吉田羊さん、「私は役者と結婚した」 焦る日々越えデビュー25周年 

2022年で俳優デビュー25周年を迎えた吉田羊さん。下積み時代を経て14年放送のドラマ「HERO」で演じたクールな女性検事役で注目を集め、その後はドラマや舞台などで活躍しています。「自分が選択したことだから、それを受け入れよう」と話す吉田さんに、年齢を重ねることへの思いや、人生を楽しむ秘訣などを伺いました。
スープ、おかゆ、ファスティング 吉田羊さん、食へのこだわりをエッセイ『ヒツジメシ』に 【画像】吉田羊さんの撮り下ろし写真

家族が出来た友人といるのがつらかった……

――吉田さんはこの25年、様々なキャリアを重ね、人生を歩んでこられました。telling.読者は20代後半から40代の女性が中心で、キャリアや年齢を重ねることに対して迷ったり不安を抱えたりする世代でもあります。

吉田羊さん(以下、吉田): 私も若い頃は、当たり前に結婚して、子どもを産むものだと思っていました。だけど、そうなっていない今の現実にヒヤリとしたり、パートナーや家族ができた友人たちといるのがちょっとつらくて距離を置いたりした時期もありました。でも私の場合、幸運だったのは、熱中できるお芝居があったことです。今年、役者人生25周年を迎えましたが、結婚で言うなら銀婚式なので「私は役者と結婚したんだな」としみじみと思っています。

経験できなかった人生ももちろんあるけど、選ばなかったことで得られた喜びもあるし、結局は自分が選択してきたことだから、「それを認めようじゃないか」という風に思えるようになりましたね。

――昨今、30歳を前に、キャリアと結婚などについて焦る「29歳問題」や、仕事か結婚か育児か、など人生の選択において最終的な岐路に立っているのではないかと悩んだりする「39歳問題」といったことも聞かれます。

吉田: 29歳や39歳といった大台に乗る前の節目の年齢に不安に思ったり、焦ったりするのは当然だと思うし、もちろん私にもありました。体の変化もありますし、社会的にも女性の結婚とキャリアが両立できる環境が整えられてきたと言われていますが、実際はまだまだ途上の段階じゃないですか。その中で、自分が選ばなかった人生ほどよく見えてしまうものですよね。でも、幸せの尺度って相対的ではなく、自分勝手でいいと思っているんです。

悩むっていうことは、違う人生への好奇心があるということだと思うんですよね。なので、もしターニングポイントが来たとしたら、ネクストステージをどう生きるか決められるラッキーチャンスだと、私は思うようにしています。自分がその時に選んだ人生は、もしかしたらだれかが選ばなかった人生でもあるなって思うと、お互い様だなって。そう思えば、どんな人生を選んでも、自分で選んだことなら受け入れられるし、自分だけは自分の選択を信じてあげたいですよね。

「めんどくさいポジティブ野郎」な私

――人生を楽しむ秘訣は、そういうところなんですね。

吉田: もし万が一結果が出なかったり、周り道だったなって思ったりしたとしても、「自分で選んだんだから」と思えるじゃないですか。そこの選択を人任せにすると他人のせいにしてしまうけど、自分で選んだのであれば納得して「じゃあ今度はどっちに行こうかな?」っていうこともできる。

私は下積み時代が本当に楽しくて、全然つらくなかったんです。なぜか「私はできる!」と根拠なく信じていたんですよね。なので、秘訣と言えるか分からないけど、決して悲観しないこと、腐らないことですかね。とは言え、私は自己肯定感が低い方だと自認しているんですけど、同時にだれよりも自分を信じている「めんどくさいポジティブ野郎」なんです。

人生を楽しくできるのって、結局は自分なので、自ずと楽しい方、明るい方を選んでいくとポジティブな方に物事が向かう気がするんです。そうすると同じような人が集まってきて、自然と「ハッピーバイブス」に囲まれるようになるんですよね。なので、言葉は大事だなと思います。

自分が発する言葉を1番最初に聞くのって、自分じゃないですか。例えば汚い言葉を他者に向けて吐いたとしても、それを1番最初に聞くのは自分の耳なので、私はなるべく美しい、ポジティブな言葉を使いたいです。とはいえ、愚痴りたい時とか、どうしても毒を吐きたい時ってあるじゃないですか。そういう時はとことん吐き切って、最後に感謝の言葉で締めくくるっていうのを私はよくやっています。

――2022年はどんな年でしたか?

吉田: 今年は役者25周年ということでこの『ヒツジメシ』もそれに合わせて作っていただいたのですが、「節目って人を動かすポジティブな力があるな」と実感しています。9月にやらせていただいたライブもそうですし、まだまだ足りないことばかりで未熟ものながらも、それぞれがひとつの形になったのは、それを叶えてくださる方々がいて、ご縁をいただいたからなので、感謝の1年だったなと改めて皆さんにお礼を言いたいです。

――役者として、女性として、今後どのように年齢を重ねていきたいですか?

吉田: 年相応の顔になっていきたいですね。シミとかシワを役者の武器だと喜べるようになっていきたいですし、その年齢にしかできない役をいただけるようになりたいです。あるがままの自分を受け入れることがなかなか難しかったりするじゃないですか。特別に若いわけでも、特別におばあちゃんでもない。「じゃあ今の時期の自分って一体何者なんだろう」と思う瞬間が結構あるんですよ。 でも、そういう過渡期にある自分の姿も受け入れられたら、同じように考える人に寄り添うお芝居が出来るかもしれない。圧倒的に長い「中年時代」の自分を観察しながら、歳を重ねていけたらと思います。

そして、しなやかに生きていきたい。怒らず、穏やかに、受け流す強さを持ちたいなと思います。昔に比べたら経験値も増えて腹も立たなくなって「ま、そんなもんだよな」と思えるようになりましたけれど、ストレスが溜まっていたり、余裕がなかったりすると人に当たってしまったり、強い言葉を選んでしまうこともありますから。私の人生のテーマは「一生かけて優しい人になる」。死ぬまでには叶えたいです。

スープ、おかゆ、ファスティング 吉田羊さん、食へのこだわりをエッセイ『ヒツジメシ』に 【画像】吉田羊さんの撮り下ろし写真

●吉田羊(よしだ・よう)さんのプロフィール

福岡県出身。小劇場を中心に活動後、TV・映画などの映像へと活動の幅を広げる。2015年映画「ビリギャル」では第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を、21年には舞台「ジュリアス・シーザー」で第56回紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞した。俳優歴25周年を迎えた今年は、映画・ドラマ・舞台はもちろんオリジナル楽曲「colorful」の配信や初のコンサートも開催した。2023年1月には、映画「イチケイのカラス」、3月には映画「Winny」の公開を控えている。

■「ヒツジメシ」

著者:吉田羊
出版社:講談社
定価:1,760円(税込)

ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。