植草美幸流 婚活理論23

恋愛と結婚は別?「ザ・ノンフィクション」で描かれた婚活の本質

青山の結婚相談所マリーミー代表で恋愛・婚活アドバイザーの植草美幸です。アドバイザーとして活動していると、婚活をしている人から「恋愛と結婚は別なのですか?」と聞かれることが間々あります。私の答えは「YES」。結婚相手を探すのに、むしろ恋愛感情はリスクにもなり得るのです。今回はドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」(フジ系)で放送された婚活密着記に触れつつ、なぜ結婚と恋愛を分けて考えるべきかを解説します。
付き合う前のバレンタインはあげるべき?婚活で出会った相手に渡すチョコの相場やブランドは? 結婚願望がなかった男性、20代前半女性が結婚相談所へ。コロナは婚活をどう変えたか

婚活は「好きな人を探すこと」ではない

結婚は恋愛から始まるものだと思い込み、婚活で「好きな人」を探そうとする人は多いもの。しかし、婚活の本質は「好きな人を探すこと」とは異なります。

“結婚しなくてはいけない時代”ではない今、結婚することで不幸になっては意味がありません。自分の思い描く未来に合う人、一生向き合ってくれる人、自分が向き合う価値がある人を探すことが重要です。

恋をするのは大いに結構ですが、好きになっても理想の結婚相手の条件でなかったり、相手に結婚する気がなかったり、既婚者であったりすれば時間の無駄

相手のことをよく知らず、相手が自分をどう思っているかも分からないまま、「見た目がカッコイイ」「話がおもしろい」「かわいいと言ってくれる」など表面的な魅力に惹かれ、冷静に見極めができなくなった場合、損をするのは自分です。

結婚とは“大人が生涯をかける選択”。小学生が「足が速くてカッコイイ」と言って恋するのと同レベルではいけません。
それでも恋愛がしたいなら、恋愛する価値がある相手、そして結婚ができる相手とすること。それが婚活なのです。

Getty Imagesより

恋するところじゃなくて、結婚をするところ

「結婚相談所は恋をするところじゃなくて、結婚をするところ」

――これは、フジテレビのドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」の中で、私が言ったセリフです。

2022年1月16日、23日。私の結婚相談所の密着取材が放送されました。そのテーマは「結婚したい彼女の場合~コロナ禍の婚活漂流記~」でした。2020年3月ごろから国内でも感染が広がったコロナ禍に孤独を深めた婚活女性たちが奮闘する様子を、番組は赤裸々に描き出しました。

なかでもメインで描かれた女性が「資産家との安定の未来か? 介護士の彼への恋心か?」で揺れ動く様子には大変な反響をいただきました。      

これまで誰にも恋をしたことがない彼女は、30歳で婚活を始めます。大卒で飲食業の会社に入りますが、過酷な働き方で昇給もなく、何度も体調を壊していたことから、結婚したら仕事をやめて専業主婦になることを望まれていました。

彼女の希望に合う40代の資産家とマッチングして真剣交際まで進みますが、30代の介護福祉士に心惹かれてしまいます。しかし、介護福祉士の収入では彼女がパート勤務をしても家計が厳しかったり、夜勤の彼とのすれ違いの結婚生活が見えてきたりします。

私がデートのときに結婚後の家計についてきちんと話し合うように伝えても、彼女は「手をつないでポーっとなっても、家計のことを言わないといけないんですか?」。

彼女は結局、介護福祉士との自宅デートで理想の生活からかけ離れた現実を知り、別れを選択します。資産家の彼との仲もおろそかになり、曇った眼で見るうちに不信感を抱き、両方の縁を失ってしまうのです――。

Getty Imagesより

結婚とは? なぜ婚活は“条件ばかり”を追うのか

婚活とは、自分に合う人を探すこと。“自分に合う”というのは、「自分がどうやって生きていきたいか」という目標と、「それを容認してくれる人がいるか」という現実の両方が必要です。

今の働き方がつらいから、結婚したら辞めたい……大いに結構。では、どんな人と結婚しますか? 資産や収入があり、共働きにこだわりがない男性が適しています。逆に、結婚してもバリバリ仕事したいから、家事育児は夫が半分やってほしい……じゃあ、どんな人でしょうか? 定時で帰れるかリモートワーク中心で、平均的で安定した収入がある、家庭を大事にしたい男性がいいですね。

これらの落とし込みがしっかりできていないと、ミスマッチが起こります。

まずは紙に書き出して、数値化してみましょう。それが婚活の「条件の絞り込み」なのです。

今の自分の収入や仕事、親の状況は? 子供の人数は何人で、どんな教育を受けさせたいですか? 住まいはどうしますか? 教育資金、老後資金はどうやって貯めますか? そうなると、結婚生活はどうなっていきますか? お相手に必要なものが見えてきます。子どもが2人欲しいなら世帯年収900万円はないと厳しい、住まいは東京ならもっと必要で、中学校から私立ならもっと……という風に、自分にとって必要な条件を現実的に考えられるようになります。

こういった数字を頭に入れおくことで、早々に突進せず、冷静に判断することができるのです。

Getty Imagesより

恋愛は、条件を数字に落とし込めていない人が陥る誘惑

一方で、気分が高揚する恋愛では、相手に幻想を抱きがちです。もちろん恋愛すること自体を否定はしませんし、人生経験としては自由。

ただ、自分が今後どう生きたいのかが定まらず、相手に求める条件を数字に落とし込めていないと、この幻想に引っ張られ、現実が見えなくなってしまいます。

手をつないでフワフワうれしい気持ちになって、「好きかも?」で結婚しても、家計が赤字ではやっていけません。恋心に取りつかれた状態で結婚して、家計簿を見て現実に戻って、「こんなはずじゃなかった」では、不幸の始まりになってしまいます。

恋をするのは悪いことではないですし、「家計はギリギリでも好きだからいい、どんな試練も乗り越えられる」と覚悟ができているなら、それでいいのです。

でも、自分の娘、息子だと思って接している婚活中のみなさんには、できれば苦労や後悔はさせたくないというのが私の本音。これから60年間ずっと味方でいてくれる人、一緒に子育てできる人、同じ方向を見てくれる人なのか――お付き合いの段階で見極めて、結婚してから恋愛しましょう、とお伝えしています。

中身やバックグラウンドを知るのも、恋愛のキュンキュンも、同時進行してほしいことですが、先に見極めてからゆっくり恋愛するのでも遅くないと思います。

植草美幸さん、齋藤大輔撮影

付き合う前のバレンタインはあげるべき?婚活で出会った相手に渡すチョコの相場やブランドは? 結婚願望がなかった男性、20代前半女性が結婚相談所へ。コロナは婚活をどう変えたか
結婚相談所マリーミー代表取締役、恋愛・婚活アドバイザー。 1995年にアパレル業界に特化した人材派遣会社エムエスピー設立。2009年、結婚相談所マリーミー設立。自ら婚活している男女にアドバイスし、成婚に導いている。セミナーの開催、テレビやラジオも多数出演。著書に『なぜか9割の女性が知らない婚活のオキテ』『男の婚活は会話が8割「また会いたい」にはワケがある!』『モテ理論』など。
植草美幸流 婚活理論