telling,Diary 私たちの心の中。

「レス」からのV字回復。私たち夫婦がしたこと。

普段は仲が良いけど実はセックスレス。そういったカップル、実は多いのではないでしょうか。都内在住の唯さん(仮名・32歳)夫婦も同様でした。しかし、唯さんは諦めることなく彼と向き合い、レスから脱却します。困難な「V字回復」をどうやって成し遂げたのか、お話をうかがいました。

「相当珍しい」って、言われます。セックスレスから復活したんです、ウチの夫婦。

付き合ってすぐに半同棲、ちゃんとした同棲も3年近くして、交際期間5年でようやく入籍しました。

実は、付き合い始めはちょっとだらしないスタートでした。いわゆる「身体の関係が先」というやつで(笑)。でもそれもあってか、相性みたいなものは悪くなかったんです。今まで付き合ってきた人に比べると頻度は多い方で、当初はまだ結婚なんて全然考えていなかったけど、うちのカップルはこのままこんな感じかな〜、なんて思いながら日々仲良く過ごしてました。

ペットがきっかけ、ついに”魔のひと言”が

転機は交際から3年、同棲のタイミングで猫を飼い始めたこと。急に赤ちゃんがやってきたような感覚で、カップル内の優先順位が猫の方にがーっと向いた感じがありました。
ベッドルームで良い雰囲気になっても猫の視線が気になっちゃう。部屋の外に出してもミャアミャア鳴いているのが聞こえてくると、空気が壊れてそのまま「今夜はもう寝ようか」なんてことに……。

彼のほうが繊細で、何度か「ダメ」だった時に、自信を失ってしまったんだな、というのがわかりました。負け癖がついちゃったんでしょうね。スキンシップはあるんだけど、どうしても最後の行為まではたどり着けない。
お互い昼間は今まで通りを保っていたけど、だんだんと今度は私の心の方が折れていってしまいました。

数カ月経った頃、私から切り出しました。「このままでいいの?」って。その頃はもう結婚を意識していたから、「私このままこの人と結婚するとしたら、一生ないわけ?」という虚しさで限界がきていた感じでした。
その時、あの、魔のひと言があったんです。

「家族にしか思えない」

行為がなくなりはじめた頃、それでも仲は良いし、浮気をされているわけでもないというのはわかっていて「待ってみよう」と思っていました。でもやっぱり内心焦りはあって、ネットで色々調べたりなんかして。「彼をその気にさせるテクニック5選」とか。「セクシーな下着を買うべし」みたいな(笑)。そういう記事を読むと必ず出てくるじゃないですか、「パートナーが家族にしか思えなくなった」という理由。
まさか本当に言われると思っていなくて、「私たちはセックスレスのカップルだ」というのをつきつけられた感じ。いよいよこれは、認めざるを得ないなと思うとかなりショックでした。

この時の話し合いでは結局どうにもならなくて、私の方も完全に気持ちが切れてしまいました。セックスレスを解決しようと歩み寄ることが、ここまでダメージをくらうものなんだっていうのを痛感しました。

「じゃあいっか」にしなかった

一度は現実逃避というか、「最悪、ほかに良い人がいれば浮気しちゃえばいっか」と開き直りました。その頃は私の態度も以前とは変わっていたと思います。今までは「最後までできなくても」彼が絡んできたりすればスキンシップに応じていたけれど、それをやめたんです。

うちのカップルの場合は、これが良かったのかもしれません。
彼が焦り出して、努力をするようになりました。普段は仲が良いわけで、結婚もいずれしたい。だけど、お互いに「課題だ」と思っていることがある。これをおざなりにしなかった。
いつもは割と彼に合わせたり、できるだけ機嫌良くいようと努めている私が、「そこはなあなあにしたくない」という態度をとったことが彼を動かしたようです。
ペットを言い訳にせず、「家族だから」という扱いも改めて、雰囲気作りなどを頑張るようになってくれました。

その態度を受けて、私も「もう一度」という気持ちで一緒に頑張ってみることにしました。
彼の前で「彼女らしさ」を捨てないよう、ちょっとした身だしなみを整えたりと、簡単なことではあるのですが。「家族にしか思えない」という言葉を乗り越えたいという執念がどこかにあったのかも。

それから、努めて明るくいるようにしましたね。うまくいかなかった夜も、仲が良い雰囲気だけは壊さない、気まずい空気を翌日に持ち越さない、そこは意識していました。
レスが原因で別れるのは嫌だ、という思いがお互いにあったんだと思います。だから、「課題」ではあるけど「蓋をしておく闇」のままにはしておきたくなかった。その気持ちが一致していたことは幸運だったような気がします。

なぜ、レスになってしまうのか

入籍をしたのは「リハビリ期間」みたいな状態の時でした。以前のような状態に戻れていたわけではない頃です。でもその時にはもうお互いそれを問題だとは思っていませんでした。口に出して確認し合ったわけではないけど、前向きな解決に向かって頑張れてた感じがあったので。
結局完全なレスの期間が1年近くと、リハビリっぽい時期とで、数年かけて関係は回復しました。

周りの友人たちも本当にレスのカップルや夫婦が多くて、話を聞いていて共感で苦しくなることはたくさんあります。
どうしてうちは抜け出せたのか。思い返してみると、お互いが諦めなかったことが大きいのかなとは思います。
レスの問題はとてもデリケートで、どんなに仲の良いカップルでも話しづらいテーマだとは思います。
そうすると、当時の私もそうですけど、「じゃあ、他で」とすぐに切り替えようとしてしまう。そして「忙しくて楽しいことが好きな女の子たち」ほど、それが簡単にできてしまう環境があって、割と実行に移している子も多い。特に東京に住んでいる子は出会いも話題も豊富で、現実から目を背けられる方法がいくらでもあるんですよね。

ただ、個人的には「一旦、目の前の問題片付けてからでいいんじゃない?」って思うんです。パートナーとの問題をとことん解決しきってから次にいく、でも遅くないんじゃないかって。
相手のことが好きだから真剣に話し合って傷つけて別れにつながったら嫌だ、と思うこともありました。
でも、レスの問題を解消しないことで、一緒に過ごしてできたたくさんの楽しい思い出にまでなんとなく薄っすらと霞がかかったような状態になってしまっていたのが私は嫌だったんです。
幸いなことに、彼もそれではマズイと思ってくれていた。お互いのこの温度が一緒だったことが根気よくレスと向き合えた理由だと思います。

多分、多くの男性が「まさか彼女がそんなことで悩んでいるはずがない」って考えてると思うんです。だからこそ、大切な人との楽しい未来を死守するために、思い切って話してみる。
それってきっと「セクシーな下着で誘ってみる」とか「ムードのある間接照明を買う」なんかよりずっと、コスパがよくて効果的な方法なんじゃないかなって、私は思います。

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