「ポジティブな離婚」に立ちはだかる選挙と妊娠、ゆい(仲里依紗)の選択は 『離婚しようよ』4~6話

2023年6月22日より配信開始された、TBS制作によるNetflixシリーズ第3弾ドラマ「離婚しようよ」。脚本に宮藤官九郎・大石静、夫婦役に仲里依紗・松坂桃李を迎えた本作品は、一体どのような化学反応を起こすのか。本記事では、4~6話までをレビュー。“離婚”と“選挙”を中心に、予想外すぎる妊娠というライフイベントなど、黒澤ゆい(仲)と東海林大志(松坂)のもとに降りかかるさまざまな出来事が、価値観の異なる登場人物の中でポップに描かれていく。
夫婦の“愛”と一過性の“恋”。2人が導く答えは? 見始めたら止まらない『離婚しようよ』1~3話 不倫の定義とは? 結婚の意味とは? ドラマ『離婚しようよ』が問う夫婦の関係性

“離婚”の世界観を覆す、恭二と富恵の魅力

この人、何を考えているのかよくわからない――。そんな人であればあるほど心惹かれてしまうのは、なぜなのだろうか。

「作業があるんだ」「今日は帰って」

離婚に向けた話し合いの最中で、ゆいは加納恭二(錦戸亮)とのデート写真を大志の秘書・早乙女(尾美としのり)に撮られ、義母の東海林峰子(竹下景子)にも関係を知られてしまう。だが、同じタイミングで、衆議院の解散と選挙が決まった。それどころではないゆいが向かった先は、恭二のアトリエ。しかし恭二は、雨に濡れたゆいを否応なく突き放す。

「ゆいの空いてる時間、全部」

恭二は、ゆいのことを想って作ったオブジェの“対価”としてそう言ったにもかかわらず、「俺の空いてる時間を全部あげるとは言ってないよ」「離婚してくれとも言ってない」などとぬかす。さらにその翌日には、「傷つけてごめん。なんであんな風になっちゃうのか、自分でもよくわかんないんだ」「もうしないから、許して」などとまるでモラハラ男のような発言を繰り出す。

身勝手かのように思える行動だが、大志のような “世襲”に囚われていない恭二は、限りなく自身に実直で自由なのである。

「ゆいとあんたの子は俺が育てる。父となる覚悟はできてるから、任せてほしい」「俺は、ゆいを愛してる」

たとえ妻の不倫相手であっても、こんなにも堂々と宣言されてしまったら、大志だってぐうの音も出ないだろう。

この奔放さこそが、ゆいだけでなく大志、峰子までをも夢中にさせる恭二の魅力なのではないだろうか。

ゆいの母・佐藤富恵(高島礼子)も恭二同様、ずば抜けて気ままである。

一度も結婚をしていないにもかかわらず、父親が異なる7人の子どもを出産。
スナックを営みながら、女手一つで子どもたちを育ててきた彼女は、東海林家からの仕送りなしでは生活できないほどお金には苦労しているようだが、それ以上に幸せそうに見えるのだから不思議だ。

富恵が元彼の現在のパートナーに突然刺されたとの連絡を受け、ゆいが慌てて愛媛から実家にとんぼがえりしたときの反応にも、驚きたまげた。
誤解だったとはいえ、たまたま避けることができたとはいえ、刺されようとしたもんなら人間、憤るのが普通だろう。ゆいが心配して頭の血管がちぎれそうになる中、一貫してひょうひょうとしている富恵。

「お母さん、いろんな男に惚れて、たくさん子ども産んだけど、別れ方だけはきれいなんだよ」
「誰にも恨まれてないし、誰も恨んでない」

一体、どれだけお人好しなのだろうか。

もはや結婚や離婚の概念の“が”の字もない恭二と富恵を見ていると、ゆいと大志の離婚騒動はどうでもよくなってくる。

そのとき一緒にいたければ、愛し合ってさえいれば、それでいい――。生きづらいこの時代、人はもう少しエゴに生きたっていいのかもしれない。

どこまでもポップに描かれる離婚物語

4~6話では、ゆいと大志の離婚が現実味を帯びてくるものの、その動きとは矛盾するかのようなイベントが勃発。そう、選挙と妊娠である。

多大なる愛媛愛くらいしかいいところがない三世議員・大志にとって、選挙に勝利するためにはゆいの存在が必要不可欠。
さらには選挙期間中に、たまたま愛媛で「巫女ちゃんスペシャル」のロケ撮影が被る。こんなのもう、ゆいもサポートに入らざるを得ない。

離婚に向かっているが、ゆいと大志はさまざまな苦楽を乗り越えてきた立派なパートナー。
久しぶりに二人きりで外食をするシーンは、仲睦(むつ)まじい夫婦にしか見えないのに、会話内容はお互いの不倫の話なのだから滑稽だ。

さらには、ゆいの妊娠が発覚。これまで頑張って妊活をしてきたにもかかわらず、節分祭の日、大志とのあのたった一回でデキてしまうだなんて、これまた驚きである。

「一周まわってお似合いな夫婦、離婚なんてしなくていいのに!」と、視聴者が応援したくなるからこそ、離婚物語がポジティブに映し出されているのかもしれない。
副音声ともとれる“心の声”も、ポップさを際立たせる抱腹絶倒ポイントである。

結婚したって、血のつながりは生まれない

「旦那ってさ、どんなに好きになっても動物学的には他人じゃん。子どもには敵わないよね」

6話で富恵が言っていたセリフが、頭から離れない。

今はやたらめったら結婚にこだわる時代に思えるが、パートナーと血がつながるということは、どんなに努力しても起こり得ないのである。

ゆいと恭二、大志と三俣桜子(織田梨沙)の「W不倫」はついに明るみに出るようだ。大志との子どもを授かったゆいは、これからどのような人生を選択していくのか?離婚をどのように乗り越えていくのか?彼女たちに寄り添い、見守っていきたい。

夫婦の“愛”と一過性の“恋”。2人が導く答えは? 見始めたら止まらない『離婚しようよ』1~3話 不倫の定義とは? 結婚の意味とは? ドラマ『離婚しようよ』が問う夫婦の関係性

『離婚しようよ』

2023年6月22日〜Netflixにて全世界同時配信
出演:松坂桃李、仲里依紗、錦戸亮、板谷由夏、織田梨沙、神尾楓珠、少路勇介、矢沢心、守屋麗奈、高岸宏行、前原滉、尾美としのり、池田成志、山本耕史、高島礼子、竹下景子、古田新太ほか
脚本:宮藤官九郎、大石静
音楽:河野伸
主題歌:Rin音『Good Bye feat. asmi』『Fruits feat. asmi』
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一
プロデューサー:磯山晶、勝野逸未、佐藤菜穂美
監督:金子文紀、福田亮介、坂上卓哉
制作協力:TBSスパークル
製作著作:TBSテレビ

映画・ドラマ好きが高じてライターになった元役者。 週末は映画館に足を運び、毎クール最低10個はドラマチェック、配信で過去作を見漁るなど、圧倒的コンテンツ摂取過多。 推しがいないことが推しです、もはや全員推しなので。
福岡県出身。現在は大阪在住のイラストレーター&クリエイター。"変化を起こすトキメキ"をテーマにPOPなイラストを描いています。WEBサイト、ノベルティーグッズ、イベントロゴ、動画などでイラストを提供中。趣味は映画、ドラマ、アニメ、ミュージカルなど鑑賞に偏りがち。
ドラマレビュー